給付金や補助金のニュースを見るたび、「住民税非課税世帯」という条件が目に入ります。住民税を納めている世帯にとっては、自分には関係ない話に見えてしまうかもしれません。ただ、2026年に入ってからの制度改正を追いかけると、少し様子が変わってきています。
出産、育児、ひとり親世帯への支援、そして保険料の減免まで。住民税を納めていても申請できる制度を10種類、最新の金額と要件で整理しました。
なお、住民税非課税世帯となる収入の目安については、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
【住民税非課税世帯】給与・年金の収入基準《ボーダーラインはいくら?》知っておきたい5つの優遇制度!制度の基本とファクトを網羅した完全ガイド
1. 【2026年最新】所得制限が外れた2つの制度と、私立高校45万7200円の支援
制度の一覧に入る前に、この1〜2年で起きている変化を押さえておきます。ここを知っているかどうかで、一覧の読み方が変わります。そもそも、どこからが「課税世帯」なのか住民税がかからない収入の目安は、世帯の構成や地域によって違います。
今回は、神戸市の基準を見てみましょう。
住民税非課税世帯に該当する世帯

出所:神戸市「住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?」
単身世帯
- 給与収入のみで収入金額が110万円以下
- 年金収入のみで収入金額が155万円以下(65歳以上)
- 年金収入のみで収入金額が105万円以下(65歳未満)
同一生計配偶者か扶養家族が1名いる場合
合計所得金額が101万円以下になる方
- 給与収入のみで収入金額が166万円以下の方
- 年金収入のみで収入金額が211万円以下の方(65歳以上)
- 年金収入のみで収入金額が171万3334円以下の方(65歳未満)
給与収入がこの基準を超える場合でも、この記事で紹介する制度のなかには利用できるものがあります。だからこそ、非課税世帯を条件にした支援だけを見ていると、使える制度を見落とします。
1.1 児童手当に続き、高校授業料の所得制限も消えた
ここ2年で、2つの大きな制度から所得制限が外れました。ひとつは児童手当です。2024年10月の拡充で所得制限が撤廃され、対象も高校生年代まで広がりました。
もうひとつが高等学校等就学支援金です。文部科学省の資料によると、2026年度から対象者の範囲が広がり、所得の上限がなくなりました。支給上限額は私立高校(全日制等)で年45万7200円、公立高校(全日制等)で年11万8800円です。
以前は、年収約910万円が所得制限の目安とされていました。共働きで世帯年収がこの線を超えたために対象外だった家庭も、2026年度からは支援を受けられます。
1.2 2027年度から所得連動給付を先行導入、給付付き税額控除は2029年度から
流れはさらに続きます。2026年8月5日、政府は「給付付き税額控除」の制度導入に向けた基本方針を閣議決定しました。対象として想定されているのは、一定の税や社会保険料を負担している中低所得の現役勤労者となります。
2027年度には、給付付き税額控除の本格導入に先立ち、「所得に連動したきめ細かな給付」が先行導入される方針です。給付付き税額控除そのものは2029年度から導入される予定です。非課税世帯向けの支援は今後も続きますが、それとは別に、納めている世帯を対象にした仕組みが増えていく。この流れを頭に入れておくと、毎年の制度改正を追いかけやすくなります。
2. 子育て世帯向けの支援制度
ここからが本題です。まずは出産と育児に関わる5つを見ていきます。いずれも所得ではなく、加入している保険や子どもの年齢が条件になっています。
※詳細は各制度の公式Webサイトにてご確認ください。
2.1 出産育児一時金
公的医療保険に加入している人が出産したときに支給されます。金額は子ども1人につき原則50万円です。産科医療補償制度に加入していない医療機関などでの出産は48万8000円になります。
なお、所得による制限はありません。会社員でも自営業でも、扶養に入っている人でも受け取れます。妊娠4か月(85日)以上の出産であれば、死産や流産でも対象です。
2.2 出産手当金
