「高額介護サービス費は、上限を超えるたびに毎回申請しないといけないのでは」——そう思っていると、実は手続きの手間はそこまで大きくありません。初回さえきちんと申請すれば、その後は自動的に振り込まれる仕組みになっているからです。
この記事では、高額介護サービス費の自己負担上限額の仕組みと、意外と知られていない申請手続きの実務を、自治体の公式資料にもとづき編集部が整理します。
1. 自己負担の合計が上限を超えた分が、あとで払い戻される
まず、高額介護サービス費がどのような制度なのか、基本を確認します。
1.1 1か月の自己負担合計に、所得に応じた上限がある
自治体の公式資料によると、高額介護サービス費は、公的介護保険を利用した際の1か月の自己負担額の合計が、所得に応じて定められた上限額を超えた場合に、その超えた分が申請により払い戻される制度です。介護サービスを多く利用する月ほど、この制度の恩恵を受けやすくなります。
上限額は世帯・個人の所得に応じて段階的に分かれており、令和3年8月の改定以降の基準では、課税所得690万円以上の世帯で月額14万100円、住民税非課税世帯で月額2万4600円、生活保護受給者などでは月額1万5000円(個人)といったように、所得区分ごとに細かく設定されています。
なお、住民税非課税世帯の中でも、より上限額が低い区分(1万5000円)に該当するかどうかの判定に使う年金収入等の基準額は、令和7年8月利用分から80万円から80万9000円に引き上げられています。上限額そのものではなく、この判定基準額の方が最近見直された点には注意が必要です。
1.2 【高額介護サービス費・所得区分別の自己負担上限額(月額)】
前提:令和3年8月改定以降の基準(非課税世帯内の判定基準額は令和7年8月に80万9000円へ変更)。自治体の公表情報に基づく編集部整理1/2
出所:藤沢市「高額介護サービス費等の支給」を基にLIMO編集部作成
- 課税所得690万円以上の65歳以上がいる世帯:14万100円(世帯)です
- 課税所得380万円以上690万円未満の65歳以上がいる世帯:9万3000円(世帯)です
- 市町村民税課税世帯(上記以外):4万4400円(世帯)です
- 住民税非課税世帯:2万4600円(世帯)です
- 住民税非課税で年金収入等80万9000円以下、生活保護受給者等:1万5000円(個人)です
2. 【編集者の視点】
実務上、この上限額の所得区分や具体的な金額、判定基準額は、制度改正のたびに見直されることがあります。上限額自体は令和3年8月改定以降の基準、非課税区分内の判定基準額は令和7年8月時点のものであるため、実際に払い戻しを受けられるかどうかは、お住まいの自治体の最新の案内で確認することをおすすめします。
※本記事は、編集部が自治体が公表する公式の最新情報を直接確認の上、執筆・検証しています。
3. 「毎回申請」が必要と思われがちだが、実際は初回だけでよい
ここからが、意外と見落とされがちなポイントです。
3.1 初回に申請すれば、2回目以降は自動的に給付される
自治体の公式資料によると、高額介護サービス費の支給対象になった人には、市区町村から申請書が届き、必要事項を記入して提出することで初回の申請が完了します。そして、一度申請をすると、それ以降は自動的に給付されるため、あらためての申請は必要ないとされています。
「上限を超えるたびに、その都度書類を出さなければならない」と思い込んでいると、実際には初回の手続きさえ済ませてしまえば、その後は手間がかからないことを見落としがちです。逆に言えば、初回の申請を忘れたり後回しにしたりすると、本来受け取れたはずの払い戻しを受け損ねる可能性があります。
3.2 【高額介護サービス費の申請、初回と2回目以降の違い】
- 初回:市区町村から届く申請書に記入し、口座情報等を添えて提出します
- 2回目以降:自動的に給付され、あらためての申請は不要です
4. 【編集者の視点】
実務上、高額介護サービス費の申請には2年の時効があり、この期間を過ぎると申請権利そのものが消滅してしまいます。初回の申請書が届いたのに気づかず放置してしまうと、その分の払い戻しを受けられなくなる可能性があります。介護サービスを利用し始めたら、市区町村からの郵便物を見落とさないよう意識しておくことが大切です。
また、自治体の案内によると、同じ世帯に介護保険サービスの利用者が2人以上いる場合は、利用者負担額を人数分合算したうえで、世帯の上限額との差額が支給される仕組みになっています。1人あたりの利用額では上限に届かなくても、世帯で合算すると上限を超えるケースがあるため、家族に複数の介護サービス利用者がいる場合は、個人単位で判断せず世帯単位でも確認しておく価値があります。
高額療養費(医療保険)との合算については、高額介護合算療養費制度を整理した別記事もあわせて確認してみてください。
5. まとめ
- 高額介護サービス費は、1か月の自己負担合計が所得に応じた上限額を超えた分が払い戻される制度です。
- 上限額は所得区分によって細かく分かれ、世帯で月額14万100円から個人で月額1万5000円まで5段階程度に設定されています。
- 初回に申請すれば、2回目以降は自動的に給付され、毎回の申請は不要です。
- 初回の申請書を見落とすと、払い戻しを受け損ねる可能性があるため注意が必要です。
- 同じ世帯に利用者が2人以上いる場合は、負担額を世帯単位で合算できます。
「高額な介護費用がかかるたびに、毎回申請しなければならない」という思い込みのままでいると、実際には初回だけで済む手続きを、必要以上に負担に感じてしまいます。
介護サービスの利用が始まったら、まずは市区町村から届く案内を見落とさず、初回の申請だけは確実に済ませておくことをおすすめします。
6. よくある質問
6.1 Q. 高額介護サービス費は、上限を超えるたびに申請が必要ですか。
A. 初回だけ申請すればよく、2回目以降は自動的に給付されます。
6.2 Q. 高額介護サービス費の上限額はいくらですか。
A. 所得区分によって異なります。現行の基準(令和3年8月改定以降)では、月額1万5000円(個人)から14万100円(世帯)まで、5段階程度に分かれています。
6.3 Q. 申請書はどこから届きますか。
A. 支給対象になった人には、お住まいの市区町村から申請書が届きます。
6.4 Q. 初回の申請を忘れてしまったらどうなりますか。
A. 払い戻しを受けられなくなる可能性があります。高額介護サービス費の申請には2年の時効があり、期限を過ぎると申請できなくなるため、申請書が届いたら早めに記入・提出することをおすすめします。
6.5 Q. 上限額は今後も同じ金額のままですか。
A. 見直されることがあります。実際に払い戻しを受けられる金額は、お住まいの自治体の最新の案内で確認してください。
6.6 Q. 家族に介護サービスの利用者が複数いる場合はどうなりますか。
A. 同じ世帯に利用者が2人以上いる場合は、利用者負担額を人数分合算したうえで、世帯の上限額との差額が支給されます。
参考資料
- 藤沢市「高額介護サービス費等の支給」
- さいたま市「介護保険の高額サービス費の受給申請について知りたい」
- 横浜市「介護保険サービスの高額介護サービス費の払戻しに関する制度と手続き」
- 江東区「介護保険 高額介護(介護予防)サービス費の支給」
齊藤 慧
