勤務先に確定拠出年金(企業型DC)などの制度がある方のなかには、「会社で積み立てているけれど、自分でも追加で積立投資をするべきか」と悩むケースが少なくありません。

老後の収入を整理する第一歩は、土台となる公的年金(国民年金・厚生年金)の見込額を正確に把握することです。本記事では、厚生年金・国民年金の平均受給額や、月20万円以上受け取っている人の割合(18.8%)といった最新データを解説。そのうえで、勤務先の制度と個人での積立を組み合わせた20年後の資産シミュレーションや、効率的な老後資金づくりのポイントをファイナンシャルアドバイザーの視点からわかりやすく整理します。

徳田 椋
勤務先の制度を利用されている方から「これで足りているのでしょうか」というご質問をいただくことがあります。足りているかどうかは、勤務先の制度だけを見ていても判断がつきません。老後の収入は公的年金という土台があり、その上に勤務先の制度や自分の積立が乗る形になります。まずは土台の高さを確かめ、それから上に乗せる分を考えていく順番だと、迷いが整理しやすくなります。

なお、公的年金の仕組みや平均受給額、受給額の分布に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
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【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント
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1. 老後の収入をつくる3つの層|まずは公的年金の2階建てから確かめる

勤務先の制度と自分の積立をどう組み合わせるかを考えるとき、その2つだけを見比べても答えは出にくいものです。どちらも、公的年金という土台の上に乗せる部分だからです。先に土台の形を確かめておきます。

公的年金の仕組みについては、LIMOの記事「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」から要点を引用して確認しておきましょう。

公的年金制度は、しばしば「2階建て構造」に例えられます。これは、日本の年金制度が「1階」の国民年金(基礎年金)と、「2階」の厚生年金という2つの制度で構成されているためです。

1階部分の国民年金は、原則として日本国内に居住する20歳以上60歳未満のすべての人が加入対象で、保険料は所得にかかわらず一律(2026年度は月額1万7920円)。保険料を40年間(480カ月)すべて納付すると、満額(2026年度は月額7万608円)を受け取ることができます。

2階部分の厚生年金は、会社員や公務員のほか、パートタイマーなどで特定適用事業所に勤務し一定の要件を満たす人が国民年金に上乗せして加入します。保険料は収入に応じて変動し、受給額は加入していた期間や納付した保険料額によって個人差が生じます。

この1階と2階が、老後の収入の土台にあたる部分です。1階の国民年金は納めた月数で金額が決まり、2階の厚生年金は加入していた期間とその期間の報酬で決まります。どちらも制度として金額の決まり方があらかじめ定まっており、自分の裁量で高さを変えられる部分はかぎられます。

その上に乗るのが、勤務先の制度と自分の積立です。企業型確定拠出年金(企業型DC)のように会社が掛金を拠出する制度もあれば、退職時にまとめて受け取る形の制度もあります。制度の中身は会社ごとに異なり、掛金の上限や、個人で入る制度とあわせて利用できるかどうかも一律ではありません。ご自身の勤務先がどの形にあたるかは、勤務先の担当部署や制度の運営管理機関に確認しておくと確かです。

つまり、老後の収入は「公的年金」「勤務先の制度」「自分の積立」という3つの層で組み上がります。3層のうち、いちばん下は制度で決まり、その上の2つは自分で動かせる余地がある、という関係になります。

徳田 椋
相談の場では、勤務先の制度の内容をご存じないまま「たぶん少ないと思います」とおっしゃる方に少なからずお会いします。掛金がいくら拠出されているのか、受け取り方にどんな選択肢があるのかは、制度によってかなり違います。ご自身の1階と2階の見込み額はねんきん定期便やねんきんネットで、勤務先の制度の中身は担当部署や運営管理機関で、それぞれ確かめられます。3つの層のうち2つが分かるだけでも、自分で用意する分の輪郭が見えてきます。

2. 公的年金の平均月額|上に乗せる分を測るための基準になる数字

土台の高さを具体的な数字で見ていきます。実際に受け取られている金額について、同じ記事から要点を引用します。

厚生年金の平均年金月額は〈全体〉15万289円、〈男性〉16万9967円、〈女性〉11万1413円(いずれも国民年金の金額を含む)。国民年金は〈全体〉5万9310円、〈男性〉6万1595円、〈女性〉5万7582円です。

年金の受給額はこれまでの加入状況によって決まるため、人によって大きな差が生じる点には注意が必要です。

厚生年金の金額には1階の国民年金の分も含まれています。会社員や公務員として働いた期間が長いほど2階部分が積み上がるため、その期間の長さがそのまま金額の差になって表れます。

国民年金のほうは保険料が一律で、納めた月数だけで金額が決まる仕組みですので、男女の差は小さく、いずれも6万円前後に収まっています。なお、ここに挙げた金額はいずれも額面であり、実際の手元には介護保険料や国民健康保険料、所得税・住民税などが差し引かれたあとの金額が残ります。

老後の生活費として想定する金額から、この土台にあたる見込み額を引いた残りが、勤務先の制度と自分の積立で用意することになる部分です。ただし、平均という1つの数字は、その内側にどれだけの幅があるかまでは示してくれません。次の章では、金額帯ごとの人数を見ていきます。

徳田 椋
平均額をご覧になって、そのままご自身に当てはめてしまう方がいらっしゃいます。この数字は加入状況の異なる方をすべてならしたものですので、ご自身の見込み額とは離れていることのほうが多いといえます。順番としては、まずご自身の見込み額を確かめ、次に老後に想定する生活費との差を出し、その差を勤務先の制度でどこまで賄えるかを見る。そこまで進んでから、自分の積立でいくら埋めるかという話になります。