出産のために会社を休み、その間に給与が支払われなかった場合の所得補償です。健康保険の被保険者本人が対象で、扶養に入っている人は対象外になります。1日あたりの額は、支給開始日以前12か月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2です。
対象になるのは、出産予定日の42日前から出産の翌日以後56日目までのうち、実際に休んだ期間になります。なお、出産育児一時金とは目的が違う別の制度です。要件を満たせば両方を受け取れます。
2.3 育児休業等給付
育児休業中の所得を支える給付で、雇用保険から支払われます。休業開始から180日目までは休業開始時賃金日額の67%、それ以降は50%です。2025年4月から、ここに2つの給付が加わりました。ひとつが「出生後休業支援給付金」です。両親がともに14日以上の育児休業を取得した場合、最大28日間、13%が上乗せされます。
67%と合わせて80%となり、社会保険料の免除などを踏まえると手取りで10割に近い水準になります。配偶者が就業していない場合やひとり親の場合は、本人の取得だけで対象になります。
もうひとつが「育児時短就業給付金」です。2歳に満たない子を養育するために時短勤務をし、賃金が下がった場合に、支払われた賃金の10%が支給されます。
2.4 児童手当
支給対象は0歳から18歳に達する日以後の最初の3月31日までの子です。月額は3歳未満が1万5000円、3歳以上高校生年代までが1万円、第3子以降は月3万円です。なお、第3子の数え方には一定の要件があります。
支給は偶数月の年6回で、前月までの2か月分がまとめて振り込まれます。先ほど触れたとおり所得制限は撤廃されているため、以前に所得超過で対象外だった世帯も、いまは受け取れます。
2.5 高等学校等就学支援金
授業料に充てるための支援で、返済は不要です。2026年度から所得の上限がなくなりました。
支給上限額は次のとおりです。
- 公立高校(全日制等):年11万8800円
- 国立高校(全日制等):年11万5200円
- 私立高校(全日制等):年45万7200円
- 私立高校(通信制):年33万7200円
申請はe-Shienというシステムからオンラインで行えます。学校から配布されるログインID通知書が必要です。所得を問わず対象になったとはいえ、申請しなければ支給されない点は変わりません。
3. ひとり親世帯向けの支援制度
続いてひとり親世帯です。この分野は所得に応じて額が変わる制度が多く、課税世帯でも減額された額を受け取れる設計になっています。
3.1 児童扶養手当
こども家庭庁の資料によると、2026年4月からの手当額は全部支給で月額4万8050円です。一部支給は4万8040円から1万1340円まで、所得に応じて決まります(いずれも見込額)。
2人目以降は1人につき全部支給で1万1350円が加算されます。所得制限限度額は、収入ベース・2人世帯で全部支給が190万円、一部支給が385万円です。全部支給の線を超えても、385万円までは一部支給の対象になります。
支給は1月、3月、5月、7月、9月、11月の年6回です。
3.2 ひとり親家庭等医療費助成制度
ひとり親家庭の親と子の医療費を、自治体が助成する制度です。健康保険の自己負担分の一部または全部が対象になります。実施主体は市区町村で、助成の範囲、所得制限の基準、自己負担の有無は地域によって異なります。同じ収入でも住む場所で扱いが変わるため、お住まいの自治体の窓口で確認するのが確実です。
3.3 高等職業訓練促進給付金
ひとり親が看護師や保育士などの資格を取るために修業する期間、生活費を支援する制度です。この制度は、住民税課税世帯でも対象になる点が特徴です。ただし、児童扶養手当の支給を受けているか、同等の所得水準にあることなどが要件です。子ども1人の場合、収入の目安は年385万円未満とされています。
訓練期間中の支給額は、住民税非課税世帯が月10万円、住民税課税世帯が月7万500円です。修業期間の最後の1年間は、それぞれ4万円が増額されます。訓練を修了した際には修了支援給付金があり、非課税世帯は5万円、課税世帯は2万5000円が支給されます。
課税世帯だから対象外、という思い込みでもっとも損をしやすいのがこの制度だと筆者は感じています。
4. 社会保険料の減免制度
最後は、お金を受け取るのではなく、納める額そのものを減らす仕組みです。
