2026年度の公的年金は4年連続のプラス改定となり、改定後の金額は6月の支払分から反映されています。8月も偶数月にあたり、年金の定期支払がある月です。
一方、現役世代に目を向けると、夏から秋にかけては賞与の支給や人事評価の結果が家計に届く時期でもあります。昇給や手当の増額で毎月の手取りが上向いたとき、その増えた分をどう扱うか。相談の場では、この配分に迷う声をよくうかがいます。
この記事では、老後の収入の柱になる公的年金について、2026年度の改定後の金額と、実際に厚生年金を月額15万円以上受け取っている人がどのくらいいるのかを確認します。そのうえで、増えた収入を配分するときの考え方を整理していきます。
なお、公的年金の仕組みや平均受給額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. 増えた収入の配分を決める前に|1階と2階で年金額の決まり方が違う
昇給や手当の増額で毎月の手取りが増えたとき、その分をどこに向けるかは、老後にどれだけの収入が見込めるかによって変わります。まず確かめておきたいのが、その土台にあたる公的年金の仕組みです。
制度の中身については、LIMOの記事「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」から要点を引用して確認します。
公的年金制度は、しばしば「2階建て構造」に例えられます。これは、日本の年金制度が「1階」の国民年金(基礎年金)と、「2階」の厚生年金という2つの制度で構成されているためです。
1階部分の国民年金は、原則として日本国内に居住する20歳以上60歳未満のすべての人が加入対象で、保険料は所得にかかわらず一律(2026年度は月額1万7920円)。保険料を40年間(480カ月)すべて納付すると、満額(2026年度は月額7万608円)を受け取ることができます。2階部分の厚生年金は、会社員や公務員のほか、パートタイマーなどで特定適用事業所に勤務し一定の要件を満たす人が国民年金に上乗せして加入します。保険料は収入に応じて変動し、受給額は加入していた期間や納付した保険料額によって個人差が生じます。
1階は保険料が全員同じで、納めた月数だけが金額を左右します。2階は収入に応じて保険料が変わり、そのぶん受け取る金額も動きます。つまり、いま昇給して収入が増えれば、その分は2階部分の年金額にも反映されていきます。
ただし、反映される幅には上限があります。厚生年金の保険料は標準報酬月額という区分にもとづいて計算され、その区分には上限が設けられているためです。収入が増えたからといって、年金額が同じ比率で伸び続けるわけではありません。ここが、増えた収入の一部を自分で積み立てておくという話につながる部分です。
2. 2026年度の年金額|国民年金1.9%・厚生年金2.0%の増額で土台はどこまで動いたか
年金の金額は、賃金や物価の動きをもとに毎年度見直されます。2026年度分は、国民年金(基礎年金)が1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%の増額となり、プラスの改定は4年度連続です。
- 国民年金(老齢基礎年金(満額)):7万608円(1人分 ※1)
- 厚生年金:23万7279円(夫婦2人分※2)
※1 昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額7万408円(対前年度比+1300円)です。
※2 男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。
ここで注意したいのは、23万7279円が夫婦2人分の金額であり、しかも一定の働き方を前提に計算されたものだという点です。ひとりあたりに置き換えれば水準はぐっと下がりますし、前提と異なる働き方をしてきた方の実際の金額は、この数字とは別のものになります。
1階部分だけの場合はどうでしょうか。国民年金は満額(※3)でも月額で約7万円です。受給開始を後ろ倒しにする繰下げ受給(※4)を上限の75歳まで使ったとしても、月額13万円には届きません。増えた収入の配分を考えるとき、この土台の高さが出発地点になります。
※3 国民年金(老齢基礎年金)の満額:国民年金保険料を480カ月納付した場合に、65歳から受け取れる年金額
※4 繰下げ受給:老齢年金の受給開始年齢を66歳~75歳までの間に後ろ倒しする制度。「繰下げ月数×0.7%」の増額率が適用され、75歳で受給開始した場合の増額率は84%。
3. 厚生年金「月額15万円以上」を受け取る人は49.8%にとどまる
制度の説明から、実際に受け取られている金額に目を移します。厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の男女全体の平均月額は「15万289円」です。なお、この金額には1階部分の国民年金(老齢基礎年金)の月額部分が含まれています。
3.1 平均月額15万289円という数字の中身
