「家族だけで静かに見送った家族葬だから、公的なお金は出ないはず」——75歳以上の親を見送った後、そう思い込んでいるご遺族がいらっしゃるかもしれません。
しかし、亡くなった方が後期高齢者医療制度に加入していた場合、葬儀の形式にかかわらず、住民票のあった自治体ごとに3万円〜7万円の「葬祭費」が支給されます。
この請求には「葬儀を行った日の翌日から2年」という期限があるにもかかわらず、山積みの手続きに追われて申請を忘れてしまう遺族が後を絶ちません。
本記事では、支給額の地域差や請求できる人の条件、申請に必要な書類と期限をまとめます。
1. そもそも「葬祭費」とは?家族葬・直葬でも支給対象になる公的給付
亡くなった方が加入していた公的医療保険によって、遺族に支給される制度の名称が変わります。
75歳以上(または一定の障害が認定された65〜74歳)の方が加入する「後期高齢者医療制度」と、74歳以下が加入する「国民健康保険」では「葬祭費」という名称で、会社員などが加入する「健康保険」では「埋葬料」という名称で、それぞれ葬祭を行った遺族に給付が行われます。
いずれの制度も、お通夜や告別式の有無、家族葬か一般葬かといった葬儀の規模にかかわらず、支給の対象になります。ただし、儀式を一切行わない「直葬(火葬のみ)」の場合に限り、ごく一部の自治体で対象外と判断されるケースがあるため、直葬を選ぶ際は事前に自治体窓口へ確認しておくと安心です。
2. 葬祭費はいくら?自治体によって差がある
葬祭費の支給額は、亡くなった方が住民票を置いていた自治体(市区町村、または都道府県ごとの後期高齢者医療広域連合)が条例で定めており、全国的には3万円〜7万円の幅があります。
たとえば新潟県後期高齢者医療広域連合は県内一律で5万円です。一方、東京都の場合は、都の広域連合による基本給付5万円に加え、区市町村が独自に上乗せを行っているケースがあり、中野区は加算なしで5万円、北区・目黒区は2万円の加算があり合計7万円が支給されます。
たとえば東京都北区に住民票があった方が亡くなり、ご遺族が喪主として葬儀を行った場合、基本給付の5万円と区独自加算の2万円を合わせた合計7万円が支給されます。同じ東京23区内でも、住民票のあった区によって受け取れる金額が異なる点には注意が必要です。
なお、会社員などが加入する健康保険の「埋葬料」は、加入する健康保険組合や協会けんぽを問わず、法律で一律5万円と定められており、地域による差はありません。
- 新潟県後期高齢者医療広域連合:5万円
- 東京都中野区:5万円(区独自加算なし)
- 東京都北区:7万円(基本5万円+区加算2万円)
- 東京都目黒区:7万円(基本5万円+区加算2万円)
- 健康保険の埋葬料(全国一律):5万円
2.1 葬祭費を請求できるのはどんな人?
葬祭費は、亡くなった方の家族であれば誰でも受け取れるわけではありません。
請求権があるのは、配偶者や子といった法定相続人の順位ではなく、実際に葬儀を執り行い、その費用を負担した方(喪主・施主)です。申請の際は、葬儀費用の領収書や会葬礼状など、喪主の氏名が確認できる書類の提示を求められます。
お通夜や告別式を行わない直葬の場合は、会葬礼状の代わりに火葬料の領収書や火葬許可証の写しなど、火葬の事実と費用負担者がわかる書類で代用できる自治体がほとんどです。
3. 筆者コメント①
一度きりのお見送り、金額だけではない「家族のポリシー」を
近年増えている家族葬ですが、実は一口に家族葬と言ってもさまざまな形があります。
私自身、両親を見送った経験がありますが、我が家の場合は「お通夜なし、告別式のみ(一日葬)」というスタイルを選びました。告別式の前日に、ごく近い親族だけで集まって湯灌(ゆかん)・納棺の儀式を丁寧に行い、翌日に告別式と火葬を行うという流れです。
最初は「お通夜をしないのは世間体としてどうなのだろう…」と一瞬戸惑いや不安もありましたが、実際に執り行ってみると、非常に穏やかで、大切な家族との最後の時間を濃密に過ごせる素晴らしいお見送りになりました。
現代は葬儀社からも多様なスタイルの提案があります。お葬式の規模を小さくし、費用を抑える動きは今の時代にとても理にかなっています。しかし、たった一度きりの大切な見送りの時間です。「いくら安くなるか」という金額の目線だけでなく、「どんな風に故人を偲び、悔いなく見送りたいか」という我が家なりの「ポリシー」について、ぜひ元気なうちにご家族で話し合っておくことを強くお勧めします。
