「児童手当には所得制限があって、年収が高いと減額されたりもらえなかったりする」——この理解のまま情報を探していないでしょうか。実はこの前提自体が、すでに古くなっています。

この記事では、児童手当制度の基本を解説した記事より一部を引用・参照しつつ、所得制限がどうなったのか、そしてなぜ今も「所得制限」という言葉で検索されるのかを、こども家庭庁の公式情報にもとづき編集部が整理します。

1. 所得制限は「今は存在しない」というのが結論

まず、重要な結論から確認します。

1.1 令和6年10月分から、所得にかかわらず全員が支給対象に

こども家庭庁が公表している現行の児童手当制度の案内には、支給額や支給時期についての説明はあっても、所得による支給制限についての記載がありません。これは、令和6年10月分の児童手当から、所得制限が撤廃されたためです。所得がどれだけ高くても、児童を養育していれば所定の金額が支給される仕組みに変わっています。

「児童手当 所得制限」というキーワードで検索する人が多いのは事実ですが、その多くは、撤廃前の制度を前提にした疑問だと考えられます。まず「今は所得制限がない」という事実を押さえた上で、なぜこの検索が今も多いのかを見ていきます。

齊藤 慧
「所得制限があるから対象外だろう」と思い込み、そもそも申請していない世帯が一定数いると考えられます。この思い込みが、これから説明する「もらい忘れ」の実例につながっています。心当たりがある方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

2. 【編集者の視点】

実務上のポイントは、この所得制限撤廃が自動的に反映されるわけではないという点です。以前の制度で所得上限を理由に支給されていなかった世帯は、市区町村への申請をあらためて行わない限り、撤廃後も支給されません。次の章で、この「申請が必要な人」を具体的に確認します。

3. 撤廃前の所得制限は「特例給付」と「上限限度額」の2段階だった

次に、撤廃前にどのような仕組みだったのかを確認します。

3.1 所得が一定額を超えると減額、さらに超えると支給ゼロという構造

令和6年9月分までの児童手当制度では、所得が一定の基準(所得制限限度額)を超えると、本来の支給額ではなく「特例給付」として月額一律5000円に減額されていました。さらに所得が「所得上限限度額」を超えると、特例給付も含めて支給自体がありませんでした。つまり、所得によって「満額」「特例給付(減額)」「支給なし」の3段階に分かれていたのが、撤廃前の仕組みです。

この「所得上限限度額を超えて、児童手当も特例給付も受け取っていなかった」世帯こそが、令和6年10月の改正で新たに支給対象になった層です。こども家庭庁の案内では、この層について「制度改正後に児童手当を受給するために新たに申請が必要な方」の1つとして明記されています。

3.2 【令和6年9月以前の所得による支給区分】

前提:こども家庭庁公表の制度改正内容に基づく編集部整理(令和6年10月分以降は下記の区分自体が撤廃)1/2

前提:こども家庭庁公表の制度改正内容に基づく編集部整理(令和6年10月分以降は下記の区分自体が撤廃)

出所:こども家庭庁「もっと子育て応援!児童手当」を基にLIMO編集部作成

  • 所得制限限度額以下:通常額を支給
  • 所得制限限度額超・所得上限限度額以下:特例給付(月額一律5000円)
  • 所得上限限度額超:支給なし
齊藤 慧
「特例給付をもらっていた」「支給ゼロだった」という2つの層が、令和6年10月の改正でどう変わったのかを整理すると、自分が申請し直す必要があるかどうかが見えてきます。まずは自分がどちらの層に当てはまっていたかを思い出してみましょう。

4. 【編集者の視点】

実務上、以前の所得制限の基準額は、扶養親族の人数によって細かく段階が分かれていました。撤廃された今となっては具体的な旧基準額を覚えておく必要はありませんが、「所得によって3段階に分かれていた」という構造だけ理解しておけば、周囲の年配の親族などから受ける相談にも対応しやすくなります。

5. 撤廃前の所得上限限度額は、扶養親族の人数で800万円台〜900万円台だった

撤廃前の基準額を具体的に見ておくと、自分が対象だったかどうかを振り返りやすくなります。

5.1 扶養親族が多いほど、限度額も高く設定されていた

静岡市が公表していた令和6年9月分までの基準によると、扶養親族等の数が0人の世帯では所得制限限度額622万円・所得上限限度額858万円、扶養親族3人の世帯では所得制限限度額736万円・所得上限限度額972万円というように、扶養親族の人数が増えるほど限度額も高く設定されていました。この「所得上限限度額」を所得ベースで超えていた世帯が、児童手当も特例給付も受け取れなかった層です。

ここでいう「所得」は、給与収入そのものではなく、給与所得控除等を差し引いた後の金額です。そのため、額面の年収だけを見て「うちは対象外だったはず」と判断するのではなく、実際の所得額を確認する必要があります。

