9月は敬老の日を迎える月にあたり、離れて暮らす親の家計や、自分がこれから向かっていく年代の暮らしぶりに目が向きやすい時期です。J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査」の2025年の結果では、70歳代で二人以上の世帯が持つ貯蓄額が12の区分に分けて公表されており、その平均は2416万円、真ん中にあたる中央値は1178万円です。
60歳代から70歳代へと年齢を重ねると、貯蓄は増やすための蓄えから、暮らしを支えるために取り崩す蓄えへと役割が移っていきます。そのとき、平均や中央値といった一点の数字と自分の額を見比べても、上か下かが分かるだけで、全体のどのあたりにいるのかまでは見えてきません。この記事では、まず70歳代・二人以上世帯の貯蓄額が12の区分にどう分かれているかを確かめ、続いて厚生年金・国民年金それぞれの平均年金月額を並べ、最後に65歳以上で夫婦のみの無職世帯がひと月に受け取る額と使う額を見ていきます。そのうえで、貯蓄額の分布を少ないほうの区分から1つずつ足し上げていくと、累積がどの区分で50%を超えるのかを独自に試算します。
なお、全世代で比較した貯蓄額の平均・中央値に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. 【70歳代・二人以上世帯】少ないほうから並べた貯蓄額|平均2416万円・中央値1178万円と12の区分
世代ごとの貯蓄額が平均と中央値でどう示されているかについては、【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」でも取り上げられています。この記事では、そのうち70歳代・二人以上世帯の数字だけを取り出し、少ないほうの区分から順に並べていきます。
並べる材料は、J-FLEC(金融経済教育推進機構)が公表している「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」です。そのうち「70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額」という項目を使います。金融資産を持っていない世帯も分母に入れて集計されたものです。
※金融資産保有額として集計されているのは預貯金だけではなく、株式や投資信託、生命保険なども含まれます。反対に、日常的な出し入れや引落しに備えている普通預金の残高は含まれていません。
1.1 2416万円という平均と、1178万円という中央値の役割の違い
この年代の平均貯蓄額として示されているのは2416万円です。平均は全体を合計して世帯数で割った数字ですから、大きな金額を持つ世帯が交じると、そのぶん上へ引き上げられます。2416万円という水準にも資産の厚い一部の世帯の影響が入り込んでいると考えられ、多くの世帯が手元で感じている額とは距離があるかもしれません。
もうひとつの中央値は1178万円です。こちらは、貯蓄額の少ない世帯から多い世帯へと一列に並べ、その行列のちょうど中ほどに立つ世帯の額を取り出したものです。金額そのものではなく並び順で決まるため、飛び抜けた額があっても引きずられにくく、実際の暮らしぶりに近い目安として使われることの多い数字です。
同じ調査の同じ年代から出てきた数字でありながら、2つのあいだには2倍以上の開きがあります。ただ、どちらも一点の数字であることに変わりはありません。自分の額をそこに当てて上か下かを見ても、分かるのは2つに分かれたどちらの側かということだけです。
1.2 金融資産非保有10.9%から3000万円以上25.2%まで、12の区分に並ぶ割合
この調査では、世帯ごとの貯蓄額が次のように区分され、それぞれの割合が示されています。
- 金融資産非保有:10.9%
- 100万円未満:4.5%
- 100~200万円未満:5.1%
- 200~300万円未満:3.7%
- 300~400万円未満:3.9%
- 400~500万円未満:2.9%
- 500~700万円未満:6.4%
- 700~1000万円未満:6.7%
- 1000~1500万円未満:11.1%
- 1500~2000万円未満:6.7%
- 2000~3000万円未満:12.3%
- 3000万円以上:25.2%
- 無回答:0.6%
並びの先頭にあたる金融資産非保有、つまり貯蓄が0円と回答した世帯は10.9%です。いちばん末尾の3000万円以上は25.2%で、12区分のなかでは最も大きな割合を占めています。
