9月に入り、年金生活者支援給付金の請求書が順次送られています。次の年金支給日は10月15日です。
この給付金は、年金収入やその他の所得が一定の基準を下回る方に、年金へ上乗せして支払われるものです。2026年度は前年度から3.2%引き上げられ、基準額は月5620円になりました。
この記事では、公的年金の受給額に大きな幅があることを確認したうえで、給付金の額と支給要件、請求の手続き、そして2025年に成立した年金制度改正法で何が変わるのかまでを整理していきます。
なお、年金生活者支援給付金の制度内容については、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. 公的年金の受給額は、平均では見えないほど幅がある
給付金の話に入る前に、そもそも公的年金の受給額がどれくらいばらついているのかを押さえておきます。この幅が、給付金の対象になるかどうかを分けているためです。
1.1 国民年金は5万円台、厚生年金は15万円台が平均
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、公的年金の平均年金月額は国民年金(老齢基礎年金)で5万円台、厚生年金(国民年金部分も含む)で15万円台です。
1.2 月30万円以上の人がいる一方で、1万円未満の人もいる
ただし、上記はあくまでも全体の平均値に過ぎません。
実際の受給額には個人差があり、月額30万円以上受け取っている人がいる一方で、1万円未満のケースも存在します。年金受給額は、現役時代の働き方や年金加入期間によって大きく変わってきます。
もし、年金とその他の所得を含めても一定基準以下となる場合には、「年金生活者支援給付金」を受け取れる可能性があります。つまりこの制度は、いま見た分布の下のほうに位置する方を支えるために設けられたものです。
2. 年金生活者支援給付金は、受け取っている年金で3種類に分かれる
ここからは給付金そのものの中身に入ります。まずは制度の枠組みからです。
2.1 2019年に始まり、2カ月に一度年金に上乗せされる
「年金生活者支援給付金」は、年金収入やその他の所得額が一定基準額以下の年金生活者の暮らしを支えることを目的として、2カ月に一度、年金に上乗せして支給されるお金です。
2019年に始まった比較的新しい制度で、受給している基礎年金の種類に応じて、次の3つに分かれます。それぞれに給付額と支給要件が定められています。
- 老齢年金生活者支援給付金:老齢基礎年金を受給している方向け
- 障害年金生活者支援給付金:障害基礎年金を受給している方向け
- 遺族年金生活者支援給付金:遺族基礎年金を受給している方向け
出所:年金生活者支援給付金とは?2026年最新の対象者・いくらもらえるか・ハガキが届かない理由を徹底解説
このうち老齢については、基準額をわずかに超えた方を対象とする「補足的老齢年金生活者支援給付金」も設けられています。
3. 2026年度の給付額は月5620円、前年度から3.2%の引き上げ
年金生活者支援給付金は、物価変動率を踏まえて年度ごとに見直しがおこなわれます。2026年度(4月分より)の給付金額は、前年度から+3.2%の増額となりました。
3.1 2026年度の給付額(月額)
- 老齢年金生活者支援給付金の基準額:5620円
- 障害年金生活者支援給付金:1級7025円・2級5620円
- 遺族年金生活者支援給付金:5620円
老齢年金生活者支援給付金については、上記の基準額をもとに、保険料納付済期間等に応じて実際の給付額が計算されます。
なお、上記はいずれも「月額」です。給付金は偶数月の支給日に、2カ月分がまとめて年金と同じ口座へ、年金とは別に振り込まれます。基準額どおりに受け取れる場合、1回の支給で約1万1000円、年額にすると約6万7000円となります。
3.2 実際に受け取っている人の平均は、老齢で4146円
「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2025年3月における平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金4146円、障害年金生活者支援給付金5727円、遺族年金生活者支援給付金5228円でした。
※2025年3月において認定されている平均給付金額です。給付基準額が月5310円だった令和6年度に支給されていた金額のため、2026年度の5620円とは基準が異なります。
老齢だけが基準額を下回っているのは、保険料納付済期間に応じて按分されるためです。障害の平均が基準額を上回っているのは、1級の7025円が平均を押し上げているからだと考えられます。
4. 支給要件は3種類で違い、老齢だけ条件が多い
ここからは、年金生活者支援給付金の支給要件を見ていきましょう。以下の所得基準額は、令和8年10月分から適用されるものです。
4.1 障害・遺族は所得の基準だけ
「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」を受け取れるのは、それぞれの基礎年金(障害基礎年金もしくは遺族基礎年金)を受給中で、前年の所得が491万8000円以下の人です。
