公的年金は偶数月に支給されるため、8月は年金の振込がある月です。2026年度の年金額は4年連続のプラス改定となり、その金額は6月支給分から反映されています。
年金額のニュースが流れると、現役世代のあいだでは「老後資金はいくら用意しておけばよいのか」という話題が出やすくなります。目標額を決めて積立を始めてみたものの、計算してみると今のペースでは届かない。そこで手が止まってしまう方は少なくありません。
この記事では、2026年度の年金額と、60歳から90歳以上まで実際に受け取られている金額の一覧を確認したうえで、そこから老後資金の目標額をどう組み立てるかを整理していきます。
なお、公的年金の仕組みや年代別・全体の平均年金額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. 目標額を決める前に|公的年金という土台がどう組み上がっているか
老後資金の目標額は、必要な生活費から公的年金などの収入を差し引いた残りとして計算するのが基本の形です。つまり、土台にあたる公的年金の水準が変われば、目標額そのものも変わります。目標額に届かないという結論の前に、まずは土台の組み立てを確かめておきたいところです。
制度の骨格については、LIMOの記事「【2026年最新版】老齢年金一覧表「60歳代・70歳代・80歳代・90歳以上」の平均年金月額はいくら?手取りのリアルと5つの公的給付金」から要点を引用して確認しておきましょう。
日本の公的年金は、2階建て構造で、1階部分が国民年金(基礎年金)、2階部分が厚生年金(会社員・公務員)となっています。国民年金は、20歳以上60歳未満のすべての人が対象となる基礎的な年金制度です。自営業やフリーランス、学生などが主に加入し、保険料は自分で納めます。受給額は加入期間に応じて決まりますが、満額でも月約7万円程度が目安です。
厚生年金は、会社員や公務員が加入する年金制度で、国民年金に上乗せして支給されます。保険料は給与から天引きされ、収入や加入期間によって将来の受給額が変わります。
1階の国民年金は、納めた月数だけで受給額が決まります。2階の厚生年金は、加入していた期間と現役時代の収入によって金額が動きます。同じ年齢でも受け取る金額に差が生まれるのは、この2階部分の積み上がり方が人それぞれ違うためです。土台が厚い方は目標額が小さくなり、薄い方は大きくなる。目標額が人によって違うのは、努力の量ではなく、この構造の違いによるところが大きいといえます。
2. 2026年度の年金額|4年連続のプラス改定で土台はどこまで動いたか
2026年度の年金額の例として、厚生労働省は次の金額を公表しています。
- 国民年金(老齢基礎年金(満額)):7万608円(1人分※1)
- 厚生年金:23万7279円(夫婦2人分※2)
※1 昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額7万408円(対前年度比+1300円)です。生まれた年によって受給額が異なります。
※2 男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。
厚生年金の23万7279円は、夫婦2人分を合計した金額です。注釈にあるとおり、「40年間会社員として月額45万5000円を稼いだ夫の厚生年金と国民年金」と「40年間第3号被保険者(もしくは自営業など)だった妻の国民年金」を前提としています。共働き世帯や単身世帯、自営業の方など働き方が多様化している現在では、この前提に当てはまる方のほうがむしろ限られます。あくまで1つの指標であり、実際の受給額は加入状況によって一人ひとり大きく異なる点に留意が必要です。
なお2025年度(令和7年度)の厚生年金(夫婦2人分)は23万2784円でした。今回で4年度連続のプラス改定となります。国民年金の満額も、2025年度の6万9308円から増額しています。改定の内容については【2026年最新】60歳~89歳の年金一覧表!年代別の平均受給額と「手取り・非課税世帯」のリアル!年金口座の「凍結リスク」とは?でも解説されています。
3. 【厚生年金の一覧表】60歳から90歳以上|受け取っている人の実際の月額
モデル世帯の金額を確認したところで、今のシニア層が実際に受け取っている金額も見ていきます。厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、年齢ごとの平均年金月額を一覧で確認します。【2026年最新】60歳~89歳の年金一覧表!年代別の平均受給額と「手取り・非課税世帯」のリアル!年金口座の「凍結リスク」とは?でも同じデータが整理されています。
はじめに厚生年金(1階部分の国民年金を含む)を確認します。
3.1 60歳代|繰上げ受給などが混じるため若い年齢ほど低く出る
- 60歳:9万9664円
- 61歳:10万4455円
- 62歳:10万9323円
- 63歳:6万8758円
- 64歳:8万3901円
- 65歳:14万9862円
- 66歳:15万2378円
- 67歳:15万2356円
- 68歳:15万2709円
- 69歳:15万1284円
※65歳未満の厚生年金受給者は、特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢が引き上げられたため、報酬比例部分のみ受給している方も含む。
