9月は、6月に届いた住民税の納税通知書をあらためて見返す機会が生まれやすい時期です。通知書に「非課税」と印字されていれば住民税非課税世帯にあたる可能性がありますが、この言葉と、運用で得た利益に税金がかからない「非課税で運用できる枠」とは、名前が似ているだけでまったく別の仕組みです。口座開設の案内を目にして枠を用意したあとに、これで非課税の世帯に近づいたのだろうか、と受け止めてしまう方は少なくありません。ここでは神戸市の基準をもとに、判定に使う所得がどこで線を引かれているのかを確かめ、そのうえで非課税の枠で得た利益と、判定に使う所得額がどこまで別々に動くのかをみていきます。

徳田 椋
「非課税という同じ言葉が付いているのだから、片方を使えばもう片方にも効いてくるはずだ」と決めつける前に、それぞれが何を見て決まる仕組みなのかを分けて置いてみてください。保険の見直しをご相談いただく場面でも、口座開設の案内と自治体からの通知が同じ引き出しにまとめて入ったままになっていることがよくあります。まずは書類を2つの山に分けるところから始めてみましょう。

なお、住民税非課税世帯の収入基準と、対象になったときに受けられる支援の中身については、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【住民税非課税世帯】給与・年金の収入基準《ボーダーラインはいくら?》知っておきたい5つの優遇制度!制度の基本とファクトを網羅した完全ガイド
【住民税非課税世帯】給与・年金の収入基準《ボーダーラインはいくら?》知っておきたい5つの優遇制度!制度の基本とファクトを網羅した完全ガイド

1. 【住民税非課税世帯が対象】知っておきたい5つの優遇制度

前の年の所得が決められた水準に届かない世帯は、住民税が課されない世帯という区分に入り、公的な支援を受けられることがあります。感染症への対応や物価高への対策として現金が届いた出来事のほうが記憶に残りやすいのですが、用意されているのはその場かぎりの給付ばかりではありません。毎月の保険料や、年単位で出ていく学費の側にも、軽くなる仕組みが置かれています。

対象になったときに何がどれだけ軽くなるのかの一覧は、【住民税非課税世帯】給与・年金の収入基準《ボーダーラインはいくら?》知っておきたい5つの優遇制度!制度の基本とファクトを網羅した完全ガイドでくわしく解説しています。

住民税非課税世帯を対象にした優遇措置の一覧1/7

住民税非課税世帯を対象にした優遇措置を一覧にした表

LIMO編集部作成

1.1 国民健康保険料のうち、頭数と世帯数でかかる部分はどう軽くなるのか

国民健康保険料には、所得の大小によらず人数と世帯の数に応じてかかる部分があります。ここに次の軽減が用意されています。

応益分保険料(均等割・平等割)の「7割・5割・2割」のいずれかを減額

3つの割合のどれに当たるかは、世帯の所得の水準で分かれます。同じ非課税の世帯という言葉でくくられていても、下がり方には幅があるということです。

1.2 介護保険料については、対象と減額幅のどちらが自治体に委ねられているのか

  • 第1号被保険者(65歳以上)が対象。減額される金額は自治体ごとに異なる

対象になる立場は全国で同じですが、下がる金額のほうは市区町村が決めています。介護保険料は世帯の課税の状況によって段階が割り振られる仕組みなので、世帯の側の判定が変われば、こちらの段階も一緒に動くことになります。

1.3 国民年金保険料は、納める・免除される・待ってもらうのどれを選べるのか

  • 全額免除・一部免除・納付猶予のいずれか

手続きを取らずに未納のまま置いておく場合と、免除や猶予の届け出を済ませておく場合とでは、将来受け取る年金額の数え方が変わります。どの扱いに当てはまるのかは、年金事務所の窓口で確かめていただくのが確実です。

