4. 2026年10月期上期の増収増益と、経常利益が営業利益を上回る理由

直近の決算は2026年10月期上期である。売上高2,861億円で前年同期比+5.1%、営業利益210億円で+10.2%、経常利益244億円で+16.8%、親会社株主に帰属する中間純利益165億円で+15.7%だった。

会社によれば、インフレによる消費者の根強い節約志向やコスト増加、業種・業態の垣根を越えた競争激化という環境のなかで、食品製造工場の生産能力の増強と積極的な商品開発を進めてグループ全体の競争力を高めてきたという。農産品の全輸入コンテナを対象とした残留農薬の自主検査も継続していると説明している。

ここで気づくのは、経常利益の増加率が営業利益を上回っていることだ。営業利益+10.2%に対して経常利益+16.8%。営業外の段階で利益が上乗せされている。

四半期で見ると、この振れはもっと激しい。2026年10月期1Qは売上高1,415億円で+6.9%、営業利益109億円で+19.6%と伸びた一方、経常利益は87億円で▲43.5%、四半期純利益は59億円で▲44.2%と大きく落ちている。営業段階と経常段階が逆を向いた四半期だった。

年次でも同じことが起きている。2025年10月期通期は営業外収益87億円に対して営業外費用が5億円で、経常利益480億円が営業利益398億円を82億円上回った。逆に2024年10月期は営業外収益16億円・営業外費用44億円で、経常利益は営業利益を下回っている。

自社直輸入品を商品の柱に置く会社では、為替差損益が営業外の段階に出やすい。会社が経営環境として不安定な為替の変動を繰り返し挙げていることも踏まえれば、この振れの中心には為替があると考えられる。

この読み方は通期予想にもつながる。会社の2026年10月期予想は売上高5,665億円で+2.7%、営業利益430億円で+7.8%と増収増益だが、経常利益は437億円で▲9.1%、当期純利益は295億円で▲7.5%と減益予想になっている。本業は伸ばす一方、前期に営業外で乗った分は続かないという置き方だ。

上期時点の進捗率は営業利益で48.9%、当期純利益で55.9%となる。営業利益はほぼ時間按分どおり、純利益は前倒しで進んでいる格好である。

5. セグメント別に見ると、利益率の主役が入れ替わる

2025年10月期通期のセグメントを開くと、この会社の姿がもう一段はっきりする。

業務スーパー事業は売上高5,305億円で+8.5%、営業利益435億円で+16.5%。売上構成比は96.2%に達する。数字のほぼ全部がこの事業だ。

飲食店を運営する神戸クック事業は売上高164億円で+16.4%、営業利益11億円で+6.5%。エコ再生エネルギー事業は売上高46億円で+2.1%、営業利益10億円で▲4.9%だった。

営業利益率で並べると順番が変わる。業務スーパー事業8.2%、神戸クック事業6.7%に対して、エコ再生エネルギー事業は23.3%。売上構成比0.9%の最小事業が、利益率では最も高い。

会社の開示では、稼働中の発電所は太陽光が19か所で約81.0メガワット、木質バイオマスが1か所で約6.2メガワットである。2026年10月期1Qについては、北海道および東北地方での積雪や天候不順による日射量低減で若干の減収となったものの、いずれも順調に稼働し減価償却も進んだことから増益になったと説明している。

ただ、利益率の高さをそのまま魅力と読むのは早い。エコ再生エネルギー事業のセグメント資産は279億円で、売上高46億円の6倍を超える。対して業務スーパー事業のセグメント資産は1,913億円で、売上高5,305億円の3分の1強にすぎない。

投下資本に対する効率で見れば、両者の関係は逆転する。利益率が高い事業は、資産を先に積まなければ売上が立たない装置産業型であり、規模を伸ばすたびに重くなる。売上を伸ばしても資産がほとんど増えない業務スーパー事業とは、そもそも別のルールで動いている。

資本配分はその判断を反映している。2025年10月期通期の設備投資92億円のうち、82億円が業務スーパー事業に振られた。減価償却が進んで利益率の高く見える事業に追加投資を寄せるのではなく、回転の速い本業に資本を集めている。営業活動によるキャッシュ・フロー421億円に対して投資活動によるキャッシュ・フローが▲89億円という控えめな水準にとどまっているのも、同じ姿勢の表れと読み取れる。

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出所:株式会社神戸物産 有価証券報告書をもとに筆者作成

出所:株式会社神戸物産 有価証券報告書をもとに筆者作成

6. 筆者コメント

過去5期の売上高を並べると、3,620億円、4,068億円、4,615億円、5,078億円、5,517億円と一度も下がっていない。営業利益も273億円から398億円へ、階段状に積み上がっている。

これだけ素直に伸びている会社は多くない。値上げが続く環境で低価格の看板を掲げられる会社に需要が寄った、という説明は成り立つだろう。

ただ、この伸びの質は営業段階を見なければ判定できない。経常段階には為替が混ざり、四半期ごとに符号すら変わる。純利益の前年同期比を追っていると、実際には強い期を弱いと読み、弱い期を強いと読む取り違えが起きる。

今後の論点は、店舗数の伸びが続くかどうかよりも、1店あたりの卸売上が伸びるかどうかだと考える。オーナーの店が育たなければ卸の売上も育たない構造だからだ。決算資料を開くときは、総店舗数の増減と売上高の伸びを割り算してみることをおすすめしたい。

参考資料

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石津 大希