65歳未満と65歳以降で水準が大きく変わっています。64歳までは報酬比例部分だけを受け取っている方や、繰上げ受給を選んだ方が混じるため、平均が低く出ます。目標額を計算するときの基準にするのであれば、65歳以降の水準のほうが実態に近いといえます。
3.2 70歳代|15万円前後で横ばいに推移する平均月額
- 70歳:15万455円
- 71歳:14万8371円
- 72歳:14万6858円
- 73歳:14万5583円
- 74歳:14万7774円
- 75歳:15万1410円
- 76歳:15万1241円
- 77歳:15万962円
- 78歳:15万862円
- 79歳:15万3115円
70歳代はどの年齢も14万円台から15万円台に収まっており、大きな段差は見当たりません。老後の期間を通じて公的年金の水準がほぼ変わらないということは、生活費のほうが増えれば、その分が不足として表に出てくるということでもあります。
3.3 80歳代|年齢が上がるほど平均が高くなる年代
- 80歳:15万3729円
- 81歳:15万5460円
- 82歳:15万7744円
- 83歳:15万9994円
- 84歳:16万2555円
- 85歳:16万3947円
- 86歳:16万5577円
- 87歳:16万5557円
- 88歳:16万6200円
- 89歳:16万6767円
80歳から89歳にかけては、年齢が上がるほど平均が高くなる形になっています。現役時代の賃金水準や年金制度の変遷が、世代ごとに違う形で反映されているためと考えられます。
3.4 90歳以上|16万円台にとどまる平均月額
- 90歳以上:16万4027円
標準的な受給開始年齢である65歳以降で見ると、厚生年金の平均年金月額は14万円台から16万円台の範囲に収まっています。目標額を試算する際の土台としては、この幅を1つの手がかりにできます。
4. 【国民年金の一覧表】60歳から90歳以上|1階部分だけの場合の月額
続いて、国民年金(老齢基礎年金)だけを受け取っている方の平均年金月額を年齢別に見ていきます。自営業やフリーランスとして働いてきた方、厚生年金への加入期間が短い方は、こちらの水準が土台になります。
4.1 60歳代|65歳で6万円台に乗る平均月額
- 60歳:4万5186円
- 61歳:4万6371円
- 62歳:4万7784円
- 63歳:4万7258円
- 64歳:4万7896円
- 65歳:6万1240円
- 66歳:6万1369円
- 67歳:6万1345円
- 68歳:6万1293円
- 69歳:6万978円
※65歳未満の国民年金(老齢基礎年金)受給者は繰上げ受給を選択した方。
64歳までの4万円台は、繰上げ受給によって減額された金額です。繰上げは一度選ぶと生涯にわたって減額が続く仕組みですので、目標額を埋める手段として検討する場合は、その点も含めて考えることになります。
4.2 70歳代|緩やかに下がっていく平均月額
- 70歳:6万1011円
- 71歳:6万770円
- 72歳:6万234円
- 73歳:6万32円
- 74歳:5万9813円
- 75歳:5万9659円
- 76歳:5万9555円
- 77歳:5万9349円
- 78歳:5万9124円
- 79歳:5万8676円
70歳から79歳にかけて、平均月額は6万円台から5万円台へと緩やかに下がっています。厚生年金のように大きく上下する動きはなく、ほぼ横一線といえる並びです。
4.3 80歳代|5万円台後半で推移する平均月額
- 80歳:5万8623円
- 81歳:5万8269円
- 82歳:5万8003円
- 83歳:5万7857円
- 84歳:5万9675円
- 85歳:5万9425円
- 86歳:5万9228円
- 87歳:5万9204円
- 88歳:5万8756円
- 89歳:5万8572円
80歳代も5万円台後半でほぼ一定です。国民年金は保険料が一律で、納めた月数だけで金額が決まるため、年齢による差が出にくくなっています。
4.4 90歳以上|5万5633円という平均月額
- 90歳以上:5万5633円
65歳以降で見ると、国民年金の平均年金月額は5万円台から6万円台にとどまります。厚生年金の水準とは10万円近い開きがあり、土台の厚さの違いがそのまま目標額の差につながります。
5. 男女別の平均と受給額分布|「不足」の大きさが人によって違うわけ
年齢別の一覧に続いて、60歳から90歳以上のすべての受給権者を対象とした平均年金月額と、受給額の分布も見ておきます。平均という1つの数字の内側に、どのくらいの広がりがあるのかを確かめる作業です。
5.1 厚生年金|男女で約6万円ひらく平均年金月額
- 〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※上記の金額には1階部分にあたる国民年金が含まれます。
1万円刻みで見た受給権者数
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
厚生年金の全体平均は15万289円ですが、男性16万9967円、女性11万1413円と、男女で6万円近い開きがあります。分布を見ても、9万円台から19万円台までの各階級に100万人前後ずつが分かれて並んでおり、平均のまわりに人が集中しているわけではありません。
5.2 国民年金|男女差の小さい平均年金月額
