1. 1カ月で2割下げた株価と、PER90倍が置いている前提

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

まず値動きを押さえておきたい。2026年8月6日の終値7,130円から、9月4日の終値5,730円へ。直近1カ月で19.6%の下落である。

8月7日には7,160円まで乗せた。これが直近1カ月で最も高い水準だ。そこから8月中旬にかけて水準を切り下げ、9月2日の5,320円が最も低い水準となった。

もっとも、9月4日は前日の5,430円から300円上げている。1カ月の下落基調のなかでの反発だ。

直近時点のPERは90.41倍、PBRは6.67倍。機械セクターの銘柄としては相当に高い水準にある。

なぜここまで高く出るのか。分母が小さいからだ。2026年3月期のEPSは16.99円、BPSは849.2円だった。1株当たりの利益が薄いままなら、株価が下がってもPERは高止まりする。

つまりこの株価水準は、利益が戻ることを前提に置いている。前提が揺らげば、株価は業績の悪化を待たずに動く。ボラティリティの高さは、この構造から来ていると考えられる。

2. 営業利益18億円は、価格改定と稼働率のどちらで作られたのか

2027年3月期1Qの売上高は166億円で、前年同期比23.6%の増収となった。営業利益は18億円。前年同期は1億円だったから、水準そのものが入れ替わっている。

経常利益は17億円、親会社株主に帰属する四半期純利益は12億円で、前年同期の純損失から黒字転換した。1株当たり四半期純利益は13.46円である。

利益はなぜここまで動いたのか。会社は2026年3月期の分析で、製品価格改定による採算性の改善に取り組み、全社横断のコスト革新プロジェクトで製造工法の見直しや業務効率の改善を進めたとしている。加えて日本セグメントの工場稼働率が上昇し、製造原価率が改善した。営業利益が想定を上回る水準で着地した、というのが会社の説明だ。

1Qの営業利益率を計算してみると11.0%になる。2027年3月期の通期予想から逆算した営業利益率は11.4%だから、出発点としては予想線の上に乗っている。

その通期予想は売上高745億円(前期比25.1%増)、営業利益85億円(同231.0%増)、当期純利益60億円(同272.9%増)。強気な計画である。

進捗率は売上高が22.4%、営業利益が21.6%。四半期の均等ペースである25%には届いていない。増収基調が下期に厚くなる前提で組まれた計画だと読み取れる。

3. 受注高616億円の内側で入れ替わった需要の担い手

減速機メーカーの先行指標は受注である。2026年3月期の連結受注高は616億円で前期比16.2%増、期末の受注残高は218億円で同13.6%増となった。

会社の説明によると、産業用ロボット向けは自動化投資と、電子部品・半導体関連分野を中心とする生産設備の増強投資が進んだことで受注高が増えた。生成AI関連を中心とした先端半導体分野への設備投資需要が年明け以降に拡大し、半導体製造装置向けの受注高も増加している。AI技術を活用したロボット向けでは、顧客の量産移行に伴う受注を獲得したという。

一方で車載用途は、顧客における生産調整の影響を受けて売上高が減少した。

製品群別に見ると、減速装置が463億円(前期比9.5%増)で売上の77.8%を占め、メカトロニクス製品は132億円(同0.9%減)だった。伸びているのは本業の減速機である。

ここで一つ、イメージと開示のズレを挙げておきたい。精密減速機と聞けば産業用ロボットの関節部品という絵が先に立つ。ところが有価証券報告書で開示された主要な販売先を見ると、2025年3月期に売上構成比10%を超えていたのは日産自動車1社で、販売高は57億円、総販売実績の10.3%を占めていた。

その記載は2026年3月期には外れている。構成比が10%を下回ったためだ。ロボットのイメージが強い会社の売上を、直前まで車載の1社が10%動かしていた。そして今、その存在感が薄れる形で、ロボットと半導体が担い手に戻ってきている。同じ会社の姿でありながら、見え方はかなり違う。

4. 筆者コメント

直近1カ月の株価と足元の利益を重ねてみると、動いている変数が一つに絞れてくる。株価は2割下げた。利益は増えている。ならば下がったのはバリュエーションの側だ。

高いPERは、将来の利益に対する期待の厚みを映す。その厚みが薄くなれば、利益が増えていても株価は下がる。1カ月の値動きは、業績の悪化ではなく期待の目減りとして読むほうが素直だろう。

もっとも、期待が薄くなった理由を株価から逆算するのは難しい。相場全体の地合い、需給、成長領域への思惑。どれも同時に効いている可能性がある。

私が着眼したいのは利益率の水準だ。1Qの営業利益率は11%台まで戻った。この水準が四半期をまたいで続くのかどうか。そこが期待の厚みを支える土台になる。

数字が積み上がるまでは、株価のほうが先に動く。高PER銘柄を見るときは、決算そのものより「決算が予想線のどこを通ったか」に目を向けることをおすすめしたい。