4.1 国民健康保険料の軽減
世帯の所得が法令の基準を下回る場合、保険料のうち均等割と平等割が7割、5割、2割のいずれかで軽減されます。判定は前年の所得で行われます。課税世帯に関わるのが、非自発的失業者への軽減です。倒産や解雇などで離職した特定受給資格者・特定理由離職者は、離職日の翌日の属する月から、その月が属する年度の翌年度末まで保険料が軽減されます。
保険料は前年の所得をもとに決まるため、収入が途絶えた直後こそ負担が重くなります。この仕組みは、そのずれを埋めるためのものです。
4.2 国民年金保険料の免除・納付猶予制度
日本年金機構によると、2026年度の国民年金保険料は月額1万7920円です。所得が一定以下の場合、全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除、納付猶予のいずれかを利用できます。
大切なのは、免除を受けた期間も受給資格期間に算入されることです。納付猶予の期間は受給資格期間には入りますが、年金額には反映されません。いずれにしても、未納のまま放置するのとは将来の扱いがまったく違います。
5. 元証券会社勤務のFPからのアドバイス|見落としを防ぐ3つの視点
10制度を並べてきましたが、実際に受け取れるかどうかを分けるのは知識量ではありません。確認する習慣があるかどうかです。
5.1 「課税世帯=対象外」と考えない
支援制度の所得要件は一律ではありません。
児童手当のように所得を問わない制度もあれば、児童扶養手当のように所得に応じて支給額が変わる制度、高等職業訓練促進給付金のように所得要件を設けながら住民税課税世帯にも給付する制度があります。
「住民税を払っているから対象外」と判断せず、それぞれの制度の所得要件を確認することが重要です。
5.2 制度が変わった年こそ、もう一度確認する
以前に申請して断られた経験があると、その記憶のまま何年も過ごしてしまいがちです。ところが所得制限は、この2年で2つの制度から外れました。
判定は毎年やり直されます。制度の側が変わることもあれば、収入や家族構成が変わることもあります。年に一度、たとえば年度が替わる4月か、住民税の通知が届く6月ごろに見直す習慣をつけておくと、取りこぼしが減ります。
5.3 申請の窓口を家族で共有しておく
制度ごとに窓口が違うことも、見落としの原因になります。出産と育児の給付は勤務先か健康保険、雇用保険の給付はハローワーク、児童手当と児童扶養手当は市区町村、就学支援金は学校です。
家庭内で「この件はここに聞く」という対応先だけでも共有しておくと、いざというときに動きが早くなります。特に出産や離職のように急に状況が変わる場面では、調べる時間そのものが取れません。
6. まとめ
住民税を納めているからといって、支援の対象外ということはありません。今回取り上げた10制度のうち、出産育児一時金、児童手当、高等学校等就学支援金の3つは所得を問いません。
児童扶養手当や高等職業訓練促進給付金は、一定の所得基準を満たせば課税世帯でも受給できます。
そして2026年度から、高校授業料の支援は所得の上限がなくなりました。私立高校で年45万7200円が上限です。2024年10月の児童手当に続く撤廃で、支援の設計そのものが動いています。
2027年からは、働いて納めている層を対象にした給付も始まる見込みです。「非課税世帯だけが対象」という前提は、少しずつ崩れてきています。
参考資料
- 神戸市「住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?」
- 厚生労働省「出産育児一時金等について」
- 全国健康保険協会「出産手当金」
- 厚生労働省「育児休業等給付について」
- 厚生労働省「出生後休業支援給付制度が始まっています」
- こども家庭庁「児童手当制度のご案内」
- 文部科学省「高等学校等就学支援金【新制度】
- 文部科学省「高等学校等就学支援金制度」
- こども家庭庁「児童扶養手当について」
- こども家庭庁「高等職業訓練促進給付金のご案内」
- 東京都福祉局「ひとり親家庭等医療費助成制度(マル親)」
- 厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
- 内閣官房「『給付付き税額控除』の制度導入の基本方針」
加藤 聖人