- 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
1万円刻みで見た受給権者数(国民年金)
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
国民年金の全体平均は5万9310円で、男性が6万円台、女性が5万円台と、男女差は4000円ほどにとどまります。分布も「6万円以上~7万円未満」に大きく偏っており、多くの方が満額に近い金額を受け取っていることが読み取れます。
2つの分布を並べると、厚生年金は広く散らばり、国民年金は1カ所に集まるという対照的な形になります。そして、これらはいずれも額面です。ここから介護保険料や国民健康保険料、所得税・住民税が差し引かれるため、手元に残る金額はさらに小さくなります。
ご自身の見込み額がわかれば、想定する生活費との差、つまり老後に自分で用意しておきたい金額が計算できます。それが目標額です。そして、その目標額に今の積立ペースで届くかどうかを確かめると、多くの場合、何らかの差が出てきます。
毎月の積立額と想定利回りによって将来の金額がどう変わるかについてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
新NISAで毎月3万円を20年積み立てたらどうなる?利回り3%・5%のシミュレーション結果を大公開【2025年の買付額は約71兆円】
6. 【試算】目標に届かないときの3つの調整|毎月額・期間・目標額を動かすと結果はどう変わるか
目標額を決めて積立を始めてみたものの、このペースでは届かないとわかった。相談の場でよく生じるのがこの場面です。ここで動かせるところは、大きく分けて3つあります。毎月の積立額、積み立てる期間、そして目標額そのものです。それぞれを動かすと結果がどう変わるのかを、目安として並べてみます。
前提は次のとおりです。
- 目標額:1500万円
- 現在の積立額:毎月4万円
- 積立期間:20年(240カ月)
- 想定利回り:年3%。月利は年利を12で割るのではなく、1.03の12分の1乗から1を引いた約0.2466%を使用
- 毎月末に積み立て、分配金などは再投資されるものとする
- 税金・手数料・物価の変動は考慮しない
この前提のまま毎月4万円を240カ月続けると、20年後は約1307万円です。目標の1500万円には約193万円届きません。ここから3つの調整を並べます。
- 調整1・毎月の積立額を増やす:毎月4万円を約4万6000円(月およそ6000円の増額)にすると、20年後は約1504万円。期間も目標額も変えずに済みますが、そのぶん毎月の家計から出ていく金額が増えます。
- 調整2・積み立てる期間を延ばす:毎月4万円のまま266カ月(22年2カ月)まで、およそ2年2カ月延ばすと約1501万円。毎月の負担は変わりませんが、そのぶん取り崩しを始める時期が後ろにずれます。
- 調整3・目標額を下げる:目標額を1500万円から約1310万円へ、およそ190万円下げると、毎月4万円・20年のままで到達額とほぼ重なります。積立の負担は変わりませんが、老後に想定する生活費や取り崩しの計画を組み直すことになります。
3つは、どれか1つを選ばなければならないものではありません。組み合わせることもできます。たとえば毎月4万3000円(月およそ3000円の増額)にしたうえで、期間を1年延ばして21年(252カ月)にすると、20年ではなく21年後に約1500万円という計算になります。増額幅は調整1のおよそ半分、延長幅は調整2のおよそ半分です。
この試算からいえるのは、目標に届かないという結論そのものは、動かせない事実ではないということです。目標額は生活費の想定から出た数字ですし、期間は働き方や退職の時期と結びついた数字です。積立額だけを見て「もっと出さなければ」と考えると選択肢が1つになりますが、3つを並べると、どこがご自身にとって動かしやすいかという問いに変わります。
どれを動かしやすいかは、家計の余力、勤め先の定年や再雇用の制度、家族構成によって変わります。この記事はどの調整をすすめるものではなく、比べるための材料として3つを並べたものです。
※上記は一定の利回りが続いたと仮定した場合の目安であり、将来の運用成果を示すものではありません。実際の運用では価格が変動し、元本割れとなる可能性があります。税金・手数料は考慮していません。金額はいずれも概算です。
試算で示された3つの調整は、いずれも家計の別の場所に影響が出ます。毎月の積立額を増やせば手元に残る金額が減りますし、期間を延ばせば取り崩しの開始が遅くなります。目標額を下げる場合は、その前提となる生活費の見積もりを組み直すことになります。どれが向いているかは、収入の安定度や働く期間の見通しによって変わってきます。
また、この試算は一定の利回りが続いたと仮定した場合の目安です。実際の運用では価格が変動しますので、想定どおりに進むとは限らず、元本割れとなる可能性もあります。目標額に届くかどうかを1つの数字で判断するのではなく、前提を変えたときにどのくらい動くのかという幅で見ておく、という考え方もあります。
なお、税制や社会保険の取り扱いは改正されることがあります。ご自身の状況に当てはめて判断される際は、最新の内容を関連する窓口や専門家にご確認いただいたうえで進めていただければと思います。




