5. 1Qの増収26%は、制御機器と血圧計の同時回復で起きた

直近の決算を数字で押さえておく。2027年3月期1Qの売上収益(IFRS)は2,098億円で、前年同期比+26.1%だった。

営業利益は188億円で+226.0%。親会社の所有者に帰属する四半期利益は106億円で+131.1%と、いずれも大幅な増益になっている。

会社によれば、売上収益・営業利益ともに前年同期および期初の想定を大きく上回って進捗した。制御機器事業では、AI需要を背景とした半導体投資やデータセンター向けの二次電池投資を着実に捉えたことに加え、代理店とのリレーション強化や新商品の拡充による顧客基盤の拡大が効いたという。

そしてヘルスケア事業である。主力の血圧計で日本・アジアのオンライン向け販促施策が奏功し、前年同期を大きく上回ったとしている。前期に減益で沈んだ事業が、四半期単位では反転しているわけだ。

社会システム事業は蓄電システムが低調だったものの、鉄道事業やマネジメント・サービス事業が堅調に推移し、前年同期並みの水準となった。

この勢いを受けて、会社は2027年3月期通期の営業利益を800億円と見込んでいる。2026年3月期の実績599億円からの積み上げであり、強気の絵と言っていい。年間配当も前期の104円に対し110円を予想している。

財務面では、1Q末の自己資本比率が60.1%、四半期の営業キャッシュ・フローは639億円だった。増益の中身が資金の裏付けを伴っている点は確認できる。

6. 利益率は業種中央値の上、資本効率は下という二面性

制御機器や精密機器と聞くと、高い付加価値で稼ぐ会社という印象が先に立つ。実際、2026年3月期の営業利益率は7.8%で、電気機器の業種中央値6.7%を上回っている。

ところが資本効率の方は逆を向く。同じ期のROE(自己資本利益率)は3.5%、ROIC(投下資本利益率)は3.0%だった。継続事業ベースで測り直してもROE4.7%、ROIC3.9%である。電気機器のROE中央値7.4%には届かない。

マージンは中位より上、資本効率は中央値割れ。この二つは矛盾しているように見えて、同じ決算の中で同時に成立している。

分母の重さが効いているとみるのが自然だろう。2026年3月末の総資産は1兆5,162億円で、うちのれんが3,742億円を占める。買収で広げた事業がバランスシートに厚く残り、投下資本の回転を鈍らせている構図が読み取れる。

この点は会社自身も認めている。構造改革プログラムの総括として、2年間で固定費を2023年度比で約350億円削減し2年連続の増収増益を達成した一方、売上高・営業利益ともに過去最高水準に到達しておらず、ROICやROEなどの指標が資本コストを下回る水準にあるため、収益・成長基盤の再構築は道半ばだとしている。

そのうえで2027年3月期はROE5.5%程度、ROIC4.0%程度を目標に置く。自己資本比率は2026年3月末で55.1%と、電気機器の中央値62.2%より低い。負債を使う余地が残っているかどうかは、資本効率を語るうえで避けて通れない論点になる。

7. 筆者コメント

収益の重心が動こうとしている局面だと読み取れる。制御機器の回復が牽引役であることは間違いないが、この会社の変化はそこだけで起きているわけではない。

健康の事業が、機器を売る形からデータを扱う形へ広がった。駅の設備は旅客の戻りとともに投資需要を取り戻した。どちらも制御機器の設備投資サイクルとは別の時計で動いている。

そう考えると、資本効率が中央値を下回っている現状も、単なる非効率とは言い切れない。買収で積み上げた資産が利益として回り始めるまでの時間差を、いま抱えている段階と見ることもできる。

もっとも、時間差なのか回収し損ねているのかは、外から見て区別がつきにくい。判断材料になるのは、事業ごとの利益の伸びが投下した資本に見合って続くかどうかだろう。

四半期の増減率よりも、セグメント利益と投下資本の関係を数期にわたって並べる。そういう物差しで追いかけることをおすすめしたい。

参考資料

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石津 大希