1.4 保育料の無償化は、0歳から2歳の部分にどう効いてくるのか

  • 0歳から2歳までの保育料が無償化
  • これにより、0~5歳までの保育料が無料になる

1.5 高等教育の修学支援新制度では、学費と奨学金がどう扱われるのか

  • 授業料・入学金の免除または減額
  • 返還を要しない給付型奨学金
  • 上記により大学、短期大学、高等専門学校、専門学校を無償化

これらのほかに、市区町村が独自に設けている支援もあります。合わせると、使える制度はさらに幅を持ちます。

徳田 椋
ここに並んでいるのは、いずれも住民票の世帯を単位にして判定される仕組みです。運用の口座を何本開いていても、この判定の側は動きません。逆に言えば、口座開設をためらう理由として世帯の判定を持ち出す必要もない、ということになります。2つの制度を同じ天秤に載せていた方は、まずその天秤を外してみてください。

2. 「住民税非課税世帯」の3つの判定基準と「非課税の投資枠」は別物

住民税は、住んでいる都道府県と市区町村へ納める地方税です。地域の行政サービスや公共インフラの費用にあてられています。個人が負担する部分は2つの層に分けて計算され、そのどちらも発生していない状態が「住民税非課税」と呼ばれます。

2.1 住民税の中身を均等割と所得割に分けて、どちらの話なのかを確かめる

個人住民税が「均等割」と「所得割」の2層でできていることを示した図2/7

個人住民税が均等割と所得割の2層で構成されていることを示した図

出所:総務省「個人住民税」

  • 均等割:所得に関係なく一律に課税される部分
  • 所得割:所得に応じて税額が決まる部分

この2つがどちらも発生していない人が住民税非課税で、住民票の世帯にいる方の全員がその状態にあるとき、その世帯が住民税非課税世帯として扱われます。所得割だけが非課税という状態もありえますが、そこまでを支援の対象に含めるかどうかの線引きは市区町村ごとに異なります。細かいところは、お住まいの自治体の窓口で確かめてください。

一方で、NISA(少額投資非課税制度)などの「非課税で運用できる投資枠」は、国が用意した口座内で得た運用利益(値上がり益や分配金)に税金がかからない仕組みです。住民税の判定基準となるのは「前年の世帯の所得」であり、NISAなどの非課税枠で得た利益は、この「判定に使う所得」には含まれません。つまり、投資の非課税枠をいくら活用して利益を出しても、住民税非課税世帯の判定には影響しないのです。「投資をすると給付金がもらえなくなるのでは」と心配して口座開設をためらう必要はありません。

もう一つ押さえておきたいのは、手元に入ってくるお金の全部が判定の計算に載るわけではない、という点です。遺族年金と障害年金については、所得税法や各種の年金法で非課税所得とされています。そのため、いくら受け取っていても、判定のための所得を積み上げる段階では数に入りません。

徳田 椋
「年金を受け取っているのだから、うちは対象にならない」と感じたときは、まず届いている通知書の名前を見てください。遺族年金や障害年金は判定の計算に入らない扱いになっています。資料の注記に何が含まれ、何が含まれないのかが書いてありますので、そこを読まずに確認をやめてしまうと、当てはまる制度を見落とすことになります。

2.2 課税されない扱いになる道筋は、なぜ3通り用意されているのか

住民税が課されない主な条件は、次のいずれかに当てはまる場合です。

  1. 生活保護を受給している
  2. 障害者、未成年者、寡婦(夫)、ひとり親で、前年所得が135万円以下
  3. 前年所得が自治体の定める基準額を下回る

1と2は全国で共通するルールです。3の所得基準は自治体ごとに設定されているため、金額は地域によって異なります。運用の口座をどこの金融機関で開いたかは、この3つのどこにも出てきません。次に、3つめの基準額がどう組み立てられているのかをみていきます。

3. 基準額を決める式には、どんな数字が並んでいるのか「神戸市の例」

ここでは兵庫県神戸市の設定をもとに確認します。

神戸市が示している「住民税がかからない人」の基準3/7

神戸市が示している住民税がかからない人の基準を示した表

出所:神戸市「住民税(市県民税)がかからない人」

35万円×(本人+同一生計配偶者(※)+扶養親族数)+10万円+21万円

※21万円は、同一生計配偶者または扶養親族がいる場合のみ加算されます。同一生計配偶者とは、生計を一にし、前年の合計所得金額が58万円以下の配偶者を指します。

式に入っているのは人数と、決まった額の足し算だけです。どの金融機関に口座を持っているか、いくつ持っているかという要素は式のどこにもありません。頭数が1人のときは35万円と10万円を足した45万円が上限になり、同一生計配偶者か扶養親族が1人いれば35万円が2人分になったうえで21万円が加わり、101万円まで上がります。

