厚生年金モデル夫婦「ふたりで老人ホームに入居したら」費用はどうなるのか。リアルな入居費用と突き合わせてみた 入居一時金「0円」の施設は半数以下、介護サービスの自己負担まで。資金ショートを防ぐために今のうちに確認したいこと

執筆者熊谷 良子
厚生年金モデル夫婦「ふたりで老人ホームに入居したら」費用はどうなるのか。リアルな入居費用と突き合わせてみた
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目次
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1. そもそも夫婦の年金はいくらもらえるのか。令和8年度モデル年金の内訳
2. 有料老人ホームに二人そろって入居したら、月額はいくらになる?
2.1 介護付きと住宅型、費用の性格はどう違う?
3. 筆者からのコメント
4. 有料老人ホームに入居する前に知っておきたい注意点が3つある
5. 公的な軽減制度で、有料老人ホームの家賃・食費はカバーできるのか
6. まとめにかえて|有料老人ホームは年金だけでは足りず、月十数万円規模の貯蓄取り崩しが前提になる
7. 【筆者コメント】
参考資料

夫婦のどちらかが要介護になり、もう一方もひとりでの介護に体力の限界を感じはじめると、「そろって施設に入ろうか」という言葉が夫婦のあいだで交わされることがあります。

厚生労働省が示す令和8年度のモデル年金額は、夫婦2人分で月23万7279円です。

しかし、有料老人ホームに夫婦そろって入居すると、月額費用だけで40万円前後かかることも珍しくなく、年金だけでは半分程度しか賄えない計算になります。

本記事では、最新の年金額・家計調査のデータと有料老人ホームの費用相場を突き合わせ、実際にいくら不足し、どう備えればよいのかを試算します。

1. そもそも夫婦の年金はいくらもらえるのか。令和8年度モデル年金の内訳

厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」によると、夫が平均的な収入で40年間就業し、妻が専業主婦だったという「標準的な世帯」のモデル年金額は、令和8年度で夫婦2人分月23万7279円です。

前年度の23万2784円から4495円の増額となりました。

ただし、この23万7279円という数字はあくまで厚労省が示す標準モデル世帯の金額であり、もちろん「夫婦ならみんなこの金額」という意味ではありません。

厚生労働省「令和6年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢厚生年金の平均月額は男性16万9967円・女性11万1413円(令和6年度末時点)です。

共働きで夫婦とも厚生年金を受け取っている世帯を考える際の目安として、男女それぞれの平均月額(16万9967円+11万1413円)を単純に足し合わせると28万円台になりますが、これはあくまで機械的な合算値であり、厚労省が「共働き夫婦のモデル年金額」として公表している数字ではありません。反対に、どちらも国民年金のみという世帯であれば、老齢基礎年金の平均月額は5万9521円ですから、夫婦2人でも12万円程度にとどまる場合があります。

年金パターン別の内訳(夫婦2人分・月額)

世帯パターン別・夫婦2人分の年金額比較1/3

モデル年金23万7279円、厚生年金夫婦合算28万円台、国民年金のみ12万円程度を比較した図

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」「令和6年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 厚労省モデル年金(夫が平均収入で40年就業、妻が専業主婦):23万7279円
  • 夫婦とも厚生年金受給の場合(単純合算):28万円台
  • 夫婦とも国民年金のみの場合(単純合算):12万円程度

では、実際の高齢夫婦世帯の家計はどうなっているのでしょうか。

総務省「家計調査(家計収支編)」2025年(令和7年)平均によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の実収入は月25万4395円、消費支出は月26万3979円で、可処分所得(22万1544円)に対して月4万2434円の不足(赤字)が生じています。

つまり、在宅で暮らしているだけでも年金収入だけでは足りず、貯蓄の取り崩しが前提になっている世帯が多いのが実情です。

ただし、この消費支出には施設入居費用や介護サービスの自己負担は含まれていない一方で、住居費・食費・光熱費といった在宅生活費の大部分は、施設に入居すれば施設の月額費用に置き換わります。

したがって「今の赤字4万2434円に施設費用をそのまま足し合わせる」という考え方は正しくないでしょう。判断材料にすべきは、施設の月額費用そのものが年金額でどこまでまかなえるかという点です。

なお、総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)」2025年(令和7年)平均結果によると、世帯主が65歳以上の世帯の貯蓄現在高は平均2564万円・中央値1777万円(65歳以上の無職世帯全体では平均2494万円)となっており、施設費用の不足分はこうした貯蓄からの取り崩しで賄うのが基本的な構図になります。

2. 有料老人ホームに二人そろって入居したら、月額はいくらになる?

年金額と家計の実情がわかったら、次は実際にどれくらいの費用がかかるのかを見てみましょう。

老人ホームにはいくつも種類がありますが、ここでは夫婦そろって確実に入居することを考えたときに現実的な選択肢になりやすい、有料老人ホームに絞って試算します(特養・サ高住をあえて外した理由は、後段の注意点で触れます)。

有料老人ホームには、介護サービスが月額費用に定額で含まれる「介護付き」と、家賃・管理費・食費が基本で介護が必要になれば外部の訪問介護などを別途契約する「住宅型」があります。

みんなの介護研究所「価格レポート」(2026年8月)によると、介護付き有料老人ホームの月額費用は全国加重平均で19.6万円。さらに同研究所「入居一時金0円施設の種別比較調査」(2026年8月)によると、月額費用の中央値は20.7万円です。夫婦2人分に単純換算すると月39万〜41万円程度になります(1人部屋を2部屋契約した場合の単純合算です。夫婦で2人部屋(相部屋)を利用できる施設であれば、家賃・管理費が1部屋分で済むため、一般的には1人入居の1.5〜1.8倍程度に抑えられるケースもあります)。