そのあいだの区分は、金額の少ないほうから順に、4.5%(100万円未満)、5.1%(100万〜200万円未満)、3.7%(200万〜300万円未満)、3.9%(300万〜400万円未満)、2.9%(400万〜500万円未満)と、いずれも数%台にとどまります。そこから6.4%(500万〜700万円未満)、6.7%(700万〜1000万円未満)と少し厚みが出て、11.1%(1000万〜1500万円未満)、6.7%(1500万〜2000万円未満)、12.3%(2000万〜3000万円未満)と続きます。
1.3 区分の位置を分けているのは、退職金・収入の履歴・相続・健康状態
ひとつひとつの区分の割合を見ていくと、どこかに世帯が集中しているというより、細かく分かれて散らばっている様子が読み取れます。そして、どの区分に入るかを決めているのは、その世帯の心がけの度合いではありません。
退職金を受け取れたかどうか、現役時代の収入がどう推移したか、相続があったかどうか、そして健康状態がどうであったか。こうした事情が重なった結果として、いまの区分の位置があります。公的年金として受け取る額も、現役のあいだにどの制度へどれだけ加入していたかによって、一人ひとり変わってきます。貯蓄の少ない区分にいることを、準備が足りなかったこととして受け取る必要はありません。
2. 【厚生年金】平均年金月額15万289円|男女の開きと、月額階級ごとの受給権者数
暮らしを支える収入の中心は公的年金です。ここからは厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」に移り、厚生年金と国民年金がひと月あたりいくらとして集計されているのかを並べます。
厚生年金には第1号から第4号までの被保険者区分があります。この記事が扱うのは、そのうち民間企業などにお勤めだった方が対象となる「厚生年金保険(第1号)」の金額です。以下では「厚生年金」と書きます。
※記事内で紹介する厚生年金保険(第1号)の年金月額には、国民年金の月額部分も含まれています。
2.1 厚生年金の平均年金月額を、全体と男女で並べる
- 〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
全体をならした平均は15万289円です。これを男女に分けると、男性が16万9967円、女性が11万1413円となり、5万円台の開きが残ります。厚生年金の額は、現役のあいだに受け取っていた給与の水準と、加入していた期間の長さの2つで決まっていきます。働き方の違いが、そのまま受け取る額の違いとして残る仕組みです。
2.2 1万円刻みの階級に並ぶ厚生年金の受給権者数
受け取っている月額の階級ごとに受給権者を分けると、人数は次のように並びます。
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
1万円刻みで並べると、人数の厚い階級は10万円台から19万円台にかけて続きます。全体平均の15万289円が入るのは15万円以上〜16万円未満で、ここには96万5035人が並びます。ただ、5万円に届かない階級にも、30万円以上の階級にも受給権者はいます。年金の受け取り方は幅を持って分かれており、平均の近くに全員が集まっているわけではありません。
3. 【国民年金】平均年金月額5万9310円|6万円台に人数が寄る階級別の並び
厚生年金に加入していた期間がない方が受け取るのは、国民年金(老齢基礎年金)です。この月額も、同じ資料から並べていきます。
3.1 国民年金の平均年金月額|納めた期間の長さが反映される仕組み
- 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
全体は5万9310円、男性は6万1595円、女性は5万7582円です。厚生年金で見られた5万円台の開きに比べると、男女の差はごくわずかにとどまります。国民年金では、保険料を納めた月数の多さだけが額に効いてきて、現役のあいだにいくら稼いだかは計算に入りません。そのぶん、働き方の違いが差として残りにくくなります。
3.2 階級別の受給権者数|満額の水準が定められている制度の形
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
階級の数は8つで、厚生年金の31階級と比べるとずいぶん少なくなります。そのうち6万円以上〜7万円未満に1715万5059人が寄っており、ほかの階級とは人数の桁が違います。国民年金には受け取れる額の上限にあたる満額が決められているので、厚生年金のように上へ長く伸びる並びにはなりません。
3.3 世帯として受け取る額を、ひとり分の平均から足し合わせると
ここまで並べてきたのは、いずれもひとり分の平均です。世帯としての年金は、そのひとり分をふたつ足し合わせた形になります。