5.2 【令和6年9月以前の所得制限限度額・所得上限限度額】

前提:静岡市公表の令和6年9月分までの基準額に基づく編集部整理2/2

前提:静岡市公表の令和6年9月分までの基準額に基づく編集部整理

出所:静岡市「児童手当の所得制限(令和6年9月分まで)」を基にLIMO編集部作成

  • 扶養親族0人:所得制限限度額622万円・所得上限限度額858万円
  • 扶養親族1人:所得制限限度額660万円・所得上限限度額896万円
  • 扶養親族2人:所得制限限度額698万円・所得上限限度額934万円
  • 扶養親族3人:所得制限限度額736万円・所得上限限度額972万円
齊藤 慧
「所得」と「年収(額面)」は同じ金額ではありません。この違いを知らずに自己判断してしまうと、実際には対象だった可能性を見落とすことになりかねません。基準額は自治体によっても目安の示し方が異なるため、正確な数字は自分の自治体で確認しましょう。

実務上、これらの基準額はあくまで市区町村ごとに公表していた「目安」の1つであり、正確な判定には毎年の所得証明が必要でした。撤廃された今となっては過去の話ですが、「以前は所得上限を超えていたはずだ」と考えている世帯ほど、念のため一度、市区町村に確認しておく価値があります。

6. 編集部試算:所得上限超だった世帯が新たに受け取れる金額

実際に、所得制限撤廃によってどのくらいの金額が新たに受け取れるようになったのかを試算してみます。

6.1 3歳以上の子1人なら年12万円、第3子以降なら年36万円

3歳以上高校生年代までの子が1人いる世帯の場合、月額1万円が支給されるため、年間では1万円×12か月=12万円が新たに受け取れる計算になります。第3子以降に該当する子であれば、月額3万円×12か月=36万円です。複数の子がいる世帯では、この金額がさらに積み上がります。

「所得が高いから関係ない」と考えていた世帯にとって、年間十数万円〜数十万円という金額は、家計にとって決して小さくない差になります。以前、所得上限を理由に児童手当をあきらめていた世帯ほど、あらためて申請状況を確認する価値があります。

子どもが複数人いる世帯では、この金額はさらに大きくなります。例えば3歳以上の子が2人(うち1人が第3子以降に該当しない場合)いれば、年間24万円が新たに受け取れる計算です。子どもの人数・年齢の組み合わせごとに、一度自分の世帯で試算してみることをおすすめします。

齊藤 慧
「うちには関係ない話」と読み飛ばしてしまう前に、一度だけ試算してみることをおすすめします。年間十数万円という金額は、多くの家庭にとって無視できない規模です。子どもの人数が多いほど、その差はさらに大きくなります。

7. 「所得上限超で不支給だった人」は、申請しないと支給されない

最後に、実際に申請が必要な人の条件を具体的に確認します。

7.1 特例給付を受けていた人は自動継続、支給ゼロだった人は要申請

こども家庭庁の案内によると、制度改正後にあらためて申請が必要になるのは、「中学生以下の児童を養育しているが、所得上限限度額を超過し、児童手当も特例給付も受給していない方」です。逆にいえば、改正前に特例給付(月5000円)を受け取っていた世帯は、この申請の対象には含まれていません。

この線引きを見落とすと、「以前から児童手当をもらっていなかったから、今回も対象外だろう」と思い込み、本来受け取れるはずの手当を申請しないままになってしまいます。所得が高い世帯ほど、この見落としのリスクが大きいという逆説的な構造になっています。

なお、この申請には猶予期間が設けられており、令和7年3月31日までに申請すれば、令和6年10月分にさかのぼって支給されます。この猶予期間はすでに終了しているため、今から新たに気づいた場合は、通常のルール(原則として申請した月の翌月分から支給)に従うことになります。

「所得制限があるから対象外」と思い込んで申請自体をしていないケースは、他の給付制度でも起こりがちです。給付金をもらえない「所得制限・年金収入の壁」の落とし穴で紹介されているように、所得制限の有無や基準を思い込みで判断せず、その都度公式情報で確認する習慣が、もらい忘れを防ぐ近道になります。

齊藤 慧
「うちは所得が高いから対象外」という思い込みほど根強いものはありません。以前に一度でも児童手当の申請を諦めた経験がある世帯は、この機会に自分の状況を見直してみることをおすすめします。数万円単位の話になることもあります。

8. 【編集者の視点】

実務上、自分が過去に所得上限を理由に不支給だったかどうかを確認したい場合は、お住まいの市区町村の児童手当担当窓口に問い合わせるのが確実です。過去の通知書が手元に残っていれば、それも確認の手がかりになります。

