連結の売上収益が3兆円台と聞けば、それだけで大きな会社だと感じる。三菱ケミカルグループ(4188)はまさにその規模を持つ総合化学だが、株価はPBR1倍を下回ったまま静かに推移している。

規模の大きさと、株主が受け取る取り分は同じではない。その差は、グループの形にあらわれている。

※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

ココがポイント
  • 2027年3月期の営業利益予想は3,000億円で、前期の300億円から大きく戻る計画
  • 株価は直近1カ月ほぼ横ばいで、2026年8月27日時点のPBRは0.87倍
  • 2026年3月期末の連結純資産2兆4,146億円のうち、6,530億円は非支配持分

1. 1カ月では動かなかった株価と、PBR0.87倍という値付け

 

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

 

 

直近1カ月の株価を並べると、行って戻ってきた形になる。2026年7月29日の終値は1,156円だった。

そこから8月4日に1,118円まで下げ、これが直近1カ月では最も低い水準になる。以後は上値を切り上げ、8月12日に1,247円まで上げた。この日が直近1カ月では最も高い。

後半は再び水準を落とし、8月19日と8月26日はともに1,132円まで下げている。8月27日の終値は1,171円で、前営業日からは上昇した。

起点と終点だけを見れば1カ月でほぼ横ばい圏だ。もっとも、その間に1,118円から1,247円まで1割強の幅で振れているので、値動きが乏しかったわけではない。

8月27日時点のPER(株価収益率)は12.53倍、PBR(株価純資産倍率)は0.87倍だ。純資産に対する評価は1倍を下回ったままにある。

8月上旬から中旬にかけて上値を試した動きは、通期の増益計画を織り込む買いが入った可能性が高い。素材セクター全般の地合いや原燃料価格の動きも重なったとみられる。

会社側も足元の環境には慎重だ。2026年3月以降は中東を中心とした地政学リスクの高まりを受けて一部の原燃料価格が高騰しており、先行き不透明な状況が続いているとしている。

2. 営業利益3,000億円予想の前提。前期はなぜ300億円まで落ちたのか

2026年3月期通期の売上収益(IFRS)は3兆7,039億円で前期比▲6.2%、営業利益は300億円で▲78.8%、親会社の所有者に帰属する当期利益は118億円で▲73.7%だった。税引前利益は7億円まで削られている。

数字の落ち方だけを見れば本業が崩れたように見える。だが会社が併記するコア営業利益は2,250億円で、前期からの減少は▲1.7%にとどまる。

つまり本業ベースの稼ぐ力はほぼ横ばいで、営業利益の段階で大きく削られたということだ。実際、2026年3月期の減損損失は984億円あり、前期も928億円計上している。

2期続けて1,000億円規模の減損が出ている以上、これを一過性のイレギュラーな要素と片づけるのは早い。事業の入れ替えを進める過程で繰り返し発生している費用と読み取るのが自然だろう。

その前期を起点にした2027年3月期の会社予想は、売上収益3兆8,000億円で+2.6%、営業利益3,000億円で+897.4%、当期利益1,270億円で+973.6%となっている。1株当たり配当金は前期と同額の32円を見込む。

営業利益が9倍近くに増える計画だが、これは前期の水準が減損で押し下げられていたことの裏返しでもある。伸び率の大きさは、基準になる期の低さを映している面が大きい。

進捗を見ておこう。1Qの売上収益は1兆42億円、営業利益は1,184億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は577億円だった。

通期予想に対する進捗率は営業利益で39.5%、当期利益で45.4%になる。1Qの目安である25%を上回っており、少なくとも滑り出しは計画を先行している。

利益率でも同じことが言える。1Qの営業利益率は11.8%で、通期予想から逆算される7.9%を上回る。会社計画がやや保守的に置かれている可能性はある。

それでもPBRは1倍を下回ったままだ。予想の増益率と株価の反応が噛み合っていないところに、この銘柄の論点がある。

3. 筆者コメント

直近1カ月の株価と通期の増益計画を重ねると、市場がまだ確かめる段階にいることが読み取れる。

1Qの進捗は計画を先行しているのに、株価は7月末の水準に戻ってきただけだ。四半期1本で見方を変えるほどの材料とは受け止められていないのだろう。

理由は想像がつく。前期の営業利益が減損で大きく削られた会社の場合、翌期の高い伸び率は「戻り」でしかない。戻ってどこまで行くのかが決まらないと、評価は動きにくい。

この局面で見ておきたいのは、伸び率ではなく水準だ。営業利益3,000億円は、コア営業利益2,250億円という本業の水準を上回る計画になる。

四半期ごとに増益率を追うのではなく、コアの水準がどこまで切り上がるかで進み具合を測る。そういう物差しの持ち替えをおすすめしたい。