4. 合計所得を年金や給与の額に置き換えると、線はどこに現れるのか

ここでいう所得は、収入から各種の控除を差し引いた後の金額です。神戸市の基準を実際の収入額に置き換えると、次のようになります。

神戸市の基準で住民税非課税世帯に該当する収入の目安4/7

神戸市の基準で住民税非課税世帯に該当する収入の目安を示した表

出所:神戸市「住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?」

ひとりだけの世帯にあてはめると

合計所得金額が45万円以下になる方

  • 給与収入のみで収入金額が110万円以下
  • 年金収入のみで収入金額が155万円以下(65歳以上)
  • 年金収入のみで収入金額が105万円以下(65歳未満)

同一生計配偶者か扶養親族が1人いる世帯にあてはめると

合計所得金額が101万円以下になる方

  • 給与収入のみで収入金額が166万円以下の方
  • 年金収入のみで収入金額が211万円以下の方(65歳以上)
  • 年金収入のみで収入金額が171万3334円以下の方(65歳未満)

同じ45万円という所得でも、給与だけなら110万円、65歳以上で年金だけなら155万円と、収入の額に直したときの位置は大きく変わります。65歳未満の年金だけであれば105万円で、同じ年金でも年齢によって50万円の差が出ます。単身世帯であれば、給与収入のみの場合は年収100万円以下、65歳以上で年金収入のみの場合は155万円以下が一つの目安とされています。

配偶者や扶養親族がいる世帯では線が上に動き、65歳以上の夫婦世帯で年金収入のみの場合は年収211万円程度まで非課税となる可能性があります。線の位置は世帯の構成と収入の種類で決まるということです。

5. 境界のすぐ上に出てしまった年、家計はどこから重く感じるのか

この仕組みで意識しておきたいのが、収入が境界を越えたときに生じる実質的な負担増です。仕組みを知らないまま線をまたぐと、思っていた方向と逆に家計が動くことがあります。

5.1 働く時間を増やした結果、どの優遇が手から離れるのか

境界の近くでパートの就業時間を増やし、年収を一定の額以上に引き上げると、非課税の対象から外れることで各種の優遇措置や給付金を受けられなくなる場合があります。その結果、収入の増加分以上に負担や失うものが大きくなり、働いた時間に対して手取りの伸びが鈍る、という現象が問題視されることがあります。年金の繰下げ受給で受給額が増えたときにも、判定の境界をまたぐことで同じ形のバランスの変化が起こると議論されています。

5.2 額面ではなく手取りで考えるとき、どの2つの道が残るのか

境界の近くにいる方が見るべきなのは、額面の年収ではなく、税金と社会保険料を引いたあとに手元へ残る額です。取りうる道は二つに絞られます。配偶者の扶養の範囲へきっちり収めておく道と、社会保険料の負担増(約20万〜30万円)を上回るところまで働き、手取りが実質的にプラスへ転じるライン(目安として年収150万〜153万円以上)へ届かせる道です。社会保険の壁とされる106万円や130万円をわずかに越えるだけの働き方だと、しばらく手取りが目減りしたまま伸びない、ということが起こります。ご自身の時給と勤務時間、勤め先の規模を並べて、分岐点を先に出しておきましょう。

徳田 椋
線をわずかに超えると、住民税がかかるようになるだけでは済みません。国民健康保険料や介護保険料の均等割にかかっていた軽減が縮んだり外れたりし、高額療養費で医療費が止まる上限額も上がります。低所得の世帯へ向けた臨時の給付金からも対象外になります。増えるのは収入の一項目だけなのに、減る側は複数の項目に散らばる。この見え方の差が、働いた分が報われていないという実感につながっているように感じます。動かす前に、変わる項目を紙に書き出してみてください。

