7. 40歳代に多い「積立が一段落してできた資金の置き場所を決めきれない」というご相談。ファイナンシャルアドバイザー・橋本 優理が伝えたいこと

ここからは、ファイナンシャルアドバイザーが日頃の面談でよく受けるご相談のうち、手元にできた資金の置き場所に関するものを取り上げます。個人が特定されないよう、内容は一般化しています。

7.1 40歳代に多いお悩み相談は「積立が一段落してできた資金の置き場所を決めきれない」

40歳代(ご相談者)
非課税制度を使った積立が一段落して、手元に資金ができました。この分をどこに置くのがよいのか、考えているところです。教育にかかる費用も見込んでおかなければならず、老後の資金とのバランスをどう取ればよいのかで悩んでいます。

積立が一段落して手元に資金ができたとき、次の置き場所が決まらないまま普通預金に残り続けている、というご相談はよくいただきます。教育にかかる費用のように使う時期が比較的近いものと、老後の資金のように使う時期が遠いものが同時にあると、どちらを基準に考えればよいのかが決めにくくなるものです。どちらか一方に寄せる決断を迫られているように感じて、手が止まってしまう方も少なくありません。

7.2 【ファイナンシャルアドバイザー・橋本 優理が回答】置き場所は、使う時期を書き出してから決める

橋本 優理
40代の場合、まだ子どもに教育費がかかる人も少なくないでしょう。
「教育か老後か」どちらかに資産を集中させるのではなく、まずは毎月の余剰資金をそのまま別の金融資産等に移行させるのが良いでしょう。
ただし、教育費のほうが必要になる時期が早く、値動きによってはリスクが伴います。
子どもが進学するのはいつか、老後まであと何年あるかを計算したうえで、バランスよく金融商品を組み合わせることが大切です。

7.3 ポイント1:浮いた分は、そのまま使い切らずに行き先を決めてから動かす

積立が一段落したり、固定費の見直しで支出が減ったりして手元に余裕ができたとき、最初に起きやすいのが、行き先を決めないまま日々の支出に混ざっていくことです。

金額が大きくないほどこの傾向は強くなります。まずは、その分を「何に使うお金なのか」という区分けの段階で止めておく。生活費に戻すのか、近い将来の支出に充てるのか、遠い先のために置いておくのか。この決定を先にしてから移すという順序にすると、あとから振り返ったときに、どこへ行ったのか分からないという状態になりにくくなります。

行き先を決める作業自体はお金が増えるわけではないため後回しになりがちですが、ここを飛ばすと、そのあとの判断がすべて曖昧なままになります。

7.4 ポイント2:使う時期の近いものと遠いもので、置き場所を分ける

行き先の区分けができたら、次は使う時期を目安に置き場所を分けます。教育にかかる費用のように時期がある程度読めていて、しかも近いものは、必要なときに必要な額を用意できることが優先されます。値動きの小さいものは、大きく増えることは期待しにくい一方で、使いたい時期に金額が目減りしている可能性が相対的に低いという特性があります。一方、老後の資金のように使う時期が遠いものは、途中で価格が上下しても、使うまでの期間が長いぶん受け止められる幅が広がります。同じ手元の資金でも、この2つを1カ所にまとめておくと、近い支出に備えたつもりの分まで値動きの影響を受けることになります。分けておくこと自体が、どちらを優先するかという問いを解消する働きをします。

7.5 ポイント3:遠い先に使う分についてだけ、値動きを受け入れる

値動きを受け入れるかどうかは、資金全体で決めるものではなく、区分けした一部について決めるものだという考え方があります。使う時期が遠い分については、期間の長さがある程度の変動を吸収する余地になります。

逆に、近い時期に使うと分かっている分まで同じ扱いにすると、必要になった時点で値下がりしていた場合に、使う予定そのものを動かさなければならなくなります。なお、値動きを受け入れる部分には元本割れとなる可能性があり、値動きの小さいものについても変動がまったくないわけではありません。

どのくらいの割合を値動きのある形にするかは、使う時期までの長さと、値下がりしたときにどこまで受け止められるかによって変わります。

相談の場でも、割合そのものより、どの資金にその割合を当てはめるのかを先に決めるほうが整理しやすい、という結論に行き着くことが少なくありません。

手元に資金ができたときは、どちらを優先するかを決める場面というより、区分けをつくる場面だと考えていただくとよいと思います。

必要な金額や適した置き場所は、ご家族の状況や使う時期によって変わりますので、ご自身に当てはめて考え、判断に迷う部分は専門家に確かめながら進めていただければと思います。

8. まとめにかえて

固定費を見直して浮いたお金をどう扱うか。この問いに、すべての家計に当てはまる答えはありません。

ただ、判断の材料になるデータはあります。基礎年金には、一定の要件を満たす場合に上乗せされる「年金生活者支援給付金」という仕組みがあり、受給中の年金の種類に応じて老齢・障害・遺族の3種類が用意されています。

このうち老齢年金生活者支援給付金について、2026年度の給付基準額は月額5620円。実際に認定されている人の平均給付月額は、2025年3月時点で4146円でした。基準額と平均額に開きがあるのは、給付額が保険料を納めた期間の長さに応じて決まるためです。そして、この給付金は請求の手続きをしないと受け取れません。

土台となる年金本体を見ると、厚生年金と国民年金では平均年金月額に大きな開きがあり、同じ厚生年金のなかでも男女で差があります。加入してきた制度と期間によって、土台の高さは大きく変わります。

試算で見たとおり、月3000円でも20年続ければ元本72万円に対して約98万円という水準にはなり、月1万円であれば約327万円という目安になります。浮いた金額の大小そのものより、その分に行き先を決めておくかどうかが、20年後の差につながっていきます。

お悩み相談で取り上げたとおり、置き場所を決める作業は、使う時期を書き出すところから始まります。近い時期に使う分と遠い先に使う分を分けておけば、どちらを優先するかという問い自体が形を変えていきます。

なお、値動きを受け入れた部分には価格の変動があり、元本割れとなる可能性があります。この記事で示した数字はいずれも一定の前提を置いた目安であり、将来の金額を保証するものではありません。

制度の要件や税制の扱いは年度や個々の状況によって変わりますので、実際の該当・非該当や手続きについては、年金の窓口やお住まいの市区町村など関連する部署に確かめたうえで、個別の判断は専門家に確かめながら進めていただければと思います。

参考資料

橋本 優理