7. 60歳代に多い「持っているものが増えてきて、どう減らせばよいのか分からない」というご相談。ファイナンシャルアドバイザー・菅原 美優が伝えたいこと
お金にまつわるものは、長い年月のあいだに少しずつ増えていきます。そのときどきで必要だと考えて持ち始めたものが積み重なり、気がつくと種類も預け先もばらばらになっている。相談の場では、何かに困っているというより「多いままにしておいてよいのだろうか」という気がかりから話が始まることが少なくありません。すっきりさせたいという気持ちと、減らしてよいものかどうか判断がつかないという迷いが、同時にあるご相談です。
7.1 60歳代に多いお悩み相談は「持っているものが増えてきて、どう減らせばよいのか分からない」

「多い」と感じたときに、まず数を数えて減らす方向へ進みたくなるのは自然なことです。ただ、数が多いこと自体が困りごとの原因とは限りません。相談の場では、数ではなく並び方のほうを変えると気がかりが小さくなる、という結論に行き着くことがよくあります。
7.2 【ファイナンシャルアドバイザー・菅原 美優が回答】数を減らす前に、役割ごとにまとめて見ると、持ったままでも見通しは変わる
7.3 ポイント1:「多い」と感じたときに見るのは数ではなく、役割が重なっているかどうか
同じ数だけ持っていても、それぞれが違う役目を担っているのか、似た役目のものが並んでいるのかで、意味はまったく変わります。値動きのないところに置いてある分と、値動きを受け入れて増やすことを考えている分では、そもそも期待している働きが別です。使う時期が違うもの、使う目的が別々のもの、万一のときの備えとして持っているものも同じで、分けて持っていること自体に理由があります。ですから、数が多いことがそのまま整理すべき状態を意味するわけではありませんし、少ないほうがよいとも言い切れません。見るのは総数ではなく、同じ役目のものがいくつも並んでいないかどうかです。役割が重なっていなければ、多いままでも困る場面は多くありません。逆に、同じ役目のものがいくつも並んでいるなら、そこが見直しの候補になります。
7.4 ポイント2:整理は手放すことと同じではない。持ったまま、役割ごとにまとめて考える
整理という言葉から、売ったり解約したりして数を減らすことを思い浮かべる方は多いのですが、持ったままでもできる整理があります。ひとつずつを個別に見るのをやめて、当面の暮らしに使う分、しばらく使う予定のない分、値動きを受け入れて時間をかけて育てる分といったように、役割の束としてまとめて考える方法です。数は変わっていなくても、束の単位で見れば見るべきものは少なくなりますし、どの束が厚くてどの束が薄いのかも分かりやすくなります。この見方をすると、増やしたいのか、当面の備えを厚くしたいのかといった判断も、個別の一つひとつではなく束の単位でできるようになります。すっきりさせたいという気持ちの正体が、数の多さではなく分かりにくさだった場合、この段階で気がかりのほとんどが解消することもあります。手放すかどうかを決めるのは、そのあとで構いません。
7.5 ポイント3:手放すと決める前に確かめること、そして残すものは人に分かる形にしておくこと
束にしてみて、それでも同じ役目のものが重なっていて減らしたいと感じたときは、決める前に確かめておきたいことがあります。ひとつは、値動きのあるものは売った時点でその日の値段が確定するということです。持ち続けていれば動き続ける評価額が、そこで固定されます。値動きのあるものは買ったときを下回っていることもありますので、そのタイミングで手放せば元本割れが確定することになります。あわせて、手放すときには費用がかかる場合があり、利益が出ていれば税金の対象になる場合もあります。取り扱いは改正されることがあるため、最新の内容は公的機関の情報や口座を開いている窓口でご確認ください。もうひとつ、この年代ならではの観点として、残したものがご自身以外の方から見ても分かる状態になっているかどうかがあります。数を絞ることの本当の利点は、見た目のすっきり感よりも、いざというときにご家族が把握しやすくなることのほうかもしれません。逆にいえば、分かる形にしておけるなら、数を減らさないという結論も十分にあり得ます。
相談の場で、結局ひとつも手放さないまま話が終わることは珍しくありません。それでも、何のために持っているものかが自分の言葉で言えるようになると、多いという気がかりのほうが先に小さくなっていきます。
8. まとめにかえて
持っているものが増えてくると、数の多さそのものが気になってきます。ただ、減らすことが目的になってしまうと、違う役目を担っていたものまで一緒に外してしまうことがあります。まずは数ではなく、同じ役目のものが重なっていないかという目で見て、持ったまま役割ごとにまとめてみてください。それだけで見通しが変わることもありますし、そのうえで減らしたいと感じたときには、値動きのあるものは売った時点で値段が決まること、費用や税金の扱いが関わってくる場合があることを確かめてから進めれば十分です。何をどれだけ持っておくかはご家庭の状況や今後の使い道によって変わりますので、判断に迷う場面では、個別の事情をふまえて専門家に相談することもご検討ください。
参考資料
- 【70代の貯蓄・年金・家計のリアル】老後赤字を加速させないためには?投資に頼らない防衛策を徹底解説!
- LIMO「来月、6月15日支給分から年金が増える!厚生年金+基礎年金「月15万円(年180万円)」を超える人はどれくらい?2026年度最新金額と106万円の壁見直しを解説」
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
菅原 美優
