「同じ家に住む家族の医療費なら、世帯合算できるはず」——そう考えていると、実は対象外だったということがあります。高額療養費の「世帯合算」でいう「世帯」は、住民票上の世帯とは異なり、同一の医療保険に加入している家族を指すからです。

この記事では、高額療養費制度をわかりやすく解説した記事より一部を引用・参照しつつ、世帯合算の仕組みを、厚生労働省の公式資料にもとづき編集部が整理します。

1. 世帯合算の「世帯」は、住民票上の世帯とは別の基準

厚生労働省の資料によると、「自己負担額の合算は、同一の医療保険に加入する家族を単位として行われます(医療保険における『世帯』は、いわゆる一般のイメージの『世帯』(住民基本台帳上の世帯)の範囲とは異なります)」とされています。

つまり、同じ家に住んでいても、加入している健康保険が異なれば合算の対象外になります。たとえば、会社員の夫と、別の会社に勤めて自身の健康保険に加入している妻とでは、世帯合算の対象になりません。逆に、離れて暮らしていても、同じ健康保険の被扶養者になっている家族同士であれば、合算の対象になります。

齊藤 慧
「同居しているから当然合算できる」と思い込んでいると、共働きでそれぞれ別の健康保険に入っている夫婦などは対象外になり、戸惑うことがあります。合算できるかどうかは、住所ではなく保険証を基準に考える必要があります。

2. 【編集者の視点】

実務上、共働き世帯で夫婦それぞれが会社の健康保険に加入している場合、世帯合算はできません。一方、夫婦のどちらかが被扶養者になっている場合は合算の対象になるため、自分の家庭がどちらに該当するか、保険証の記載を確認しておく必要があります。

※本記事は、編集部が厚生労働省が公表する公式の最新情報を直接確認の上、執筆・検証しています。

3. 70歳未満は「1件2万1000円以上」の自己負担のみ合算できる

合算できる範囲にも条件があります。厚生労働省の資料によると、「70歳未満の方の受診については、2万1千円以上の自己負担のみ合算されます」とされています。同じ世帯でも、1つの医療機関での自己負担が2万1000円に満たない分は、合算の対象に含まれません。

一方、70歳以上の人については、この2万1000円という金額の縛りがなく、自己負担額をすべて合算できます。同じ世帯に70歳未満の人と70歳以上の人が混在する場合は、それぞれ異なる基準で扱われる点にも注意が必要です。

3.1 【世帯合算の対象になる自己負担額の基準】

前提:厚生労働省公表の高額療養費制度の案内に基づく編集部整理1/2

前提:厚生労働省公表の高額療養費制度の案内に基づく編集部整理

出所:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」を基にLIMO編集部作成

  • 70歳未満:1件あたり2万1000円以上の自己負担のみ
  • 70歳以上:金額の制限なく、自己負担額をすべて合算
齊藤 慧
病院と薬局それぞれで自己負担が発生した場合、どちらも2万1000円未満だと合算できないことがあります。家族の通院・調剤の記録は、月ごとにまとめて確認しておくと、合算できるかどうかの判断がしやすくなります。

4. 合算は「同じ月(暦月)」の自己負担が対象

世帯合算のもう一つの注意点は、合算できるのが同じ月(暦月)の自己負担に限られることです。厚生労働省の資料によると、合算は「1か月(暦月)単位」で行われるとされています。月をまたいだ受診分を合計することはできません。

「今月と来月にまたがって高額な医療費がかかったから合算できるはず」と考えていると、実際には月ごとに別々に計算され、それぞれの月で限度額を超えなければ支給の対象にならないことがあります。長期の治療を予定している場合は、月ごとの負担額を意識しておくとよいでしょう。

5. 70歳未満と70歳以上が同じ世帯にいる場合の扱い

同じ世帯に70歳未満の人と70歳以上の人が混在するケースも、実務では珍しくありません。この場合、実は70歳以上の人同士の計算だけでも2段階の手順が必要で、そこに70歳未満の分を合わせる段階を加えた、合計3段階の仕組みになっています。

まず70歳以上の外来分を個人ごとに計算し、次にその70歳以上の入院分とあわせて70歳以上の世帯単位で計算します。最後に、それでも残った自己負担額と70歳未満の人(2万1000円以上の分)をあわせて、世帯全体の限度額で再度計算します。

5.1 【世帯合算の判定ステップ(70歳未満と70歳以上が混在する場合)】

【世帯合算の判定ステップ(70歳未満と70歳以上が混在する場合)】2/2

【世帯合算の判定ステップ(70歳未満と70歳以上が混在する場合)】

出所:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」を基にLIMO編集部作成

  • ①70歳以上の外来(個人単位):70歳以上の人の外来分を、個人ごとの限度額で計算します
  • ②70歳以上の入院・外来(世帯単位):70歳以上の入院分と①の残りの外来分をあわせ、70歳以上の世帯単位の限度額で計算します
  • ③70歳未満を含めた世帯全体の合算:②で残った自己負担額と70歳未満の分(2万1000円以上)をあわせて、世帯全体の限度額で再計算します
齊藤 慧
親世代と同居している世帯では、この3段階の計算が特に関係してきます。自分で計算するのが難しいと感じたら、加入している保険者に一度問い合わせてみると、正確な金額を教えてもらえるので、無理に自己流で計算しようとせず、早めに相談することをおすすめします。

6. 【編集者の視点】

実務上、この3段階の計算は自分で正確に行うのが難しい場合があります。特に三世代同居や、親の医療費を子が支援しているようなケースでは、加入している保険者に直接問い合わせて、実際に合算できる金額を確認するのが確実です。

7. まとめ

  • 世帯合算の「世帯」は、住民票上の世帯ではなく、同一の医療保険に加入する家族を指します。
  • 70歳未満は、1件あたり2万1000円以上の自己負担のみ合算できます。70歳以上は金額の制限がありません。
  • 合算できるのは、同じ月(暦月)の自己負担に限られます。

「同居している家族なら合算できるはず」という思い込みは、加入している医療保険が異なると当てはまりません。自分の世帯が合算の対象になるかどうかは、住所ではなく保険証(加入している医療保険)を基準に確認する必要があります。

合算の申請方法や必要書類については、高額療養費制度の基礎知識を整理した別記事もあわせて確認してみてください。

8. よくある質問

8.1 Q. 同居していれば世帯合算できますか。

A. 必ずしもそうではありません。世帯合算の「世帯」は、同一の医療保険に加入している家族を指すため、加入している保険が異なれば、同居していても合算の対象外です。

8.2 Q. 離れて暮らす家族の医療費も合算できますか。

A. できる場合があります。同じ医療保険の被扶養者になっている家族であれば、同居していなくても合算の対象になります。

8.3 Q. 70歳未満の場合、どんな自己負担でも合算できますか。

A. いいえ。1件あたり2万1000円以上の自己負担のみが合算の対象です。2万1000円未満の分は含まれません。

8.4 Q. 70歳以上の場合も2万1000円のルールがありますか。

A. ありません。70歳以上は金額の制限なく、自己負担額をすべて合算できます。

8.5 Q. 月をまたいだ医療費も合算できますか。

A. できません。合算は同じ月(暦月)の自己負担が対象で、月をまたいだ分は合算されません。

参考資料

齊藤 慧