8. 60歳代に多い「外貨建ての資産が多く、円安や円高で自分の資産がどう変わるのか分からない」というご相談。ファイナンシャルアドバイザー・山﨑 夏子が伝えたいこと
退職後の生活費をどうまかなうかを考え始めると、これまで積み上げてきた資産の中身をあらためて見直す方が増えます。
なかでも、海外の資産を含む形で運用してきた場合、為替のニュースを目にするたびに自分の資産にとって良い動きなのか悪い動きなのか判断がつかない、というご相談をよくいただきます。
8.1 60歳代に多いお悩み相談は「外貨建ての資産が多く、円建てとのバランスをどう調整すればよいか決めきれない」

円安、円高というニュースを見るたびに、自分の資産にとって良いことなのか悪いことなのかも分からないまま、手をつけずにいます。
相談の場では、外貨建ての資産を持っていること自体に迷いがあるというより、為替が自分の資産にどう効いてくるのかが整理できていないために動けない、という形でお話が出てくることが少なくありません。
8.2 【ファイナンシャルアドバイザー・山﨑 夏子が回答】為替の行方ではなく、自分で決められる部分から整理する
円建てで表示されている資産のどこに為替が入り込んでいるかを把握し、円建てと外貨建ての比率や円に換える時期を自分の側で決めておくことが大切です。今度どのように動くか分からない相場の行方に振り回されないように整理しておくことで、少しでも不安を和らげることができるのではないでしょうか。
8.3 ポイント1:買うときと使うときで、為替の効き方は逆になる
円安が進んだ局面では、すでに持っている外貨建ての資産を円に換算した金額は大きく見えやすくなります。一方で、これから外貨建ての資産を買い増そうとする場面では、同じ円の金額で買える量は少なくなります。円高のときはこれが逆になります。
つまり為替の動きは、これから積み増していく立場なのか、近いうちに円に換えて使う立場なのかによって、受け止め方が変わるものだと考えられます。60歳代で退職後の生活費を意識し始めている場合は、買う側よりも使う側の見方が中心になっていきますので、同じニュースでも意味合いが変わってくる、という整理をしておくとよいかもしれません。
8.4 ポイント2:円建てで表示されていても、値動きに為替が入り込んでいることがある
新NISAの口座で保有している投資信託のように、ふだんは円建ての金額で残高が表示される資産であっても、投資先が海外の資産であれば、その値動きのなかには為替の分が含まれています。
「外貨建ての資産」と聞くと外貨のまま預けているものだけを思い浮かべやすいのですが、円で買って円で表示されているものにも為替が効いている場合があります。そのため、まずは手元の資産のうち為替の影響を受ける部分がどこにどれくらいあるのかを書き出して確かめるところから始めると、全体像がつかみやすくなります。
なお、こうした資産は投資先そのものの値動きと為替の動きの両方を受けるため、価格が下がって元本を割り込む可能性がある点は前提として押さえておきたいところです。制度の金額や条件は改正されることがありますので、最新の内容は公的機関の情報や関連する窓口でご確認ください。
8.5 ポイント3:どちらに動いても困りにくいように、比率と時期を自分で決めておく
為替がこの先どちらに動くかは、誰にも見通せないものとして扱うのが現実的です。そのうえで自分の側で決められることとして、円建てと外貨建てをどのくらいの比率で持つかをあらかじめ決めておく、近い時期に使う予定の生活費は為替の影響を受けにくい形で分けて置いておく、円に換える必要が出てきたときも一度にまとめず時期を分ける、といった考え方があります。
いずれも為替を当てにいく方法ではなく、どちらに動いても家計の予定が大きく崩れにくい形をつくるための整理です。どの比率が合うかは、退職後の収入や生活費の見通し、いつごろ使う予定の資金なのかによって変わりますので、一律の正解として決められるものではありません。
為替の動きそのものを言い当てようとすると、判断はどうしても後手に回りやすくなります。自分で決められる範囲から先に整理しておくことが、迷いを小さくする助けになるのではないでしょうか。
9. まとめにかえて
外貨建ての資産を持っていると、為替のニュースが出るたびに落ち着かなくなるという声は、相談の場でよく聞かれます。ただ、為替は買うときと使うときで効き方が逆になるものであり、「円安だから得」「円高だから損」と一方向に言い切れるものではありません。
見通せないものを当てにいくのではなく、円建てと外貨建ての比率、そして円に換える時期という自分で決められる部分を先に整理しておくことが、どちらに動いても困りにくい形につながっていきます。
運用する資産には価格変動があり、元本を割り込む可能性もあります。どのくらいの比率が合うかは、退職後の収入や生活費の見通し、資金を使う時期によって一人ひとり異なりますので、判断に迷う場合は個別の状況を踏まえて専門家にご相談ください。