6. 退職して収入が減った年に、非課税へ切り替わらないのはどうしてなのか

非課税の判定では、いつから対象になるのかというタイミングの問題も見落とされがちです。ここには制度の側に決まった時間差があります。

6.1 住民税が見ているのは、いつからいつまでに受け取った分なのか

住民税の計算に使われるのは、1月1日から12月31日までに得た1年分の所得です。その結果が翌年の6月から課税として現れます。したがって、いま入ってくる収入がゼロであっても、去年の収入が境界を超えていれば、今年は課税されている世帯という扱いになります。

6.2 定年を迎えた翌年に届く納付書は、どの時期の収入で作られているのか

たとえば長く勤めた会社を3月に定年退職し、4月から年金だけの暮らしに入ったとします。4月以降に入るお金は大きく減りますが、退職した年の6月ごろから本格的に納める住民税と、退職直後の納付額は、現役時代の高い給与から計算されたものです。その年の所得が非課税の境界を下回っても、それが住民税へ反映されて扱いが実際に切り替わるのは、退職した年の翌々年の6月以降です。つまり退職して最初の数カ月から1年は、前の年の所得をもとにした税と国民健康保険料の請求が届き続けます。その分の現金を手元に残しておく必要があります。

6.3 配偶者を亡くして世帯がひとりになったとき、扱いはいつ動くのか

この時間差は、夫婦のどちらかが亡くなった場合にも影響します。夫が課税の対象で妻が非課税だった場合、世帯としては課税されている世帯です。夫が亡くなって妻が世帯主のひとり世帯になれば、妻自身の前年所得が境界以下であれば非課税世帯となります。ただし、世帯の状況が変わったことによる国民健康保険料の再計算や、給付金の基準日をいつ時点で見るかという扱いは複雑です。大きな出来事があったときは、どのタイミングで対象になるのかを自治体のホームページで確かめ、窓口で相談しておく必要があります。

徳田 椋
退職金が入ったのだから、その一部をすぐ運用に回そう、と考える前に、この時間差の分の支払いを別に取り分けておいてください。退職して最初の1年は、現役時代の給与をもとにした住民税と国民健康保険料が届きます。使う予定が決まっているお金を運用に回すと、値下がりした局面で取り崩さざるをえなくなり、元本割れを避けにくくなります。口座開設を急ぐ前に、翌年と翌々年に出ていく金額を書き出しておくと、回せる額が見えてきます。

7. 70歳代や80歳以上で課税世帯の割合が下がるのは、収入と控除のどちらが効いているのか

厚生労働省「令和6年 国民生活基礎調査」をもとに、年代別の住民税課税世帯の割合をみていきます。

住民税課税世帯の割合を年代別に並べた一覧5/7

住民税課税世帯の割合を年代別に並べた一覧表

出所:厚生労働省「令和6年国民生活基礎調査」(第131表)をもとにLIMO編集部作成

  • 29歳以下:63.0%
  • 30〜39歳:87.5%
  • 40~49歳:88.2%
  • 50~59歳:87.3%
  • 60~69歳:79.8%
  • 70~79歳:61.3%
  • 80歳以上:52.4%
  • 65歳以上(再掲):61.1%
  • 75歳以上(再掲):54.4%

全世帯数には非課税世帯および課税の有無が不詳の世帯が含まれ、総数には年齢不詳の世帯が、住民税課税世帯には住民税額が不詳の世帯が含まれています。

30歳代から50歳代ではおよそ9割近くが課税されている世帯ですが、65歳以上では約6割、75歳以上では5割強まで下がります。効いているのは収入と控除の両方です。高齢期になると収入の中心が給与から年金へ移り、所得の水準そのものが下がります。そこに、65歳以上に設けられた公的年金等控除や、遺族年金が非課税所得として扱われる仕組みが重なります。同じ金額を受け取っていても、判定に使う所得へ変換される段階で目減りする、という構造です。

8. 【高齢者世帯の総所得】約半数の世帯が「8割以上年金頼み」

公的年金を受給している世帯のうち、収入のすべてを年金で賄っている世帯の割合は43.4%と示されています(厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」)。裏返せば、半数以上の世帯は年金以外の収入源も使いながら暮らしていることになります。

