1. 1カ月で7%上げても、8月下旬の水準には戻っていない株価
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出所:各種資料をもとに筆者作成
値動きを押さえる。2026年8月6日の終値945円から、9月4日の終値1,013円へ。直近1カ月で7.2%の上昇である。
ただし道筋は平坦ではない。8月26日には1,232円まで乗せた。これが直近1カ月で最も高い水準だ。そこから9月4日までに17.8%下げている。9月4日も前日の1,059円から46円の下落だった。
上げ幅の大半を8月下旬に作り、その後に吐き出した形になる。ボラティリティが高い。
直近時点のPERは9.08倍、PBRは1.01倍である。PBRが1倍近辺ということは、株価がほぼ1株当たり純資産の水準に置かれているという意味だ。1Q末の純資産は183億円だった。
ここで押さえておきたいのが資本の薄さである。2026年3月期末の自己資本比率は13.8%。非鉄金属業種の自己資本比率の中央値は53.3%だから、水準がまるで違う。
製錬は原料在庫を長く抱える商売で、運転資金の重さから負債側が厚くなりやすい。それを差し引いても13.8%は薄い。前期末の有利子負債は624億円あり、現金及び現金同等物は111億円だった。
PERとPBRが同時に低い水準で並んでいる背景には、この財務の薄さが効いている可能性が高い。損益が戻っても、資本の余力が細ければ次の下振れを吸収できない。株価はそこを見ているのだろう。
2. 1Qは営業赤字、それでも四半期純利益は黒字に転じた
2027年3月期1Qの売上高は311億円で、前年同期比15.7%の増収となった。
損益は境目にある。営業損益は2億円の損失。前年同期は8億円の損失だったから赤字幅は縮んだが、まだ水面下だ。経常損益も5億円の損失で、前年同期の10億円の損失から改善している。
それでも親会社株主に帰属する四半期純利益は2億円の黒字となり、前年同期の11億円の純損失から黒字転換した。1株当たり四半期純利益は6.67円である。営業段階が赤字のまま最終利益が黒字になっているので、営業外や特別の項目が効いた形と読み取れる。
通期予想は売上高1,785億円(前期比42.2%増)、営業利益67億円(同0.3%減)、経常利益45億円(同20.7%減)、当期純利益34億円(同27.9%減)。1株当たり当期純利益の予想は116.07円で、配当は無配を見込む。
目を引くのは増収率42.2%という前提だ。前期の売上高1,255億円から530億円積み増す計画である。一方で1Qの進捗率は17.4%にとどまり、四半期の均等ペースである25%に届いていない。
営業利益についても、1Qが赤字である以上、通期67億円は下期に大きく寄せた組み立てになる。前期実績の営業利益と同水準を置きながら、四半期の出発点は損失。この落差が今期の計画の重さを物語っている。
3. 再生計画の初年度に営業利益67億円、増益を作ったのは相場か施策か
前期の決算を見ておこう。2026年3月期の売上高は1,255億円で、前期比7億円(1%)の減収。営業利益は67億円で同10億円(20%)の増益、経常利益は56億円で同19億円(54%)の増益、そして親会社株主に帰属する当期純利益は47億円となり、前期比62億円の増益となった。
減収でありながら各段階の利益がすべて増えている。何が起きたのか。
会社の説明によると、2024年12月18日に新たな事業再生計画を公表し、初年度である前期において不採算事業の撤退・再編を年度内で完遂し、経営・収益基盤の強化に取り組んだという。売上高は前期に撤退した事業の売上の剥落があったものの、金属価格の高騰や下期からの円安傾向による精錬事業の増収が寄与して、ほぼ前年並みで着地した。
利益の増減要因はもう少し細かい。減益要因として挙げられているのは、原料鉱石の買鉱条件の悪化と、鉛リサイクル原料の調達価格の高止まりだ。これを上回った増益要因が、金製品の販売数量の増加、金・銀・ビスマスなど希少金属の相場上昇による収益増、そして亜鉛製錬再編に伴う保有資産売却の施策効果である。
最終利益が62億円も増えた理由はさらに明快だ。前期は亜鉛製錬事業の撤退に伴い特別損失78億円を計上していたが、当期はその計上がなくなった。
ここは切り分けておきたい。営業段階の増益には相場と施策の両方が効いており、最終利益の急回復は「前期にあった損失がなくなった」という反動が主因である。同じ「増益」でも中身は違う。
収益性の水準を見ると、前期の営業利益率は5.3%。非鉄金属業種の営業利益率の中央値6.5%に対して、やや下だが極端に離れてはいない。売上総利益率は10.1%で、こちらは中央値15.8%を下回る。稼ぐ力そのものは業種の真ん中に近づきつつある、という程度の位置だ。
4. 筆者コメント
非鉄金属という業種のなかでの立ち位置に照らすと、この会社の難しさが見えてくる。営業利益率は5%台まで戻り、業種の中央値からそれほど離れていない。数字だけを見れば、稼ぐ力は平均圏に近い。
だが会社が挙げた増益要因を読むと、その利益の作られ方が気になる。金や銀、ビスマスの相場上昇、円安、そして資産売却。いずれも自社のコスト構造の改善そのものではない。
製錬という商売は、原料の買鉱条件と製品相場の差で稼ぐ。差の大きさは自社では決められない。だから利益が増えたとき、それが体質の改善なのか相場の追い風なのかを切り分けるのが難しい。ここがこの業種の読みにくさだと私は考えている。
切り分けの手がかりになるのは、相場が逆を向いた四半期の姿だろう。金属価格が下がる局面でも利益率の下げが限定的なら、それは体質が変わった証拠になる。逆に相場と一緒に沈むなら、まだ相場次第ということだ。
四半期の増減率に反応する前に、その期の金属相場と為替がどちらを向いていたかを一度確かめてみてほしい。数字の意味がかなり変わって見えるはずだ。