本来は一方が自立しているケースも多いですが、以下では試算をシンプルにするため、夫婦とも介護認定を受け、同条件の介護付き有料老人ホームに入居した場合として計算します(一方が自立している場合は、自立者向けの費用体系が別途適用されるなどして内訳や合計額が変わります)。中央値の介護付き有料老人ホーム(月額20.7万円)に夫婦2人そろって入居する場合、費用は20.7万円×2人分で41万4000円です。厚労省のモデル年金額23万7279円と比べると、17万6721円が不足する計算になり、この分は貯蓄からの取り崩しが前提になります。在宅暮らしの赤字(月4万2434円)と比べると、施設入居後の不足額はおよそ4倍にふくらむ計算です。

なお、ここで用いている年金額(23万7279円)は税金や社会保険料が差し引かれる前の額面です。実際には介護保険料や(75歳以上の場合)後期高齢者医療保険料などが年金から天引きされるため、手取り額はこれよりも少なくなります。たとえば75歳以上の場合、介護保険料と後期高齢者医療保険料だけで月1万4000円程度(全国平均ベース)が天引きされるとされており、住民税等を含めればその額はさらに大きくなります。額面ではなく手取りベースで比較すると、実際の不足額はここで示した17万6721円よりもやや大きくなる可能性がある点には注意してください。

また、介護付き有料老人ホームの月額費用には基本的な介護サービスの自己負担分が定額で含まれていますが、要介護度が高く、施設の標準的な人員配置基準を超えるケアが必要になった場合は、追加の介護費用が別途発生することがあります。加えて、ここでの不足額は施設の月額費用(家賃・食費・管理費等)と年金額を比較したものであり、医療費や日用品費、個人のお小遣いなど、入居後も別途かかる費用は含んでいません。実際の不足額はこれらの分だけさらに膨らむ可能性がある点には注意が必要です。

【グラフ】世帯パターン別・夫婦2人分の年金額比較2/3

介護付き有料老人ホームの月額費用(全国加重平均19.6万円・中央値20.7万円)と、夫婦2人分に換算した月39万〜41万円を示した図

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」「令和6年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 介護付き有料老人ホーム 月額費用:全国加重平均19.6万円、中央値20.7万円(1人あたり)
  • 夫婦2人分に換算:月39万〜41万円程度
  • 厚労省モデル年金額(23万7279円)との差:中央値ベースで17万6721円の不足

2.1 介護付きと住宅型、費用の性格はどう違う?

住宅型有料老人ホームは基本費用こそ介護付きより抑えられる傾向にありますが、要介護度が上がるほど外部サービスの自己負担が積み上がり、総額では介護付きに近づく、あるいは上回ることもあります。

「基本料金だけ見れば住宅型の方が安い」と単純に判断せず、実際に必要になりそうな介護サービスの自己負担分まで含めて比較することが欠かせません。

ここで、月額費用の中身がどのような内訳になっているのかも確認しておきましょう。同研究所「月額費用内訳調査」(2026年8月)は、介護付き・住宅型を合算した母集団で月額費用の内訳を集計しており、平均17.2万円(先述の介護付き単体の中央値20.7万円とは異なる母集団の数値です)の内訳は次の通りです。ここに介護サービスの自己負担分が別区分で加算されます。

  • 家賃:36.6%(約6.3万円)
  • 食費:27.0%(約4.6万円)
  • 管理費:26.6%(約4.6万円)
  • 水道光熱費・その他:4.9%(約0.8万円)
  • 介護費(任意):1.9%(約0.3万円)

3. 筆者からのコメント

熊谷良子

有料老人ホームの月額費用を比べるとき、多くの方が「介護付きより住宅型の方が安い」と単純に判断しがちですが、これは誤解を招きやすいポイントです。

住宅型は基本料金こそ抑えられていても、要介護度が上がれば外部の訪問介護サービスなどを別途契約する必要があり、自己負担が積み上がります。たとえば要介護3程度になり訪問介護やデイサービスを頻繁に利用するようになると、月々の自己負担が数万円単位で積み上がることも珍しくありません。

結果として、当初は割安に見えた住宅型の総額が、介護サービス費を定額で含む介護付きの総額に近づく、あるいは上回ることもあります。基本料金の数字だけで施設を選んでしまうと、入居後に「思ったより費用がかさむ」という事態になりかねません。想定される介護サービスの自己負担分まで含めた総額で比較することをおすすめします。

4. 有料老人ホームに入居する前に知っておきたい注意点が3つある
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著者
二種外務員資格(証券外務員二種)記者/編集者/校閲者/

【保有資格】
ニ種外務員資格(証券外務員二種)相続診断士認知症介助士・終活ガイド資格1級保有。

【経歴】

二種外務員資格や相続診断士などの資格を保有し、「お金とくらし」にまつわる情報を専門的かつ丁寧に発信する金融メディア編集者・ライター。

早稲田大学第一文学部史学科卒。人文・社会系一般書籍、中学・高校社会科教材、就職試験問題の制作関連業務で15年以上の経験を持つ。また、大手人材派遣会社における採用管理業務などの実務経験もある。

現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『くらしとお金の経済メディア~LIMO(リーモ)~』において、金融系メディアの編集者兼執筆者として、コンテンツ制作や編集を担当。

総務省「家計調査」厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査」などの一次資料に基づくデータ記事の執筆に強み。

専門家と実務家が発信する金融経済ニュースサイト『LIMO&ファイナンス』でも記事執筆をおこなう。紙媒体での経験に加え、家族の介護を通じて得た知見を生かしながら、「お金とくらし」にまつわる情報を丁寧に発信している。(2026年7月9日更新)