判定には障害年金や遺族年金などの非課税収入は含まれず、扶養親族等の数に応じて所得基準額は変わります。
なお、老齢年金生活者支援給付金のみ、本人の所得以外に「年齢」と「世帯全体の状況」が支給要件に加わります。次で整理していきましょう。
4.2 老齢は3つの要件をすべて満たす必要がある
老齢年金生活者支援給付金の支給対象となるのは、下記1~3の要件をすべて満たす人です。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が、昭和31年4月2日以後に生まれた方は82万6500円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方は82万4100円以下
障害・遺族の491万8000円に対して、老齢は82万6500円。線引きの水準がまったく違うことが分かります。加えて老齢だけは世帯単位の条件がつくため、本人の所得が低くても、同居する家族の誰か1人に住民税が課されていれば対象外です。
なお、老齢年金生活者支援給付金の判定にも、障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
基準額をわずかに超えた人には「補足的老齢」がある
「基準額ギリギリで給付対象となる人」との間に不公平感が生じないように、「基準額をわずかに超えて給付対象外となる人」は「補足的老齢年金生活者支援給付金」の支給対象となります。
対象となるのは、1956(昭和31)年4月2日以後に生まれた方で82万6500円を超え92万6500円以下である方、1956年4月1日以前に生まれた方で82万4100円を超え92万4100円以下である方です。所得が増えるにつれて、補足的老齢年金生活者支援給付金の給付額は減ります。
5. 請求しなければ受け取れない。請求書が届く時期は2通り
公的年金と同様に、年金生活者支援給付金の受給には請求手続きが必要です。
5.1 これから65歳を迎える人は、年金請求書と一緒に出す
これから65歳を迎える人には、誕生日の3カ月前に、老齢基礎年金の請求書に同封されて給付金請求書が届きます。同封の給付金請求書に必要事項を記入し、老齢基礎年金の請求書とともに提出しましょう。
5.2 すでに年金を受給中の人には、9月から順次はがきが届く
すでに年金を受給中の人で、新たに年金生活者支援給付金の対象となった場合は、日本年金機構から毎年9月の第1営業日以降、順次「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が郵送されます。必要事項を記入し、郵便ポストに投函しましょう。
なお、繰上げ受給中の場合は書類の様式が異なります。
5.3 2年目以降の手続きは不要、ただし判定は毎年ある
「年金生活者支援給付金」は、近年しばしば実施されている、住民税非課税世帯を対象とする現金給付などの一時的な支援とは異なり、支給要件を満たしていれば継続的に受け取れる支援制度です。
一度請求書を提出すれば、支給要件を満たしている限り、2年目以降の手続きは不要です。継続支給の判定結果は前年の所得に基づき、毎年10月分(12月支給分)から1年間反映されます。
なお、継続認定の結果、給付額が変わる場合は「年金生活者支援給付金 支給金額変更通知書」が、支給対象外となった場合は「年金生活者支援給付金 不該当通知書」が郵送されます。金額に変更がない場合は通知書は届きません。
毎年度の額改定にともなう通知は、これとは別に「年金生活者支援給付金 支給金額(改定)通知書」として届きます。
また、「日本国内に住所がないとき」「年金が全額支給停止のとき」「刑事施設等に拘禁されているとき」のいずれかに該当する場合、給付金は支給されません。
6. 2025年の年金制度改正で、これから何が変わるのか
公的年金の制度は、現役世代・シニア世代どちらにとっても、暮らしや仕事と密接な関係があります。
2025年6月13日、国会では年金制度改正法が成立しました。今回の改正の主な見直しポイントを整理しておきましょう。
6.1 ①社会保険の加入対象の拡大
- 短時間労働者の加入要件(賃金要件・企業規模要件)の見直し。いわゆる年収「106万円の壁」撤廃へ
6.2 ②在職老齢年金の見直し
- 支給停止調整額は2025年度の月51万円から、2026年度は月65万円へ大幅緩和(2026年4月から適用済み)
6.3 ③遺族年金の見直し
- 遺族厚生年金の男女差を解消
- 子どもが遺族基礎年金を受給しやすくする
6.4 ④保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ
- 標準報酬月額の上限を、月65万円→75万円へ段階的に引き上げ(2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円)
6.5 ⑤私的年金制度の見直し
- iDeCo加入年齢の上限引き上げ
- 企業型DCの拠出限度額の拡充
- 企業年金の運用の見える化
いずれも施行の時期は項目ごとに異なります。具体的な適用開始の時期は、厚生労働省の公表資料や加入している制度の窓口で確認してください。

