個人投資家の間では、9月30日を権利確定日とする銘柄への関心が高まっています。
日本の上場企業の多くは3月を決算期としており、その中間地点にあたる9月末は、配当や株主優待の権利が得られる銘柄が集中する時期でもあります。
かまぼこ・ちくわなどの練り製品で知られる紀文食品<2933>も、株主優待の権利確定日を9月30日に設定している銘柄の一つです。
紀文食品の株価は11日、前日から横ばいの1,125円で取引を終了。前日の米国市場や11日の東京株式市場は荒れ模様でしたが、同社株は「凪」でした。
紀文食品8月12日に2027年3月期第1四半期決算を発表しており、この最新決算をひも解くと、売上高の7割近くを占める主力の練り製品事業とは別に、実は健闘している事業が見えてきます。
1. 最新決算からひも解く企業の強み
2027年3月期第1四半期(2026年4月1日~6月30日)の連結決算は、売上高242億1,300万円(前年同期比▲2.7%減)、営業利益2,200万円(前年同期比▲93.7%減)、経常損失5,000万円(前年同期は経常利益1億8,900万円)、四半期の最終損益は、1億5,300万円(前年同期は四半期純利益4,800万円)の損失となりました。
売上高・利益とも前年同期を下回りましたが、同社は5月15日に公表した2027年3月期の通期業績予想(売上高1,168億7,300万円、営業利益52億800万円、経常利益43億4,000万円、純利益25億5,900万円、いずれも前期比増収増益)を据え置いています。
同社は「主要な事業であるスリミ製品の需要が特に秋冬期に集中するため、業績には季節変動がある」と説明しており、特に春夏期は、需要が少ない時期となっています。
実際、2026年3月期の単体四半期別営業利益は、第1四半期3億5,900万円、第2四半期▲7億7,300万円、第3四半期30億7,000万円、第4四半期6億900万円と、利益の大半が10~12月の第3四半期に集中しており、4~6月の第1四半期はもともと利益水準が低い時期にあたります。
もっとも、今回の営業利益2,200万円は、この季節性を踏まえても前年同期(3億5,900万円)から大きく落ち込んでいます。
セグメント別にみると、主力の国内食品事業でセグメント損失が6,900万円拡大したほか、海外食品事業のセグメント利益が1億5,800万円減少したことが響きました。
唯一増益となった食品関連事業(セグメント利益+5,700万円)だけでは補いきれず、加えてセグメント間取引消去などに伴う調整額が前年同期の1億2,337万円のプラスから今回は4,339万5,000円のマイナスに転じたことも、営業利益の押し下げに拍車をかけました。
1.1 唯一の増益セグメントは「食品関連事業」、練り製品の国内事業はセグメント損失に
紀文食品はセグメント別に「国内食品事業」「食品関連事業」「海外食品事業」の3事業を開示しています。
売上高では国内食品事業(かまぼこ・ちくわなどの練り製品の製造販売)が161億8,600万円と全体の約7割を占める最大のセグメントですが、今回の第1四半期でセグメント利益(営業利益)を確保し、なおかつ3セグメント中唯一増益となったのは、食品の運送などを手がける「食品関連事業」でした。
国内食品事業:売上高161億8,600万円(前年同期比▲3.3%減)、セグメント損失3億2,000万円(前年同期は2億5,100万円の損失、損失額は6,900万円拡大)
食品関連事業:売上高53億7,500万円(前年同期比+4.5%増)、セグメント利益2億8,300万円(前年同期比+25.5%増、5,700万円の増益)
海外食品事業:売上高26億5,000万円(前年同期比▲11.5%減)、セグメント利益1億300万円(前年同期比▲60.4%減、1億5,800万円の減益)
ただし、食品関連事業のセグメント利益2億8,300万円は、国内食品事業の損失3億2,000万円を穴埋めするには至っていません。あくまで3事業のなかで最も業績が良く、唯一増益を確保したセグメントという位置づけです。
食品関連事業は、国内で食品の運送などを担う物流事業が中心です。新規顧客の獲得や新センターの稼働開始に加え、インバウンド需要を追い風に好調な外食産業や飲料・食品メーカーなど既存顧客の物量が増加したことで増収となりました。
利益面でも、共同配送の積載率向上やセンター内作業の自動化、非効率業務の見直しといった効率化が寄与し、増益を確保しています。
一方、主力の国内食品事業は、カニカマ「The SURIMI」や、独自製品の「チーちく®」「竹輪」などのスリミ製品自体は堅調に推移したものの、中華惣菜(餃子など)の価格競争激化や、中東情勢の影響による一部資材の高騰が響き、減益となりました。同社はこの対策として、9月の秋冬商戦から商品の価格改定を実施。9月1日店着分から、スリミ製品、惣菜製品、正月商品を約3~20%値上げするとしています。
海外食品事業も、各国の節約志向の高まりに加え、前年同期に米国が課す「相互関税」導入前の駆け込み需要で大きく伸びていた反動により、減収減益となりました。