高齢者世帯の総所得に占める公的年金・恩給の割合6/7

高齢者世帯の総所得に占める公的年金・恩給の割合を示したグラフ

出所:厚生労働省「2025年 国民生活基礎調査の概況(所得の状況)」図11をもとにLIMO編集部作成

  • 20%未満:4.2%
  • 20〜40%未満:9.7%
  • 40〜60%未満:13.6%
  • 60〜80%未満:14.1%
  • 80〜100%未満:17.1%
  • 100%(すべてが公的年金・恩給):41.3%

分布を眺めると、公的年金・恩給が総所得の80%以上を占める世帯は58.4%、100%という世帯は41.3%あり、山ははっきり右の端へ寄っています。一方で、20%未満という層も4.2%あります。同じ高齢者世帯という言葉のなかに、年金だけの世帯と、年金以外の収入が中心の世帯が同居しているということです。

年金額には個人差がありますが、多くの高齢世帯に共通する課題は、収入と支出のバランスをどう保つかという点にあります。生活費が年金収入を上回る場面もあり、不足分をどう補うかが問われます。私的年金や預貯金の取り崩し、運用による補完に加え、就労の継続や家族からの支援、公的な扶助制度の利用など、複数の手段を組み合わせて対応している世帯も多くみられます。

徳田 椋
補い方を考える段階で口座開設の話が出てくるのですが、そのときに「運用を始めると非課税の世帯から外れるのではないか」と心配される方がいます。非課税の枠のなかで出た利益は判定に使う所得へ足されない扱いですので、その心配は切り分けて考えていただいて構いません。ただし、値動きのある資産である以上、元本割れが起こる場面もあります。心配する先を取り違えないよう、判定の話と値動きの話は分けて置いておきましょう。

9. 同じ非課税世帯でも、市区町村ごとに何が上乗せされているのか

国の制度として設けられた支援に加えて、市区町村が独自の優遇制度を用意している場合があります。同じ住民税非課税世帯であっても、住んでいる地域によって受けられる支援には差が出ます。

9.1 水道料金と下水道使用料の減額は、どの世帯に向けられているのか

水道料金や下水道使用料を減らす制度を、住民税非課税世帯や低所得の世帯へ向けて用意している自治体があります。さいたま市はその一例で、市民税・県民税が非課税の世帯を対象とする減額の制度を設けています。(出所:さいたまこそだてWEB)水道光熱費は毎月かならず出ていく固定費ですから、こうした減額は年間を通して効いてきます。

9.2 ごみ袋の配布や移動にかかる費用の助成は、どんな形で届くのか

公共料金以外にも、地域によっては次のような支援が行われています。

  • 指定ごみ袋の無料配布
  • 高齢者向けバス乗車券の助成
  • タクシー利用券の交付
  • 外出支援の交通費補助

高齢の世帯では通院や買い物にかかる移動費が家計の負担になりやすいため、移動を支える制度は暮らしの土台に近いところで効いてきます。

9.3 物価高や災害のときに、独自の給付が加わることもあるのか

近年は物価高への対応として、自治体が独自の給付金を実施する例も増えています。水道の基本料金の減免や生活支援の給付を独自に行う自治体もあり、中身は地域によって大きく異なります。たとえば向日市では、物価の高騰への対策として水道基本料金の減免を実施しています。自然災害が起きたときに、住民税非課税世帯や低所得の世帯を対象として見舞金や生活再建の支援を上乗せする自治体もあります。

9.4 国の制度の一覧だけを見ていると、どこで取りこぼすのか

非課税の世帯に向けた支援と聞くと、国の給付金や保険料の軽減のほうへ目が向きます。ところが暮らしの側からみると、市区町村が独自に設けた支援のほうが長く家計を支えている場合もあります。同じ収入の水準であっても、住む地域によって受けられる支援は異なります。非課税の判定を受けたときは、市区町村のホームページや福祉の窓口で、利用できる制度を一度確かめておきたいところです。

10. 近年の経済対策では、支援の届け方がどう移り変わってきたのか

ここ数年の経済対策を並べると、対象と手法の両方が動いています。かつては住民税非課税世帯への現金給付が中心でしたが、いまは減税や子育てへの支援を織り交ぜた形へと広がっています。