夫が厚生年金の男性平均月額16万9967円、妻が国民年金の女性平均月額5万7582円という組み合わせの世帯で足し上げると、世帯の年金月額は22万7549円という数字になります。
この月額約22万円で、シニア世帯のひと月の暮らしをどこまで賄えるのか。次の章では、家計収支のデータと並べて見ていきます。
4. 【65歳以上・夫婦のみの無職世帯】ひと月の収入25万4395円・支出29万6829円と、差し引き4万2434円
3つ目の材料は、総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」です。ここから「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」のひと月の家計収支を取り出します。
4.1 ひと月の収入25万4395円は、何によって成り立っているか
ひと月に入ってくるのは25万4395円です。その内側を見ると、主に年金にあたる社会保障給付が22万8614円で、大半を占めています。勤めて得る収入ではなく公的年金が土台になっているという、この年代の家計の形がここに出ています。前の章で足し合わせた世帯の年金月額22万7549円とも、近い水準に並びます。
4.2 29万6829円の支出を、消費支出と非消費支出に分けて数える
ひと月の支出は29万6829円です。これは性格の異なる2つに分かれます。ひとつは日々の暮らしにかかる消費支出で、26万3979円。費目ごとの内訳は次のとおりです。
- 食料:7万8964円
- 住居:1万7739円
- 光熱・水道:2万3540円
- 家具・家事用品:1万1237円
- 被服及び履物:5354円
- 保健医療:1万7941円
- 交通・通信:3万1325円
- 教育:0円
- 教養娯楽:2万6538円
- その他の消費支出:5万1341円
- うち諸雑費:2万2047円
- うち交際費:2万3257円
- うち仕送り金:1135円
もうひとつは非消費支出で、税金や社会保険料にあたるものが3万2850円です。
- 直接税:1万2547円
- 社会保険料:2万296円
費目のなかで最も大きいのは食料の7万8964円です。非消費支出3万2850円のほうは、直接税1万2547円と社会保険料2万296円の2つに分かれます。
4.3 差し引き4万2434円という不足と、エンゲル係数29.9%・平均消費性向119.2%
- ひと月の赤字:4万2434円
- エンゲル係数(※消費支出に占める食料費の割合):29.9%
- 平均消費性向(※可処分所得に対する消費支出の割合):119.2%
収入25万4395円から支出29万6829円を差し引くと、ひと月あたり4万2434円が足りない形になります。この不足分は、手元の貯蓄から補うことになります。
年金が中心の収入は毎月ほぼ同じ額で入ってくるぶん、急に増える場面は多くありません。不足がこの調子で続けば、手元の貯蓄は少しずつ減っていくことになります。前半で並べた12区分のどこにいるのかが意味を持ってくるのは、まさにこの場面です。
シニア世帯の収入と支出の実際は、「ふつう」のシニアは年金を月いくらもらってる?60歳代以上の平均額と、無職世帯のリアルな家計収支を公開で確認できます。
5. 自分の位置は、平均との比較ではなく、下から数えた割合で確かめる
ここまでに、貯蓄額については平均2416万円、中央値1178万円、そして12区分それぞれの割合という3種類の数字が出てきました。このうち前の2つは一点の数字で、最後のひとつだけが分布です。
5.1 平均との比較では、上か下かの2つにしか分かれない
平均や中央値にご自身の額を当ててみると、答えは「上」か「下」のどちらかになります。ただ、同じ「下」であっても、あと少しで届く位置にいる場合と、まだ距離がある場合とでは、その後に考えることが変わってきます。一点の数字との比較には、その違いを映す目盛りがありません。
相談の場でも、平均との差だけを見て気持ちが沈んでしまっている方は少なくありません。数字の性格を確かめないまま比べると、上か下かという結果だけが残ってしまいます。
5.2 累積で見ると、区分の細かさに左右されにくくなる
一方、区分ごとの割合は12個に分かれています。ひとつずつを見ると、どれも数%から25.2%のあいだにおさまっていて、そのままでは「多い」のか「少ない」のかを判断しにくいものです。
そこで、少ないほうの区分から順に割合を足し上げていくと、見え方が変わります。ある区分まで足したときの累積は、「その区分より少ないほうに、全体の何%が並んでいるか」を表すことになります。ご自身の額が入る区分まで足し上げれば、全体のどのあたりに立っているのかが割合の形で分かります。
