資産運用は目的別に分けて管理したほうがよいのか。そう聞かれる場面が、ここ数年で増えています。
夏の賞与が出そろい、まとまったお金の置き場所を考える方が多くなる時期です。あわせて2026年度は年金額が増額改定された年にあたり、改定後の金額で振込が続いています。老後に向けた資金の置き方を考えるうえで、公的年金でどこまでまかなえるのかは、区分を引くための最初の目盛りになります。
この記事では、60歳から90歳以上までの平均年金月額を年齢別・男女別に一覧で確認したうえで、手元の資金を目的別に区分するという考え方を整理していきます。
なお、公的年金の仕組みや年代別・全体の平均年金額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. 資金を目的別に分ける前に、公的年金でまかなえる範囲を区分する
目的別の管理がうまく回らないというご相談を伺うと、区分そのものが引けていないことが多いものです。何にいくら使うのかという見通しはあっても、そのうちどこまでを公的年金が受け持ってくれるのかが空欄のままだと、自分で用意すべき部分の輪郭が出てきません。まずは受け持ちの範囲を決める側、つまり公的年金の仕組みを、【2026年最新版】老齢年金一覧表「60歳代・70歳代・80歳代・90歳以上」の平均年金月額はいくら?手取りのリアルと5つの公的給付金から要点を引用して確認しておきます。
日本の公的年金は、2階建て構造で、1階部分が国民年金(基礎年金)、2階部分が厚生年金(会社員・公務員)となっています。国民年金は、20歳以上60歳未満のすべての人が対象となる基礎的な年金制度です。自営業やフリーランス、学生などが主に加入し、保険料は自分で納めます。受給額は加入期間に応じて決まりますが、満額でも月約7万円程度が目安です。
厚生年金は、会社員や公務員が加入する年金制度で、国民年金に上乗せして支給されます。保険料は給与から天引きされ、収入や加入期間によって将来の受給額が変わります。
1階は加入期間だけで金額が決まる部分、2階は加入期間と報酬の両方で動く部分。この2つは同じ「年金」という言葉でくくられていても、決まり方がまったく別のものです。区分という観点でいえば、公的年金は最初から2つの区分に分かれた仕組みだといえます。
続いて、2026年度の年金額がどう動いたのかも押さえておきます。
2026年度の年金額は、国民年金が前年度比1.9%増、厚生年金(報酬比例部分)が同2.0%増の増額改定となりました。国民年金(満額・1人分)は月額7万608円、厚生年金(モデル夫婦世帯・2人分)は月額23万7279円です。
ただし「ねんきん定期便」などに記載された金額は税金や社会保険料が引かれる前の「額面」であるため、実際の手取り額はこれより少なくなります。
区分を引くときに効いてくるのが、最後の一文です。額面のまま「年金でまかなう分」を見積もると、その区分を実際より大きく置いてしまいます。手取りで見ておくほうが、自分で用意する側の区分が現実の大きさに近づきます。
2. 【厚生年金の一覧表】年齢ごとの平均月額で「年金でまかなう分」を測る
ここからは、いま年金を受け取っている世代の実額を年齢ごとに追っていきます。用いるのは、厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」のデータです。
先に厚生年金(国民年金部分を含む)を見ます。ご自身の見込み額と並べたときに、どのあたりに位置するのかを測る物差しとしてご覧ください。
2.1 【60歳代】厚生年金の平均月額は65歳を境に一段上がる
- 60歳:9万9664円
- 61歳:10万4455円
- 62歳:10万9323円
- 63歳:6万8758円
- 64歳:8万3901円
- 65歳:14万9862円
- 66歳:15万2378円
- 67歳:15万2356円
- 68歳:15万2709円
- 69歳:15万1284円
※65歳未満の厚生年金受給者は、特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢が引き上げられたため、報酬比例部分のみ受給している方も含む。
63歳と64歳がへこんだ形になっていますが、これは金額が減ったのではなく、その年齢で集計されている人の顔ぶれが他の年齢と違うためです。65歳のところで水準が切り替わり、そこから69歳までは15万円前後にそろっています。
2.2 【70歳代】厚生年金の平均月額は10年を通じてほぼ同じ水準
- 70歳:15万455円
- 71歳:14万8371円