この15万289円は、2階部分だけを取り出した金額ではありません。1階の国民年金と2階の厚生年金を合わせた受取額の平均です。前の章で見たとおり、1階の満額は2026年度で月7万608円ですので、そこから上に積み上がっている部分が、現役時代の報酬と加入期間によって動くことになります。
言い換えると、この平均には「1階だけの人と条件が近い水準」から「2階が厚く積み上がった水準」までが同居しています。平均に自分を当てはめて考えると、実際の見込み額とずれてしまうことがあるのはこのためです。
3.2 受給額を1万円刻みで見たときの人数の広がり
平均という1つの数字の内側に、どのくらいの広がりがあるのかも見ておきましょう。受給額を1万円刻みで区切ったときの人数は、次のとおりです。
- 1万円未満:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
月額15万円以上を受け取っている人の割合は49.8%で、全体の半分には届きません。この点は「【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント」でも取り上げられています。厚生年金を受け取っていない人も含めて数えれば、割合はさらに下がります。
ご自身の見込み額は、ねんきん定期便やねんきんネットで確かめられます。その金額と、老後に想定する生活費との差がわかれば、いま増えた収入のうちどれだけを将来に向けておくかという判断の材料がそろいます。
世帯ごとの貯蓄額が平均と中央値でどれくらい違うのかについてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」
4. 【独自試算】増えた収入の3割・5割・全額を積立に回すと、20年後の到達額はどこまで変わるか
昇給や手当の増額で毎月の手取りが増えたとき、その何割を積立に回すかで、20年後の到達額はどのくらい変わるのでしょうか。ここでは1つの試算として数字を並べてみます。
前提は次のとおりです。
- 増えた収入:毎月の手取りが4万円増えた場合を想定
- 積立期間:20年(240カ月)
- 想定利回り:年3%。月利は年利を12で割るのではなく、1.03の12分の1乗から1を引いた約0.2466%を使用
- 毎月末に一定額を積み立て、分配金などは再投資されるものとする
- 税金・手数料・物価の変動は考慮しない
- 増えた分以外の家計は変えないものとする
この前提で、積立に回す割合を3通りに置き換えます。
- ケースA:増えた分の3割にあたる月1万2000円を積み立てる(元本288万円)→ 約392万円
- ケースB:増えた分の5割にあたる月2万円を積み立てる(元本480万円)→ 約654万円
- ケースC:増えた分の全額にあたる月4万円を積み立てる(元本960万円)→ 約1307万円
ケースAとケースBの差は約261万円です。20年間で上乗せした元本は192万円ですので、到達額の差はそれを約69万円上回りました。ケースAとケースCの差は約915万円で、こちらも上乗せした元本672万円を240万円あまり超えています。
上乗せした分が元本以上の差を生むのは、増やした金額も同じ20年間を運用に回ることになるためです。割合を1段階引き上げたときの効き方は、金額の大きさよりも「同じ期間だけ運用に回るかどうか」で決まっている、という見方ができます。
一方で、この試算はどの割合を選ぶべきかを示すものではありません。増えた分をすべて積立に向ければ到達額は最も大きくなりますが、そのぶん手元で自由に使えるお金は増えないままになります。急な支出があったときに積立を取り崩すことになれば、この試算の前提そのものが崩れます。逆に割合を低めにとどめておけば、家計に余裕を残したまま続けやすくなります。どちらが合うかは、家族構成や収入の安定度、当面の支出の見通しによって変わります。
また、割合を決めきれない場合に、まず低めの割合で始めて、家計の様子を見ながら増額していくという進め方もあります。増額のタイミングを次の昇給時に合わせておけば、手取りが減ったように感じにくいという面もあります。
※上記は一定の利回りが続いたと仮定した場合の目安であり、将来の運用成果を示すものではありません。実際の運用では価格が変動し、元本割れとなる可能性があります。税金・手数料は考慮していません。金額はいずれも概算です。
1つは、毎月出ていくお金のなかに、役割が重なっているものがないかという点です。同じ目的のための支払いが複数ある場合は、増えた分を足す前に整理できる余地が残っていることがあります。もう1つは、増えた分を役割ごとに分けて考えるという視点です。
当面動かさずに元本の安定を優先する資金、値動きを受け入れて収益を狙う資金、万一のときに家族の生活を支える保障。同じお金でも、担う役割が違えば置き方も変わります。
どの役割にどれだけ振り向けるかはご家庭の状況によって異なりますので、比率を先に決めるより、役割ごとに必要な額を並べてから配分を考えるという順番も一案です。
なお、値動きのある資産には元本割れの可能性があり、税制や制度の扱いは改正で変わることがあります。実際の手続きの前には、契約先の窓口や関連部署にご確認いただくと、判断しやすくなるでしょう。