この見方であれば、区分が細かく分かれていても、ひとつの区分の割合が小さく見えることに引きずられません。次の章では、実際に12区分を1つずつ足し上げていきます。
なお、位置が確かめられたからといって、そこから先の進め方が一通りに決まるわけではありません。毎月の支出のうち手を入れられそうなところを洗い出す、体の具合に合わせて短い時間だけ働き続ける、といった道があります。値動きを受け入れて備えるという道もありますが、その場合は価格が上下するリスクを負うことになり、手元に戻る額が出した額を下回る元本割れも起こりえます。どの道が合うかは、その世帯の事情によって変わってきます。
6. 【独自試算】貯蓄額の分布を少ないほうの区分から1つずつ累積すると、50%を超えるのはどの区分か|中央値1178万円が置かれている場所
ここでは、いま並べた12区分の割合を、少ないほうの区分から1つずつ足し上げていきます。材料はJ-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」の70歳代・二人以上世帯の数字だけです。累積がどの区分で50%を超えるのか、そして中央値1178万円がその並びのどこに置かれているのかを、独自に試算します。
6.1 この試算で置いた前提
前提は次のとおりです。金額を予測する計算ではなく、公表されている割合をそのまま足し合わせるだけの計算です。
- 使うのは、J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」の70歳代・二人以上世帯の貯蓄額(金融資産保有額)の区分別割合のみとする
- 足し上げる順序は、金融資産非保有を起点に、金額の少ない区分から多い区分へと進める
- 公表されている割合は小数第1位までなので、そのまま足し合わせ、途中で丸め直さない
- 「無回答」0.6%はどの区分にも振り分けず、全体(100.0%)の内側に残したままにする。したがって累積の割合は、無回答を含む全体に対する割合になる
- 区分の内側で世帯がどう散らばっているかは公表されていないため、区分の中の位置を出す場面では「区分の中で均等に散らばっている」と仮定する。あくまで目安であり、実際の散らばり方とは異なる
- 割り切れないものには「約」を付け、小数第2位を四捨五入する
- この試算は割合の足し算であり、金額の見通しや将来の資産額を示すものではない
6.2 まず、12区分と無回答の合計を確かめる
足し上げる前に、区分の割合が全体でいくつになるかを確かめておきます。
- 12区分の合計:10.9+4.5+5.1+3.7+3.9+2.9+6.4+6.7+11.1+6.7+12.3+25.2 = 99.4%
- 無回答:0.6%
- 合計:99.4%+0.6% = 100.0%
端数の切り上げや切り捨てによるずれはなく、ちょうど100.0%になりました。これで、足し上げた累積をそのまま「全体の何%か」として読むことができます。
6.3 少ないほうの区分から順に足し上げた結果
金融資産非保有の10.9%を起点に、1区分ずつ足していきます。かっこ内が、その区分までを足し上げた累積です。
- 1つ目 金融資産非保有:10.9%(累積 10.9%)
- 2つ目 100万円未満:4.5%(累積 15.4%)
- 3つ目 100万〜200万円未満:5.1%(累積 20.5%)
- 4つ目 200万〜300万円未満:3.7%(累積 24.2%)
- 5つ目 300万〜400万円未満:3.9%(累積 28.1%)
- 6つ目 400万〜500万円未満:2.9%(累積 31.0%)
- 7つ目 500万〜700万円未満:6.4%(累積 37.4%)
- 8つ目 700万〜1000万円未満:6.7%(累積 44.1%)
- 9つ目 1000万〜1500万円未満:11.1%(累積 55.2%)
- 10個目 1500万〜2000万円未満:6.7%(累積 61.9%)
- 11個目 2000万〜3000万円未満:12.3%(累積 74.2%)
- 12個目 3000万円以上:25.2%(累積 99.4%)
- 無回答:0.6%(累積 100.0%)
累積が50%を超えたのは、9つ目の「1000万〜1500万円未満」でした。その手前の8つ目までを足した累積は44.1%、つまり貯蓄額が1000万円に届かない世帯が全体の44.1%を占めており、この区分の11.1%を足したところで55.2%となり、半分を超えます。
逆の側から検算してみます。1000万円以上の4区分を足すと、11.1+6.7+12.3+25.2 = 55.3%です。ここに1000万円未満の44.1%と無回答0.6%を足すと、55.3+44.1+0.6 = 100.0%となり、上の並びと矛盾がないことを確かめられました。