- 72歳:14万6858円
- 73歳:14万5583円
- 74歳:14万7774円
- 75歳:15万1410円
- 76歳:15万1241円
- 77歳:15万962円
- 78歳:15万862円
- 79歳:15万3115円
70歳から79歳までの10年間は、14万円台後半から15万円台前半という狭い帯に収まっています。区分を引く側から見れば、老後の長い期間にわたって同じ水準の受け持ちが続くと見込める、ということになります。
2.3 【80歳代】厚生年金の平均月額が16万円台に届く年齢
- 80歳:15万3729円
- 81歳:15万5460円
- 82歳:15万7744円
- 83歳:15万9994円
- 84歳:16万2555円
- 85歳:16万3947円
- 86歳:16万5577円
- 87歳:16万5557円
- 88歳:16万6200円
- 89歳:16万6767円
84歳から上の年齢では16万円台に入り、89歳では16万円台後半に届いています。高齢になるほど年金が積み増される仕組みがあるわけではなく、それぞれの世代が現役だった時期の賃金水準や加入状況の違いが、平均値の形として表れたものと考えられます。
2.4 【90歳以上】厚生年金の平均月額はひとまとめの数字で示される
- 90歳以上:16万4027円
受給が始まる標準的な年齢は65歳です。65歳より上のどの年齢を切り取っても、厚生年金の平均月額は14万円台から16万円台の幅に収まっていました。「年金でまかなう分」という区分の大きさを見積もるとき、この帯を頭に置いておくと見当がつけやすくなります。
3. 【国民年金の一覧表】年齢が変わってもほとんど動かない平均月額
次は国民年金(老齢基礎年金)です。厚生年金とは金額の動き方が異なりますので、その違いに注目しながらご覧ください。
3.1 【60歳代】国民年金の平均月額は65歳前後で区分が変わる
- 60歳:4万5186円
- 61歳:4万6371円
- 62歳:4万7784円
- 63歳:4万7258円
- 64歳:4万7896円
- 65歳:6万1240円
- 66歳:6万1369円
- 67歳:6万1345円
- 68歳:6万1293円
- 69歳:6万978円
※65歳未満の国民年金(老齢基礎年金)受給者は繰上げ受給を選択した方。
64歳までが4万円台にとどまっているのは、集計の対象が繰上げ受給を選んだ方に限られるためです。65歳から6万円台に切り替わり、そこから先の年齢では金額がほとんど動きません。
3.2 【70歳代】国民年金の平均月額は6万円台から5万円台へ移る
- 70歳:6万1011円
- 71歳:6万770円
- 72歳:6万234円
- 73歳:6万32円
- 74歳:5万9813円
- 75歳:5万9659円
- 76歳:5万9555円
- 77歳:5万9349円
- 78歳:5万9124円
- 79歳:5万8676円
74歳のところで6万円台から5万円台に移りますが、70歳から79歳までの10年間で見た差は2000円台にとどまります。厚生年金に比べれば、動きはごくわずかです。
3.3 【80歳代】国民年金の平均月額は狭い範囲に収まる
- 80歳:5万8623円
- 81歳:5万8269円
- 82歳:5万8003円
- 83歳:5万7857円
- 84歳:5万9675円
- 85歳:5万9425円
- 86歳:5万9228円
- 87歳:5万9204円
- 88歳:5万8756円
- 89歳:5万8572円
80歳代は5万7000円台から5万9000円台という、さらに狭い範囲に収まっています。年齢による違いはほとんど見当たりません。
3.4 【90歳以上】国民年金の平均月額もひとまとめの数字
- 90歳以上:5万5633円
65歳以降の国民年金の平均月額は、どの年齢でも5万円台から6万円台に収まっていました。金額の幅が狭いぶん、「年金でまかなう分」という区分の大きさは見積もりやすいといえます。
4. 男女別の平均と受給額分布|「年金でまかなう分」の幅は人によって違う
年齢別の一覧に続いて、60歳から90歳以上までの受給権者をひとまとめにした平均額と、受け取っている金額ごとの人数分布も見ておきます。区分の引き方が人によって違ってくる理由は、この分布に表れています。
4.1 厚生年金の男女別平均|1つの平均では収まらない広がり
- 〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※上記の金額には、国民年金(老齢基礎年金)の部分が含まれます。
厚生年金の受給額分布|1万円刻みの人数
