4. どちらか一方を選ぶ

両方の要件を満たす場合の扱いです。

4.1 併給はできない

日本年金機構は、寡婦年金を受けられる場合はどちらか一方を選択するとしています。両方を受け取ることはできません。

寡婦年金は60歳から65歳になるまでの5年間にわたって受け取る年金、死亡一時金は12万円から32万円の一時金です。受け取る期間も形も違うため、単純な金額の比較にはなりません。

4.2 判断には試算が要る

寡婦年金の額は、夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3です。夫の納付期間によって変わるため、どちらが有利かは個別に計算しないと分かりません。

妻の年齢によっても変わります。すでに60歳に近ければ寡婦年金を長く受け取れますが、まだ若ければ受給開始まで間が空きます。年金事務所で試算してもらうのが確実です。

5. 令和7年の法律改正による留意事項

死亡一時金には、いま特に注意すべき点があります。

5.1 令和10年4月1日から子の扱いが変わる

日本年金機構によると、令和10年4月1日以後は、生計を同じくする父または母がいる場合であっても、子は遺族基礎年金の支給を受けることができるようになります。

現在は、子に遺族基礎年金が発生する場合でも、その子と生計を同じくする遺族基礎年金の受給権を有しない父または母がいると、子の遺族基礎年金は支給停止されます。その場合、その父または母は死亡一時金を受け取ることができるという扱いです。

5.2 いま受け取ると停止が続く

ただし機構は、令和8年4月1日から令和10年3月31日までに権利が発生した死亡一時金を父または母が受け取った場合、生計を同じくする子の遺族基礎年金は引き続き支給停止されると注意を促しています。

つまり、いまこの期間に死亡一時金を受け取ると、令和10年4月以降も子の遺族基礎年金が止まったままになります。12万円から32万円の一時金と、子が受け取れるはずの遺族基礎年金を比べて判断する場面が出てきます。該当しそうな場合は、必ず年金事務所に確認してください。

6. 第1号被保険者だけの給付

この2つの位置づけです。

6.1 独自給付と呼ばれる

寡婦年金と死亡一時金は、付加年金とあわせて第1号被保険者の独自給付と呼ばれます。会社員や公務員が加入する第2号被保険者には用意されていない仕組みです。

会社員の家庭であれば遺族厚生年金があります。自営業やフリーランスの家庭では、遺族基礎年金の対象にならなければ何も受け取れないという事態が起こりうるため、その隙間を埋めるために置かれています。

7. まとめにかえて

寡婦年金は、第1号被保険者として保険料を納めた期間と免除期間が10年以上ある夫が亡くなったとき、10年以上継続して婚姻関係にあり生計を維持されていた妻が、60歳から65歳になるまで受け取れます。額は夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3です。

死亡一時金は、納めた月数が36月以上ある方が老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま亡くなったときに、生計を同じくしていた遺族へ12万円から32万円が支給されます。時効は死亡日の翌日から2年です。

両方の要件を満たすときは一方を選びます。令和8年4月1日から令和10年3月31日までの死亡一時金には子の遺族基礎年金に関わる注意点があるため、年金事務所で確認してみてください。

参考資料

村岸 理美