10.1 2024年の定額減税で軽くなったのは、1人あたりと4人世帯でそれぞれいくらか

2024年の経済対策では、物価の上昇でふくらんだ家計の負担を抑える目的から定額減税が実施されました。減税の額は所得税が3万円、住民税が1万円で、合わせて1人あたり4万円。夫婦と子ども2人の4人世帯なら、合計16万円の軽減を受けられる仕組みでした。給与所得者については2024年6月以降の給与から順次反映され、手取りを増やすことで物価高に対応する内容でした。定額減税そのものは一度限りの措置でしたが、税負担を直接軽くする手法は今後の経済対策でも有力な選択肢とみられています。

10.2 子育て世帯への給付は、非課税かどうかを問わない形へ広がったのか

近年の政策では、低所得の世帯だけでなく、子育て世帯全体を対象とした支援の強化も進んでいます。こども家庭庁の「物価高対応子育て応援手当」は、18歳以下の子どもを育てている世帯へ給付を行うものでした。

物価高対応子育て応援手当の制度概要7/7

物価高対応子育て応援手当の制度概要を示した図

出所:こども家庭庁「物価高対応子育て応援手当」

従来のように住民税非課税世帯だけを対象とするのではなく、子育て世帯全体へ幅広く届ける点が特徴になっています。

10.3 給付付き税額控除は、控除と現金給付をどうつなぐ案なのか

これから先の制度として名前が挙がるのが「給付付き税額控除」です。はじめに税額控除で負担を減らし、控除しきれずに残った分を現金給付で埋めるという組み立てで、住民税非課税世帯や低所得の世帯も含めた広い範囲へ支援を届けることを目的として、検討が進められています。将来の経済対策では、一時的な給付金だけに頼るのではなく、税制を使った継続的な支援へ重点が移っていく可能性もあると考えられています。

11. 住民票の世帯を分ければ非課税になる、という話はどこで止まるのか

世帯分離は、同じ家に住んだまま住民票の上での世帯を2つに分ける行政上の手続きです。働いている子と年金で暮らす親が一緒に住んでいるとき、親だけを別の世帯として届け出れば、親の所得が少ないかぎりその世帯は住民税非課税世帯となり、介護保険料や高額療養費の自己負担限度額が下がることがあります。

ただし、生計を別にしているという実態が求められます。世帯を分けると国民健康保険料の均等割などが世帯ごとに別々に計算されることになります。加えて、親が家族の健康保険で扶養されている状態から抜ける必要が出てきた場合は、収入や生計維持の実態しだいで、家族の側の社会保険料や税の負担にも影響が及ぶ恐れがあります。所得や資産の要件、自治体の基準によって軽減を受けられない場合もあるため、事前に市区町村の窓口で十分な試算を行うことが欠かせません。

11.1 世帯が2つになると、平等割はどちらの側に効いてくるのか

世帯分離で見落とされやすいのは、国民健康保険料が増える側の動きです。国民健康保険料には、1世帯につき定額でかかる平等割という部分があります。世帯を2つにすると、この平等割が両方の世帯にそれぞれ課され、合計では二重に負担することになります。親の介護保険料が下がったとしても、世帯全体でみると国民健康保険の負担増のほうが上回り、合計では持ち出しになるケースが頻繁に生じています。

12. 「非課税世帯はずるい」という受け止めは、判定の何から生まれているのか

住民税非課税世帯を世帯主の年齢で分けると、65歳以上の高齢者世帯が全体の75%以上にのぼると、厚生労働省の調査で示されています。現役を退いて収入が年金だけになれば所得は下がりますから、境界より下に入る人が増えるためです。

12.1 貯蓄や不動産が判定に入らないのは、どこを見て決めているからなのか

いまの判定基準は世帯全員の前年の所得のみに基づいており、保有している預貯金や不動産といった資産の状況は反映されません。そのため、多額の退職金や自宅などの資産を持つシニア層であっても、年金収入などが少なく所得が基準額以下であれば非課税世帯となります。その一方、働きながら子どもを育てている現役の世代は、ほんの少しの所得の差で課税される側に入り、支援が届かないという逆転が起きやすくなります。資産と所得のずれをめぐって、制度の公平性の議論が続いています。