3. 厚生年金で月20万円以上を受け取る人は18.8%|8割を超える方が届いていない水準

ここからは、厚生年金(国民年金部分を含む)の受給額が金額帯ごとにどう分かれているかを見ていきます。この分布は、LIMOの記事「【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント」でも整理されています。

厚生年金の受給額ごとの受給権者数1/1

厚生年金の受給額ごとの受給権者数

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

3.1 1万円刻みで見た受給権者数の内訳

  • 1万円未満:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

この分布のうち、公的年金収入が月20万円以上に達している方は、厚生年金の受給権者のうち18.8%です。裏を返すと、8割を超える方はひと月20万円未満という水準にとどまっています。

年金収入は世帯単位で考える必要もありますが、公的年金だけで安定した生活を組み立てようとすると、多くの場合に足りない部分が残ります。その部分を埋める手段が、勤務先の制度と自分の積立ということになります。

なお、この18.8%という割合は、あくまで厚生年金を受給している方のなかでの数字です。国民年金のみを受給している方々も含めて全体を見渡すと、年金月額が月20万円以上となる方の割合は、さらに低くなると考えられます。

勤務先に制度がある方は、この土台の上にもう1つ層があることになります。ただし、その層でどこまで賄えるかは制度の中身しだいです。掛金の額、運用の対象、受け取り方の選択肢は制度ごとに違いますので、賄える範囲を見積もるには、まず自分の制度の内容を確かめるところからになります。

徳田 椋
分布をご覧いただくと、月20万円以上に届いている方が全体の2割弱であることが分かります。ここでご相談が多いのが、勤務先の制度があるから自分では積み立てなくてよいのか、それとも上乗せしたほうがよいのか、という迷いです。この判断は、勤務先の制度で積み上がる見込み額が分かって初めて比べられるものになります。分からないまま金額を決めると、多すぎたり少なすぎたりしやすいところです。

年代ごとに受け取っている年金の平均月額についてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
【2026年最新版】老齢年金一覧表「60歳代・70歳代・80歳代・90歳以上」の平均年金月額はいくら?手取りのリアルと5つの公的給付金

4. 【独自試算】勤務先の制度だけで積む場合と、自分の積立を上乗せする場合で20年後はどう違うか

勤務先の制度に加えて自分でも積み立てると、20年後の到達額はどのくらい変わりうるのか。前提を置いて試算してみます。

前提は次のとおりです。

  • 積立期間:20年(240カ月)
  • 想定利回り:年3%。月利は年利を12で割るのではなく、1.03の12分の1乗から1を引いた約0.2466%を使用
  • 毎月末に積み立て、分配金などは再投資されるものとする
  • 勤務先の制度で積み上がる掛金は月1万5000円と仮定。実際の金額は制度によって異なります
  • 税金・手数料・物価の変動は考慮しない

この前提で、3つのケースを比べます。

  • ケースA:勤務先の制度の月1万5000円だけを20年続ける → 元本360万円、到達額は約490万円
  • ケースB:Aに自分の積立を月1万円上乗せし、合計を月2万5000円にする → 元本600万円、到達額は約817万円
  • ケースC:Aに自分の積立を月2万円上乗せし、合計を月3万5000円にする → 元本840万円、到達額は約1144万円

上乗せした分だけを取り出すと、月1万円で約327万円、月2万円で約654万円です。20年という期間を通してみると、上乗せした元本(240万円・480万円)に対して、それぞれ約87万円・約174万円が運用によって加わった計算になります。

この試算から読み取れるのは、上乗せの有無で到達額に差が出るという当たり前の事実だけではありません。上乗せの金額を2倍にすると到達額の差もほぼ2倍になっており、少額から始めた場合でも比例した結果になりうる、という点も見えてきます。まとまった金額を用意しなければ意味がない、というものではないわけです。

一方で、この試算は勤務先の制度の掛金を月1万5000円と仮に置いたものです。実際の掛金は制度によって大きく異なり、掛金の上限や、個人で入る制度とあわせて利用できるかどうかも、勤務先の制度の内容によって扱いが変わります。ご自身の場合にどうなるかは、勤務先の担当部署や制度の運営管理機関に確認していただくのが確実です。税制の扱いについても、思い込みで判断せず、関連する部署や専門家に確かめておくと判断の材料がそろいます。

また、ここでは利回りが一定で続く前提を置いていますが、実際の運用ではそうはなりません。同じ金額を積み立てても、その期間の値動きによって結果は上下します。勤務先の制度のなかで選んでいる運用の対象と、自分の積立で選んでいる対象が似た値動きをする場合、全体としての偏りが大きくなることもあります。

※上記は一定の利回りが続いたと仮定した場合の目安であり、将来の運用成果を示すものではありません。実際の運用では価格が変動し、元本割れとなる可能性があります。税金・手数料は考慮していません。金額はいずれも概算です。

和田 直子
勤務先の制度と自分の積立をどう組み合わせるかについては、いくつかの見方があります。勤務先の制度で積み上がる見込み額を先に確かめ、それでも残る差の分だけを自分で用意する、という置き方がひとつ。制度の内容にかかわらず、家計から無理なく回せる金額を先に決めておく、という置き方もあります。あわせて確かめておきたいのが、勤務先の制度のなかで選んでいる運用の対象と、自分の積立で選んでいる対象が重なっていないかという点です。同じような値動きをするものばかりになっていると、全体としての振れ幅が大きくなることがあります。掛金の上限や併用の可否は制度によって条件が異なりますので、勤務先の担当部署や運営管理機関で確かめておくと、選べる範囲がはっきりします。運用に回す部分には価格の変動があり、元本割れとなる可能性もありますので、当面の生活費や近い将来に使う予定のあるお金とは分けて置いておく、という整理のしかたもあります。