「年金だけでは生活費が心もとない」と感じている方は少なくありません。
公的年金の受給額には個人差があり、思っていたより少ない金額にとどまっているケースもあります。
実は、年金収入が一定の基準を下回る場合に利用できる公的な支援は一つだけではありません。
現役時代に保険料を納めるのが大変だった方向けの制度から、今まさに生活資金に困っている方向けの制度、そして年金に上乗せして継続的に受け取れる給付金まで、知っておくと安心につながる制度がいくつか用意されています。この記事では、その中でも代表的な「年金生活者支援給付金」を中心に、2026年度の給付額や支給要件、申請手続きの流れ、そして2025年に成立した年金制度改正のポイントまで詳しく見ていきます。
1. 年金が少ないと感じたときに、知っておきたい公的な支援のかたち
年金の受給額が少ないと感じる背景は人それぞれですが、それに応じて用意されている公的な支援も一つではありません。まずは代表的な3つの制度を整理しておきましょう。
1.1 所得が少ない世帯には、国民健康保険料の「軽減制度」がある
75歳未満の方が加入する国民健康保険には、世帯全員の前年の所得を合計した金額が一定基準以下の場合に、保険料のうち均等割額・平等割額の部分が7割・5割・2割のいずれかの割合で軽減される制度があります。令和8年度の基準では、7割軽減は43万円+(給与所得者等の数-1)×10万円以下、5割軽減は43万円+(被保険者数等)×31万円+(給与所得者等の数-1)×10万円以下、2割軽減は43万円+(被保険者数等)×57万円+(給与所得者等の数-1)×10万円以下の所得であることが目安です。この軽減は市区町村が所得状況を確認したうえで自動的に適用されるため、原則として申請は不要です。なお、失業や災害などで急に収入が減った場合には、これとは別に、各市区町村へ申請することで保険料が減免される制度もあります。
1.2 一時的にまとまったお金が必要なときは「生活福祉資金貸付制度」という選択肢も
低所得世帯・障害者世帯・65歳以上の高齢者がいる世帯などを対象に、生活費や医療・介護の費用、住宅の改修費などを借りられる「生活福祉資金貸付制度」もあります。実施主体は都道府県の社会福祉協議会で、連帯保証人を立てれば無利子、立てない場合でも年1.5%程度の低い金利で借りられます。ただし、これはあくまで「貸付」であり、いずれ返済が必要なお金である点には注意が必要です。
1.3 返済不要で、要件を満たす限りずっと受け取れるのが「年金生活者支援給付金」
これに対して、返済の必要がなく、支給要件を満たしている限り継続的に受け取れるのが「年金生活者支援給付金」です。2カ月に一度、年金とは別に指定の口座へ振り込まれる仕組みで、一度請求書を提出して認定されれば、翌年以降にあらためて手続きをする必要はありません。ここからは、この年金生活者支援給付金について詳しく見ていきましょう。
2. そもそも「年金生活者支援給付金」とはどんな制度なのか
厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、公的年金の平均年金月額は国民年金(老齢基礎年金)で5万円台、厚生年金(国民年金部分も含む)で15万円台です。
しかし上記はあくまでも全体の平均値に過ぎません。
実際の受給額には個人差があり、月額30万円以上受け取っている人がいる一方で、1万円未満のケースも存在します。年金受給額は、現役時代の働き方や年金加入期間によって大きく変わってきます。
もし、年金とその他の所得を含めても一定基準以下となる場合には、「年金生活者支援給付金」を受け取れる可能性があります。
3. 老齢・障害・遺族、3つのタイプがある年金生活者支援給付金
「年金生活者支援給付金」は、年金収入やその他の所得額が一定基準額以下の年金生活者の暮らしを支えることを目的として、2カ月に一度、年金に上乗せして支給されるお金です。
2019年に始まった比較的新しい制度で、以下3種類の給付金ごとに、給付額や支給要件が設けられています。
- 老齢年金生活者支援給付金(補足的老齢年金生活者支援給付金)
- 障害年金生活者支援給付金
- 遺族年金生活者支援給付金
4. 2026年度の給付額は月額5620円、前年度から3.2%増額
年金生活者支援給付金は、物価変動率を踏まえて年度ごとに見直しがおこなわれます。
2026年度(4月分より)の給付金額は、前年度から+3.2%の増額となりました。
4.1 2025年度との比較で見る、支給額の推移
4.2 3つの給付金それぞれの2026年度の月額
- 老齢年金生活者支援給付金の基準額(月額):5620円
- 障害年金生活者支援給付金(月額):1級7025円・2級5620円
- 遺族年金生活者支援給付金(月額):5620円
老齢年金生活者支援給付金については、上記の基準額をもとに、保険料納付済期間等に応じて実際の給付額が計算されます。
なお、上記はいずれも「月額」です。給付金は偶数月の支給日に、2カ月分がまとめて年金と同じ口座へ、年金とは別に振り込まれます。上記の給付額通りを受け取れる場合、1回の支給で約1万1000円、年額にすると約6万7000円となります。
なお「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2025年3月における平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金4146円、障害年金生活者支援給付金5727円、遺族年金生活者支援給付金5228円でした。
※2025年3月において認定されている平均給付金額です。給付基準額が月5310円だった令和6年度に支給されていた金額のため、2026年度の5620円とは基準が異なります。
5. 受け取れるのはどんな人か、3種類の支給要件を確認する
ここからは、年金生活者支援給付金の支給要件についても見ていきましょう。以下の所得基準額は、令和8年10月分から適用されるものです。
「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」を受け取れるのは、それぞれの基礎年金(障害基礎年金もしくは遺族基礎年金)を受給中で、前年の所得が491万8000円以下の人です。
判定には障害年金や遺族年金などの非課税収入は含まれず、扶養親族等の数に応じて所得基準額は変わります。
なお、老齢年金生活者支援給付金のみ、本人の所得以外に「年齢」と「世帯全体の状況」が支給要件に加わります。次で整理していきましょう。
5.1 「老齢」は3つの要件をすべて満たす人が対象
老齢年金生活者支援給付金の支給対象となるのは、下記1~3の要件をすべて満たす人です。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後生まれの方は82万6500円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は82万4100円以下
なお、老齢年金生活者支援給付金の判定にも、障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
また「基準額ギリギリで給付対象となる人」との間に不公平感が生じないように、「基準額をわずかに超えて給付対象外となる人」は「補足的老齢年金生活者支援給付金(※)」の支給対象となります。
※補足的老齢年金生活者支援給付金:1956(昭和31)年4月2日以後に生まれた方で82万6500円を超え92万6500円以下である方、1956年4月1日以前に生まれた方で82万4100円を超え92万4100円以下である方に支給されます。所得が増えるにつれて、補足的老齢年金生活者支援給付金の給付額は減ります。
