1. 1カ月で2割上げた株価が織り込んだのは、赤字の終わりか

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

値動きから確認しておこう。2026年8月6日の終値2,018円から、9月4日の終値2,476円へ。直近1カ月で22.7%の上昇である。

途中の8月28日には2,781円まで乗せた。これが直近1カ月で最も高い水準だ。そこからは水準を落とし、9月4日は前日の2,609円から133円下げて反落している。

直近時点のPERは23.54倍、PBRは3.11倍。ここで気をつけたいのは、前期が当期純損失だったという事実である。1株当たり当期純損失は255.03円だった。赤字の期の実績からは、この倍率は出てこない。

つまり市場は、今期の利益が出る前提で株価を付けている。1カ月の上昇は、業績が変わった結果ではなく、業績が変わるという見立てが強まった結果と読むほうが自然だろう。

その見立ての材料になり得るものが、1Qの決算数値にある。

2. 営業利益19億円と進捗率63.9%、1Qで通期の6割を稼いだ意味

2027年3月期1Qの完成工事高は481億円で、前年同期比2.5%の減収となった。売上の規模は横ばいに近い。

変わったのは利益である。営業利益は19億円。前年同期は6億円だった。経常利益は33億円(前年同期12億円)、親会社株主に帰属する四半期純利益は28億円(同5億円)。1株当たり四半期純利益は49.12円である。

売上が減っているのに利益が3倍前後に膨らんだ。プラント建設は工事の進行に応じて収益を認識するため、案件ごとの採算がそのまま利益に出る。ここで起きたのは規模の拡大ではなく採算の入れ替わりだ。

通期予想は完成工事高1,900億円(前期比3.9%増)、営業利益30億円、経常利益75億円、当期純利益60億円。1株当たり当期純利益の予想は102.39円で、年間配当は25円を見込む。前期は無配だった。

進捗率を計算すると、完成工事高が25.3%、営業利益が63.9%、経常利益が45.0%、当期純利益が48.0%になる。売上はほぼ均等ペースなのに、営業利益だけが6割を超えている。

会社計画が保守的に置かれている可能性は高い。もっとも、下期の工事採算に警戒を残した計画とも読める。前期の損失がどこから来たかを見ると、後者の色合いが濃くなる。

3. 190億円の営業損失はどこで生まれ、どこで止まったのか

2026年3月期の実績を並べる。完成工事高1,829億円(前期比34.2%減)、完成工事総利益64億円(同75.3%減)、営業損失190億円、経常損失113億円、親会社株主に帰属する当期純損失149億円。

まず売上の減り方から。会社の説明によると、タイ向け石油化学プラントやトルクメニスタン向け石油化学プラントなど複数のプロジェクトが進捗した一方、大型プロジェクトの期間進捗率が前年同期と比べて減少した結果、完成工事高が951億円減った。

利益の崩れ方は別の理由による。完成工事総利益の196億円の減少は、主にブラジル向けガス火力発電案件における収支悪化によるものだ。営業損失はこの総利益の減少に販管費の増加が重なって生まれた。

そのブラジル案件について、会社は経緯を具体的に書いている。契約対価の改訂および工期の見直し等について顧客と協議を継続したが最終的に合意に至らず、2025年7月に仲裁を申し立てた。顧客側は工期遅延に関わる予定損害賠償金の適用を主張し、既に履行した役務に対する対価の支払を2025年10月以降停止した。仲裁手続きの長期化や顧客の信用状況を総合的に勘案し、契約対価の回収可能性を保守的に評価するとともに、工事の完成までに要する費用を再精査のうえ工事損失を追加計上した、という流れだ。

期初計画との落差も開示されている。2025年5月15日公表の業績見込みは営業利益15億円、経常利益65億円、当期純利益50億円。それが営業損失190億円、経常損失113億円、当期純損失149億円で着地した。当期純利益の段階で199億円の下振れである。

一方で、損失を押しとどめた要素もある。営業損失190億円が経常損失113億円まで縮んだのは、持分法による投資利益83億円を計上したからだ。連結の外側に持つ持分が、本体の損失を一部吸収した形になる。

受注は落ちていない。同期の受注高は1,758億円で、期初見込みの1,700億円を上回った。売上と利益が壊れた期に、受注だけは計画線を守っている。ここが前期の決算を読むうえでの分かれ目になる。

4. 筆者コメント

印象的なのは、赤字の大きさよりもその出どころの狭さだ。190億円という営業損失は、売上規模1,829億円の会社にとって重い。だが会社の説明をたどると、その中心は1件のガス火力発電案件に寄っている。

プラント建設という商売は、受注した瞬間に採算が決まらない。数年かけて工事を進める間に、資材費も人件費も工期も動く。顧客との合意が崩れれば、履行済みの対価すら入らなくなる。前期の決算は、その構造がむき出しになった記録として読める。

裏を返せば、その1件を切り離した部分は動いていたということでもある。受注高は期初見込みを上回り、持分法投資利益も入った。1Qの利益の跳ね方は、この「それ以外」が表に出てきた姿だろう。

ただし仲裁は続いている。結果によって損失は戻ることもあれば、さらに動くこともある。決算数値の水準だけを見て局面が変わったと決めつけるのは早計だ。

この銘柄を見るなら、四半期の増益率よりも案件の進捗と係争の状況に着眼していきたい。利益は結果であって、原因はいつも工事現場の側にある。