1. 1,674人で1,100店を回す。卸売業としての神戸物産

まず商売の形を押さえておきたい。2025年10月期通期の連結従業員数は1,674人である。一方で業務スーパーの総店舗数は、2026年10月期1Q末時点で1,126店に達している。

1店あたり社員1.5人という計算にはならない。店舗の大半をフランチャイズオーナーが運営しており、同社の役割は商品を作って卸すことにあるからだ。

この構造は原価構造にそのまま出る。2025年10月期通期の売上高5,517億円に対して売上原価は4,852億円、売上総利益は664億円で、粗利率は12.0%にとどまる。卸売業245社の粗利率中央値17.0%より、むしろ低い。

ところが営業利益率は7.2%で、卸売業の中央値3.1%の2倍を超える。理由は販管費の軽さだ。販売費及び一般管理費は265億円で、売上高に対して4.8%しかない。店舗の人件費と賃料を自分で抱えていないぶん、粗利の薄さが利益率の低さに直結しないという設計である。

資産の使い方も軽い。総資産2,601億円に対して売上高5,517億円だから、総資産回転率は2.12回。卸売業の中央値1.43回を大きく上回る。棚卸資産は198億円で、売上原価に対する回転日数は14.9日にすぎない。

その結果としてROE(自己資本利益率)は22.2%になり、卸売業の中央値7.9%とは水準が違う。自己資本比率も60.5%で中央値51.1%より厚い。

「スーパーは店舗運営の労働集約型で、薄利をこなす商売」という一般的な見方と、この会社の数字は正面から噛み合わない。粗利率は業種平均より低いのに、営業利益率と資本効率では業種の上位に出る。薄利であることと稼げないことは別だ、という当たり前の話を、この会社は数字で示している。

もっとも、粗利率12%は自社製造を抱える会社としては薄い。会社は「食の製販一体体制」の更なる強化をグループ目標に掲げ、食品製造工場の生産能力の増強と積極的な商品開発を進めてきたと説明している。自社グループ工場で製造するオリジナル商品と自社直輸入品によるプライベートブランド商品を、ベストプライスで販売する形だ。作る力を価格に回している、と読み取れる。

2. 1カ月で最も高い終値と、PER23.36倍・PBR4.11倍

1/2

出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

株価を追う。8月10日の終値は2,846円だった。8月18日には2,774円まで下げ、これが直近1カ月では最も低い終値になる。

その後は2,800円前後でもみ合いが続いた。8月28日2,870円、8月31日2,824円、9月2日2,811円と、2,800円台を挟んで動きが乏しい期間である。

変化は9月3日からだ。前日から3%台の上昇で2,900円をつけ、9月4日には3,032円まで買われて3,000円台に乗せた。9月7日は2,985円といったん押したが、9月8日は3,108円まで上昇した。前日比では4%を超え、直近1カ月では最も高い終値である。

1カ月の起点2,846円と比べると1割弱の上昇だ。ただし、この期間に決算の開示はない。上期決算の内容が改めて見直された可能性もあるし、相場全体の資金の向きが効いた可能性もある。開示情報だけで理由を1つに絞れる局面ではない。

9月8日時点のPER(株価収益率)は23.36倍、PBR(株価純資産倍率)は4.11倍である。PERは2026年10月期の会社予想である1株当たり利益133円24銭に対する倍率だ。

目を引くのはPBRのほうだろう。4倍を超える水準は、有形固定資産662億円という比較的軽い資産構成と、ROE22.2%という高い資本効率の組み合わせから来ていると考えられる。純資産に対して大きく稼ぐ会社の株価は、簿価に対して高い倍率がつきやすい。

逆に言えば、この4倍という数字はROEが22%台で回り続けることを前提に置いている。資本効率が業種平均へ近づいていけば、同じ利益でもPBRの説明力は弱くなる。PBRを単独で眺めるのではなく、ROEと並べて追うべき銘柄だ。

3. 筆者コメント

印象的なのは、この会社が「安さ」を作る場所を持っていることだ。売り場で値札を下げているのではなく、工場と輸入で原価を下げている。

だから粗利率12%という薄さは、経営の弱さではなく意思の表れと読める。作った分の利益を自分の粗利に残すのではなく、価格に回して店の集客に変えている。フランチャイズオーナーの売上が伸びれば、卸としての自社の売上も伸びる。粗利率を薄く保つほうが全体の回転が上がる、という設計だ。

ただ、この設計には前提がある。仕入原価が上がったときに、価格を据え置くのか転嫁するのかという選択が毎回発生することだ。薄い粗利率は、原価上昇に対する耐性が構造的に低いという意味でもある。

会社は不安定な為替の変動やエネルギーコストの高騰を経営環境として挙げている。自社直輸入を柱に据える会社にとって、為替は商品の原価そのものだ。決算を見るときは営業利益の増減だけでなく、粗利率が12%台のどこに着地したかを確かめる見方をおすすめしたい。