6.4 中央値1178万円は、どの区分の中にあるか
公表されている中央値は1178万円です。これは1000万円以上1500万円未満にあたりますから、いま累積が50%を超えた9つ目の区分の中に入ります。累積の結果と中央値が、同じ区分を指したことになります。
もう少し細かく見てみます。50%に届くまでに足りない分は、50.0−44.1 = 5.9ポイントです。9つ目の区分が持つ11.1ポイントのうち、この5.9ポイントぶんまで進んだところで50%に達することになります。
- 5.9 ÷ 11.1 = 約53.2%(この区分のうち、下からおよそ53.2%まで進んだ地点)
この区分の幅は1000万円から1500万円までの500万円です。区分の中で世帯が均等に散らばっていると仮定すると、50%に達する地点はおよそ次の金額にあたります。
- 1000万円 + 500万円 × 0.532 = 約1266万円
ところが、公表されている中央値は1178万円で、この約1266万円よりも低い位置にあります。同じ考え方で中央値1178万円の位置を割合に直すと、(1178−1000)÷500 = 0.356 ですから、累積は44.1+11.1×0.356 = 約48.1%という計算になります。
この差は、「区分の中で均等に散らばっている」という仮定が実際とは違っていることを示しています。1000万〜1500万円未満の区分の中では、世帯が下寄り、つまり1000万円に近いほうに多く集まっていると読むことができます。区分を足し上げる見方は全体の中の位置をつかむには役立ちますが、区分の内側までは分からないという限界も、あわせて確かめられた形です。
6.5 4分の1・半分・4分の3で区切ってみる
同じ累積の並びを、別の目盛りでも読んでみます。
- 累積が25%を超えるのは5つ目の「300万〜400万円未満」(累積28.1%。その手前の4つ目までは24.2%)
- 累積が50%を超えるのは9つ目の「1000万〜1500万円未満」(累積55.2%。その手前の8つ目までは44.1%)
- 累積が75%を超えるのは12個目の「3000万円以上」(累積99.4%。その手前の11個目までは74.2%)
下から4分の1の境目は300万円台にあり、真ん中の境目は1000万円台の前半、上から4分の1の境目は3000万円のあたりということになります。3000万円以上の区分が25.2%と大きいため、上の4分の1がひとつの区分にほぼそのまま重なる形です。
6.6 この試算から読み取れること
- 貯蓄額が1000万円に届かない世帯は全体の44.1%で、1000万円以上の世帯は55.3%。半分の境目は1000万〜1500万円未満の区分の中にある
- 公表されている中央値1178万円は、累積が50%を超えるこの区分の中に収まっており、2つの見方が同じ区分を指した
- 一方で、区分の中で均等に散らばっていると仮定した場合の目安(約1266万円)と実際の中央値(1178万円)にはずれがあり、区分の内側の散らばりまでは足し上げでは分からない
6.7 この試算が示していないこと
ここで出した累積の割合は、調査に回答した世帯の分布を足し合わせたものであり、これから先の貯蓄額の見通しを示すものではありません。回答した世帯の構成が変われば割合も変わりますし、同じ区分に入る世帯であっても、収入の入り方や支出の形は一つひとつ異なります。
あわせて申し添えておくと、この足し上げは、下のほうの区分に並ぶ世帯の備えが足りなかったことを表すものではありません。どの区分に入るかを分けているのは、勤め先から退職金があったかどうか、現役のあいだの収入がどう動いたか、受け継いだものがあったかどうか、そして体の具合がどうであったかといった事情の重なりです。貯蓄が0円と回答した世帯の10.9%という数字も、その重なりの結果として並んでいます。
また、ここで扱った金融資産保有額には株式や投資信託、生命保険なども含まれており、日常的な出し入れに備えている普通預金の残高は含まれていません。同じ区分にいても、すぐに動かせる部分がどれだけあるかは世帯によって変わります。物価の変動、医療や介護にかかる費用、収入の変化も、この計算には含めていません。
公的年金の額や、税・社会保険料の決まりは改正されることがあります。手続きや取り扱いの最新の内容については、年金事務所や市区町村の窓口など、所管の部署でお確かめください。ご自身の世帯に必要な備えの大きさは状況によって一人ひとり違いますので、個別の判断は専門家に確かめながら進めていただければと思います。


