9月から年末にかけては、NISAの年間投資枠をどこまで使うか、手元の資産をどこに置いておくかを見直す方が増える時期です。そうしたタイミングで気になるのが、「資産を増やしている人は、いったい何をしているのか」ということではないでしょうか。

野村総合研究所の推計によると、純金融資産1億円以上の「富裕層・超富裕層」は日本に165万3000世帯。全世帯の約3%にあたるこの層が、469兆円もの純金融資産を保有しています。

本記事では、富裕層に共通するお金の使い方を確認したうえで、「富裕層」の定義と世帯数、そして日本で富裕層が増え続けている背景を、データをもとに整理していきます。

菅原 美優
「富裕層」と聞くとご自身とは縁のない世界の話に感じられるかもしれませんが、ご相談の場で伺っていると、資産を着実に増やしている方の行動そのものは、特別なものばかりではありません。金額の大小よりも、お金を出すときの判断の仕方や、方針を決めたあとの見直し方に違いが表れることが多いように感じます。まずは日本の富裕層がどのくらいいるのか、なぜ増えているのかという全体像から確認していきましょう。

なお、富裕層の定義や「お金が貯まる人」に共通する行動に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

資産1億円以上の富裕層に共通する3つの特徴!お金が自然と貯まる人の思考と行動【元FP会社職員監修】
資産1億円以上の富裕層に共通する3つの特徴!お金が自然と貯まる人の思考と行動【元FP会社職員監修】

1. 資産1億円以上の富裕層に共通する「お金の使い方」3つ

資産を増やしている人には、日々のお金の使い方や物事の受け止め方に、似た傾向があるといわれます。ここでは、実際に富裕層の顧客と接してきた元FP会社職員の視点をまとめた資産1億円以上の富裕層に共通する3つの特徴をもとに、3つの行動を確認していきましょう。

1.1 コツ1:買う前に「この金額を払う価値があるか」を必ず考える

1つ目は、支払いの前に立ち止まる習慣です。富裕層というと気前よくお金を使うイメージを持たれがちですが、実際にはその逆で、1つひとつの支出に対する判断が細かいという指摘があります。

バンバンお金を使うイメージがあるお金持ちですが、実際にはお金を使うことに対してシビアです。物を買うときには『本当にこれに対してこれだけのお金を支払う価値があるのか』をじっくり考えます。

ここで問われているのは、金額が高いか安いかではなく、支払う金額とそこから得られるものが釣り合っているかどうかです。安いから買う、高いから諦めるという判断ではなく、自分にとっての価値を基準に決めている点が、時間の経過とともに資産の差につながっていくと考えられます。

1.2 コツ2:違う意見をいったん受け止め、必要なら早めに方針を変える

2つ目は、情報や意見の受け止め方です。資産形成では、自分の判断が正しいかどうかを確かめる機会が意外と少なく、いったん決めた方針をそのまま持ち続けてしまいがちです。

人の話をじっくり聞き、自分とは違う考えでもはじめから否定せず、そういう考えもあると一旦は受け入れます。

自分と違う考え方をいったん受け入れられる人は、前提が変わったときに気づくのが早く、方針を修正する判断も早くなります。相場や制度が変わっていく局面では、この差が結果に表れやすい部分といえるでしょう。

1.3 コツ3:好きなことにお金と時間を使い、人生を楽しんでいる

3つ目は、お金を「使う側」の姿勢です。節約と我慢だけで資産を積み上げているわけではない、という点は見落とされがちなポイントです。

基本的にお金持ちは人生を楽しんでいます。好きなことや得意なことを仕事にしている人が多く、仕事について楽しそうに語ってくれ、夢中になっている様子がうかがえました。

好きなことや得意なことに時間を注いだ結果として収入が増え、その収入が資産形成につながっていくという順番も考えられます。支出を削ることだけが資産形成ではない、という点は押さえておきたいところです。

菅原 美優
3つのうち、ご相談の場でとくに差が出やすいと感じるのは2つ目です。方針を決めたあと、状況が変わっても最初の判断のままにしてしまう方は少なくありません。とはいえ、こまめに動かすことがよいという話ではなく、変える必要があるかどうかを定期的に確かめる機会をつくれているかという点が大切です。なお、年代別の貯蓄額や年収別のデータからご自身の位置を確かめたい方は、日本の富裕層の割合と年代別の平均貯蓄額をまとめた記事もあわせてご覧ください。

