4. 連結純資産の27%が非支配持分。グループの形が数字に出ている

連結決算の規模と、株主が受け取る取り分は同じではない。この会社ではその差がはっきり数字に出る。

2026年3月期末の連結純資産は2兆4,146億円ある。ただしそのうち親会社の所有者に帰属する持分は1兆7,616億円で、残りの6,530億円は非支配持分だ。

比率にすると純資産の27.0%が、親会社の株主以外に帰属している。連結の見た目より、株主の取り分は小さいということになる。

5期並べると、この比率が上がってきた過程が見える。非支配持分は2022年3月期末の3,862億円から、4,237億円、5,120億円、5,439億円と増え、2026年3月期末には6,530億円になった。

同じ期間の親会社の所有者に帰属する持分は1兆4,580億円から1兆7,616億円へ増えている。伸びの速さは非支配持分のほうが上だ。

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出所:三菱ケミカルグループ株式会社 有価証券報告書をもとに筆者作成

出所:三菱ケミカルグループ株式会社 有価証券報告書をもとに筆者作成

総合化学と聞くと、まず連結売上収益の大きさが思い浮かぶ。だが図が示すのは、その大きさのうち株主の取り分に入らない部分が増えてきたという事実だ。

PBR0.87倍という値付けは、この構造と切り離して考えにくい。連結の規模ではなく親会社に帰属する純資産を分母に置いたとき、市場はまだ1倍を付けていない。

財務の厚みも業種のなかでは薄い。2026年3月期末の自己資本比率は30.0%で、化学158社の中央値64.4%を大きく下回る。有利子負債は1兆8,905億円、のれんは8,910億円ある。

5. 上場子会社を抱えたまま、医薬を切り離した資本の組み替え

では、非支配持分はどこから来ているのか。有価証券報告書の関係会社の状況を開くと、答えの一部が見える。

2025年3月31日時点で、中核の三菱ケミカルは議決権100%の連結子会社だ。一方、産業ガスを担う日本酸素ホールディングスの議決権は50.7%にとどまる。

日本酸素ホールディングスは化学業種の上場企業であり、その傘下に議決権100%の大陽日酸を持つ。上場子会社を過半でだけ握るという形が、そのまま非支配持分になっている。

ほかにも日本ポリエチレンは58%、日本ポリプロは65%と、100%に届かない連結子会社が並ぶ。基礎石化原料を扱う三菱ケミカル旭化成エチレンは議決権50%の関連会社だ。

この構図が固定されているわけではない。会社によれば、連結子会社だった田辺三菱製薬(現社名 田辺ファーマ)の全株式および関連資産を吸収分割により譲渡する契約が2025年6月25日の定時株主総会で承認され、同社およびその子会社等の事業は2025年7月1日付で譲渡された。

譲渡した事業は非継続事業に分類されている。売上収益が前期比で減った背景には、この切り離しがある。

従業員数の動きも同じ方向を示す。2025年3月期の63,258人から2026年3月期は56,678人へ減っており、医薬事業の切り離しが効いたと考えられる。

現金の動きも整合している。2026年3月期の投資キャッシュフローは1,244億円のプラスで、営業キャッシュフロー4,362億円と合わせて、財務キャッシュフローは▲3,752億円だった。

有利子負債は2025年3月期末の2兆409億円から1兆8,905億円へ減っている。事業を売って得た現金が、負債の圧縮に回った姿と読み取れる。

組み替えはまだ続いているようだ。2026年4月には特定子会社の異動に関する開示も出ており、グループの形は動いたままにある。

6. 筆者コメント

化学業種のなかでの立ち位置に照らすと、この会社の数字はどれも中央値から遠い側にある。

ROE(自己資本利益率)は0.7%で中央値の6.5%を大きく下回り、営業利益率0.8%も中央値6.8%に届かない。自己資本比率30.0%は中央値64.4%の半分以下だ。

ただし、こうした比率の低さは事業の弱さだけでは説明できない。分母の側に、過半でしか握っていない上場子会社の資産と、買収で積んだのれんが乗っている。

連結の比率指標は、グループの持ち方の影響を受ける。100%子会社ばかりの会社と、上場子会社を50%台で連結する会社を、同じ物差しで並べても実像は掴めない。

だからこの銘柄では、比率よりも構造を先に見る順番が効く。関係会社の状況の1ページと、純資産の内訳。この2つを押さえてから比率に戻ることを勧めたい。

参考資料

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石津 大希