12.2 給付の要件に資産を加える議論は、2026年時点でどこにあるのか

資産を持ちながら所得は低いという層をどう扱うかについては、公平性の面から見直しを求める声が一部にあります。今後の経済対策や新しい給付制度をめぐる議論では、所得の要件のほかに世帯が持つ資産をどこまで見るのかが、長期の課題として挙がっています。現時点では住民税非課税などの所得基準が中心ですが、制度の持続可能性をめぐる動向には注意が必要です。

非課税かどうかで窓口の負担割合が切り替わる場面については、【75歳からの医療費】いちばん重い「3割負担」になる年収はいくら?老後の家計を左右する判定基準をズバリ解説にまとめています。

徳田 椋
「口座に残高があると行政に見られてしまうのではないか」と感じて、口座開設そのものをためらう方がいます。2026年の時点では、マイナンバーの公金受取口座の登録は給付金を受け取るための口座情報を届けておく仕組みにとどまり、行政が預貯金の残高や資産の状況を自動で一括して把握できるものではありません。資産の要件を入れるかどうかの議論は、プライバシーの保護や行政の実務負担も含めて続いています。いまの制度がどこまでを見ているのかを押さえたうえで、判断していただければと思います。

13. 口座と判定をめぐって、よく寄せられる2つの質問を確認

13.1 Q1. インターネットの試算ツールだけで、非課税かどうか見分けられるのか

A. ネット上のツールで出るのは目安の数字です。配偶者控除や医療費控除、社会保険料控除がどこまで使えるかで所得の計算結果は大きく動きますし、境界の位置も自治体によって違います。決め手になるのは、お住まいの役所が出す課税証明書や非課税証明書のほうです。

13.2 Q2. 年度の途中で世帯主が亡くなったとき、その年度の住民税はどうなるのか

A. 住民税の判定に使われるのは、毎年1月1日時点の状況と前の年の所得です。年度の途中で世帯主が亡くなった場合も、1月1日時点で課税が決まったその年度分の納税義務は消えず、相続人へ引き継がれます。世帯の形が変わったことで非課税世帯にあたるかどうか、各種の給付金の対象になるかどうかは、自治体や時期によって基準が違います。お住まいの市区町村の窓口で確かめてください。

14. 【独自試算】非課税で運用できる枠で得た利益と、判定に使う所得額は、どこまで別々に動くのか

ここまでみてきたとおり、判定に使うのは前年の所得で、口座の数や種類は式に入りません。では、運用で利益が出た年に、判定に使う所得額はどう動くのか。非課税で運用できる枠のなかで利益を出した場合と、通常の課税される口座で利益を出して申告した場合を並べ、同じ利益の額に対して判定側の数字がどこまで離れるのかを確かめます。

前提は次のとおりです。

  • 65歳以上でひとりだけの世帯とし、公的年金155万円だけで暮らしているものとします。神戸市の基準では合計所得金額45万円にあたり、非課税の上限にちょうど届いている状態です
  • 遺族年金や障害年金は受け取っておらず、医療費控除などで所得から差し引く要素も考えないものとします
  • 運用で出た利益は、その年のうちに売って確定したものとします
  • 非課税で運用できる枠のなかで出た利益は判定に使う所得へ加えない扱い、通常の課税される口座で出た利益は申告して合計所得金額に加える扱いとして比べます
  • 利益の額は10万円・56万円・90万円の3通りを置きます。56万円は45万円と101万円の差、90万円は45万円と135万円の差にあたる額で、記事に出てきた基準額との対比が見やすくなるように選んだものです
  • 金額はいずれも約・目安であり、実際の判定は自治体の基準や各人の控除の状況によって変わります。保証ではありません

まず、非課税で運用できる枠のなかで利益が出た場合です。利益が10万円でも、56万円でも、90万円でも、判定に使う合計所得金額は45万円のままです。神戸市のひとり世帯の上限45万円に収まっているので、非課税の側に残ります。利益が3倍、9倍と増えても判定側の数字は1円も動かない、というのがこの枠の性格です。