2. 「富裕層」の定義と、日本にいる世帯数

そもそも「富裕層」と呼ばれるのは、どのような世帯を指すのでしょうか。野村総合研究所のレポートをもとに、定義と世帯数を確認していきます。

2.1 純金融資産1億円以上が「富裕層」

野村総合研究所のレポートでは、純金融資産保有額の規模に応じて、日本の全世帯を5つの階層に分類しています。

このうち、純金融資産が1億円以上の世帯を「富裕層」、さらにそのなかで5億円以上の世帯を「超富裕層」と定義しています。

2.2 資産1億円以上の世帯は、日本にどのくらいあるのか

「富裕層+超富裕層」の合計は165万3000世帯。これは日本の全世帯の約3%にあたります。

  • 超富裕層(5億円以上):11万8000世帯/135兆円
  • 富裕層(1億円以上5億円未満):153万5000世帯/334兆円
  • 準富裕層(5000万円以上1億円未満):403万9000世帯/333兆円
  • アッパーマス層(3000万円以上5000万円未満):576万5000世帯/282兆円
  • マス層(3000万円未満):4424万7000世帯/711兆円

富裕層と超富裕層が保有する資産の合計は469兆円。全世帯の保有資産額1795兆円のうち、約26%が上位約3%の世帯に集まっている計算です。

3. 富裕層・超富裕層の資産はどう推移してきたのか

「富裕層」「超富裕層」の保有資産規模と世帯数の推移を2005年からたどると、リーマンショックや東日本大震災の影響による一時的な落ち込みはあるものの、長期的には右肩上がりで推移しています。

とくに2011年以降は、増加が一貫して続いている点が特徴です。

富裕層と超富裕層を合わせた「純金融資産保有額の合計」は、次のように推移してきました。

  • 2011年:188兆円
  • 2013年:241兆円
  • 2015年:272兆円
  • 2017年:299兆円
  • 2019年:333兆円
  • 2021年:364兆円
  • 2023年:469兆円

直近10年にあたる2013年と2023年を比べると、この2つの層が持つ純金融資産の総額は約95%増えています。10年でおよそ2倍近くまで膨らんだことになります。

4. 日本で富裕層が増えている3つの背景

富裕層が増え続けている背景には、いくつかの要因が重なっていると考えられます。ここでは主な3つを整理します。

4.1 背景1:国内外の株価上昇

1つ目は株価の上昇です。

米国株式市場では「ダウ工業株30種平均」や「S&P500」といった主要指数が、短期的な上下を挟みながらも長期では上昇基調をたどってきました。

これは米国に限った話ではなく、世界的な傾向です。富裕層は一般の世帯と比べ、株式の保有額そのものが大きく、総資産に占める株式の割合も高い傾向があります。

そのため、世界的な株高は、もともと株式を多く持っていた層の資産をとくに大きく押し上げる要因になったと考えられます。

4.2 背景2:非課税投資制度の拡充

2つ目は、非課税で投資できる制度が広がり、資産形成に取り組む間口が開いたことです。

具体的には「NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)」や「iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)」といった、税制優遇のある制度が挙げられます。

NISAは2014年に創設され、2024年からは「新しいNISA」として非課税保有限度額や年間投資枠が拡充されました。

これにより、まとまった資金がなくても資産形成を始められる環境が整い、それまで投資に縁がなかった層にも運用が広がりました。制度のスタートをきっかけに早い段階から続けてきた人であれば、相応の運用益が出ていることも考えられます。

4.3 背景3:相続や贈与による資産の承継

3つ目は、相続や贈与によって資産が次の世代へ引き継がれていることです。

少子高齢化が進むなかで、1人あたりが受け取る相続財産は増える傾向にあります。

その結果、もともと富裕層ではなかった世帯が、親や祖父母からの相続をきっかけに純金融資産1億円以上の層に入る、というケースも生まれています。

株価の上昇、資産形成の機会の広がり、そして資産の承継。この3つが重なることで、富裕層の世帯数は増えてきたと考えられます。

言い換えれば、自分から資産を大きく増やそうとしたわけではなく、環境の変化の結果として資産が積み上がった世帯も一定数含まれている、ということです。

菅原 美優
3つ目の相続・贈与については、ご本人が想定していないタイミングで資産の規模が変わることがあり、そのあとの置き場所に迷われる方が多い部分です。資産の総額が変わったときは、金額の大きさだけを見るのではなく、いつ・何のために使うお金なのかを整理するところから始めていただくと、判断がしやすくなります。