※本記事は、こども家庭庁が公表する公式の最新情報を直接確認の上、執筆・検証しています。

9. 令和6年10月の改正は「所得制限撤廃」だけではない

最後に、あわせて理解しておきたい、同時に行われた他の改正内容にも触れておきます。

9.1 支給期間の延長・第3子以降の増額も同時に実施された

こども家庭庁の案内によると、令和6年10月分からの改正では、所得制限の撤廃に加えて、支給期間が高校生年代まで延長されたこと、第3子以降の支給額が月額3万円に増額されたこと、支払月が年3回から偶数月ごとの年6回に変更されたことも同時に実施されています。「所得制限撤廃」という1点だけに注目していると、これらの他の変更点を見落とすことがあります。

特に、高校生年代の子を養育している世帯や、第3子以降に該当する子がいる世帯は、所得制限の有無にかかわらず、支給額や支給対象そのものが変わっている可能性があります。「うちは所得制限とは関係ない」と思っていても、他の変更点によって新たに申請が必要になっているケースもあるため、自分の世帯に当てはまる変更点がないか、あわせて確認しておくことをおすすめします。

実務上、これらの改正内容はそれぞれ独立した条件で判定されるため、「所得制限は関係ないが、支給期間の延長で新たに対象になる」というケースも十分あり得ます。自分の世帯の子どもの年齢・人数を、今の制度に照らして一度確認し直すことをおすすめします。

複数の変更点が同時に行われた改正だからこそ、1つの条件だけで「うちは関係ない」と判断せず、それぞれの変更点を1つずつ確認していく姿勢が、もらい忘れを防ぐことにつながります。

10. まとめ

  • 児童手当の所得制限は、令和6年10月分から撤廃されています。
  • 撤廃前は、所得に応じて「通常額」「特例給付(月5000円)」「支給なし」の3段階に分かれていました。
  • 以前「所得上限超で支給なし」だった世帯は、制度改正後にあらためて申請しないと支給されません。
  • 以前「特例給付」を受けていた世帯は、あらためての申請は不要です。

「児童手当には所得制限がある」という理解は、令和6年9月分までの話です。現在は所得にかかわらず児童を養育していれば支給対象になるため、以前の情報のまま諦めている場合は、この機会に見直す価値があります。

自分の世帯が申請の対象になるかどうかは、お住まいの市区町村の児童手当担当窓口に確認することをおすすめします。

「所得制限」という言葉だけにとらわれず、支給期間や第3子以降の増額といった他の変更点もあわせて確認しておくことが、児童手当のもらい忘れを防ぐ確実な方法です。制度改正の内容は複雑に見えても、1つずつ整理すれば決して難しくありません。

11. よくある質問

11.1 Q. 児童手当の所得制限は今もありますか。

A. ありません。令和6年10月分から所得制限が撤廃され、所得にかかわらず児童を養育していれば支給対象になります。

11.2 Q. 撤廃前は所得によってどう扱いが変わっていましたか。

A. 所得制限限度額以下なら通常額、それを超えると特例給付(月額一律5000円)に減額され、さらに所得上限限度額を超えると支給がありませんでした。

11.3 Q. 以前、児童手当をもらっていなかった世帯は、今からでも支給されますか。

A. 所得上限限度額を超えて支給がなかった世帯は、お住まいの市区町村へあらためて申請することで支給対象になります。特例給付を受けていた世帯は、あらためての申請は不要です。

11.4 Q. 令和6年10月分にさかのぼって受け取れる期限はありましたか。

A. ありました。令和7年3月31日までに申請すれば、令和6年10月分からさかのぼって支給されました。この猶予期間はすでに終了しているため、今から気づいた場合は通常のルールに従うことになります。

11.5 Q. 所得制限が撤廃されたことを知らずに申請していない場合、今から申請できますか。

A. できます。ただし猶予期間後の申請は、原則として申請した月の翌月分からの支給となるため、早めにお住まいの市区町村へ申請することをおすすめします。

11.6 Q. 撤廃前の所得上限限度額は具体的にいくらでしたか。

A. 扶養親族の人数で異なり、静岡市の例では扶養親族0人で858万円、3人で972万円でした。この金額は「所得」ベースであり、額面の年収とは異なる点に注意が必要です。基準額の示し方は自治体によっても異なります。

11.7 Q. 所得制限撤廃で、新たにいくら受け取れるようになりますか。

A. 3歳以上高校生年代までの子が1人なら年12万円、第3子以降なら年36万円が目安です。子どもの人数や年齢によって金額は変わるため、自分の世帯で一度試算してみることをおすすめします。

11.8 Q. 令和6年10月の改正は、所得制限撤廃以外に何が変わりましたか。

A. 支給期間が高校生年代まで延長され、第3子以降の支給額が月額3万円に増額されました。支払月も年3回から偶数月ごとの年6回に変更されています。所得制限とは別の条件で判定されるため、あわせて確認しておくとよいでしょう。

参考資料

齊藤 慧