次に、同じ利益を通常の課税される口座で出して申告した場合です。利益10万円なら合計所得金額は45万円に10万円を足した55万円となり、上限の45万円を10万円上回ります。利益56万円なら101万円で、上限を56万円上回ります。この101万円という額は、同一生計配偶者か扶養親族が1人いる世帯の上限と同じ数字です。つまり同じ101万円でも、ひとり世帯なら線の外、2人の世帯なら線の内側という分かれ方をします。利益90万円なら135万円で、障害者や未成年者、寡婦(夫)、ひとり親の区分で示されている135万円と同じ額まで積み上がります。

2つを並べると、利益が0円から90万円へ動くあいだ、非課税の枠の側は45万円で一本の水平線を引いたまま動かず、課税される口座の側は45万円から135万円へ、利益と同じ幅だけ持ち上がります。開きは最大で90万円です。判定に使う所得額でみたときの差は、利益の額そのものと一致するということになります。

ここで見ていただきたいのは、開きの大きさよりも向きのほうです。非課税の枠を使っても、判定に使う所得額は45万円から下がりません。枠を使えば非課税の世帯に近づく、という向きの動きは起きないということです。動くとすれば、課税される口座で利益を確定して申告した年に、線の外側へ出ていく方向だけです。なお、非課税で運用できる枠には年間で使える上限があり、その枠のなかに入れた資産にも値動きがあります。円に戻す時期によっては元本割れが起こる場面もありますし、利益の扱いや申告が必要かどうかは口座の区分や制度の条件によって変わります。ご自身の数字にあてはめる段階では、課税証明書と口座の年間取引の書類を並べたうえで、市区町村の窓口や税務署で確かめてください。

15. 【監修者コメント・村岸理美】45万円・101万円・135万円という3つの数字は、それぞれ誰に当てはまるのか

村岸 理美

今回のデータで最も注目していただきたいのは、記事に出てきた45万円・101万円・135万円という3つの数字が、どれも同じ性質の線ではないという点です。45万円と101万円は神戸市が設定している基準額で、頭数に35万円を掛けて10万円を足し、同一生計配偶者か扶養親族がいる場合にだけ21万円を加える式から出てきます。基準額は自治体ごとに設定されるため、他の市区町村では位置が動きます。一方の135万円は、障害者、未成年者、寡婦(夫)、ひとり親に当てはまる方についての全国共通の条件で、世帯の人数とは別に置かれた線です。同じ「非課税の目安」という言葉でくくって覚えてしまうと、どれが自分に当てはまるのかが分からなくなります。

収入額に置き換えた155万円という数字にも、適用条件が付いています。これは65歳以上で年金収入だけの方の場合であり、65歳未満なら105万円まで下がります。給与収入だけなら110万円、同一生計配偶者か扶養親族が1人いれば211万円と171万3334円というように、年齢・収入の種類・世帯の人数の3つが揃ってはじめて位置が決まります。年齢で50万円も動くのは、公的年金等控除の額が65歳を境に変わるためです。

記事中の試算のように、非課税で運用できる枠のなかの利益は判定に使う所得へ積み上がらない一方、課税される口座で確定して申告した利益は同じ幅だけ所得を押し上げます。ここで補っておきたいのは、試算が神戸市の基準と、控除を考えない単純な形を前提に置いているという点です。実際には社会保険料控除や医療費控除の適用状況で合計所得の位置は変わりますし、口座の区分によって申告が必要かどうかも変わります。10万円・56万円・90万円という利益の額も、対比を見やすくするために置いた数字であって、実績や見込みではありません。CFPとして家計相談を受けるなかでも、名前に「非課税」と付く制度をひとつのものとして覚えてしまい、あとから課税証明書の数字と突き合わせて戸惑われる場面に立ち会ってきました。ファイナンシャル・プランナーとしてお伝えしたいのは、自分がどの線のどちら側にいるのかを、他人の平均ではなく自分の数字で確かめることが大切だということです。まずはねんきん定期便やねんきんネットで年金の見込み額を確かめ、課税証明書と突き合わせるところから始めてみましょう。