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
全体の平均は15万289円でした。男性16万9967円に対して女性11万1413円と、6万円近い開きがあります。分布を見ると、9万円台から19万円台までのどの区分にも90万人以上が入っており、特定の金額に山があるというより、広い帯に人が散らばっている形です。
4.2 国民年金の男女別平均|満額に近い層が大半を占める
- 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
国民年金の受給額分布|1万円刻みの人数
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
国民年金は全体で5万円台、男女差も4000円ほどにとどまります。分布はさらに偏っており、「6万円以上~7万円未満」だけで1700万人を超え、満額に近いところに人が集まっています。
厚生年金は広く散らばり、国民年金は一点に集まる。この形の違いは、区分の引きやすさの違いでもあります。厚生年金が中心の方は、自分がどの帯にいるかを確かめないと「年金でまかなう分」の大きさが決まりません。国民年金が中心の方はその部分が早く固まるぶん、自分で用意する資金をどう仕分けるかに話を進められます。
元本の安定を優先する置き場と、値動きを受け入れる置き場で結果がどう変わるかについてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
【月3万円×20年】預金と新NISAの資産差はいくら?「利回り5%の積立投資 VS 金利0.3%の銀行預金」シミュレーションで徹底比較
5. 【独自試算】同じ積立額を使う時期で3つに区分すると、結果はどこまで変わるか
ここからは、同じ総額を「使う時期の違う3つの目的」に分けたとき、置ける期間の違いで結果がどう変わるのかを試算してみます。前提を置いた目安の計算であり、将来の結果を約束するものではありません。
前提は次のとおりです。
- 毎月3万円を、目的の違う3つの区分に1万円ずつ振り分ける
- 区分A:5年後に使う予定のある資金(60カ月)
- 区分B:15年後を想定した資金(180カ月)
- 区分C:25年後の老後を想定した資金(300カ月)
- 想定利回りは3つとも年3%(税金・手数料は考慮しない)
- 毎月末に一定額を積み立て、途中で引き出さない
- 月あたりの利回りは、年利を12で割るのではなく、1に年利を足した数の12分の1乗から1を引いて求める
この前提で計算すると、結果は次のようになりました。
- 区分A(5年):元本60万円に対して約64万6000円。増えた分は約4万6000円で、元本の約7.6%にあたる
- 区分B(15年):元本180万円に対して約226万2000円。増えた分は約46万2000円で、元本の約25.7%
- 区分C(25年):元本300万円に対して約443万5000円。増えた分は約143万5000円で、元本の約47.8%
- 3つの合計:元本540万円に対して約734万3000円
毎月の金額も想定利回りも3つとも同じです。違うのは、使うまでに置いておける期間だけです。それでも増えた分は、区分Aの約4万6000円から区分Cの約143万5000円まで開きます。同じ1万円でも、区分によって期待できる役割がまったく違う、ということが数字の形で表れています。
ここから読み取っていただきたいのは、区分Cが得だという話ではありません。5年後に使う予定のある区分Aは、期間が短いぶん増える余地も小さく、そのうえ値下がりしたときに回復を待つ余裕もありません。使う時期が近い資金ほど、元本の安定を優先する置き場が向くという整理になります。反対に、25年先まで手をつけない区分Cは、途中の上下を受け入れる余地が比較的あります。目的別に分けるという作業は、この「置ける期間」で置き場の性格を仕分けることだといえます。
なお、年3%という想定利回りは計算のための仮の数字にすぎません。実際の運用では価格が上下し、元本割れが起こることもあります。毎年きっちり同じ率で増えていく運用は存在しませんので、上の金額は途中経過を均した目安としてご覧ください。利回りが想定を下回れば到達額は小さくなり、上回れば大きくなります。
※この試算は上記の前提を置いた概算です。税金・手数料・物価の変動は考慮していません。将来の運用成果を示すものではなく、必要な金額や適した区分の引き方は、生活費や家族構成、受け取る年金額によって一人ひとり異なります。




