5. 1四半期で前期1年分を超えた営業利益

2026年3月期通期の売上収益(IFRS)は2兆3,376億円で前期比+37.0%、営業利益は8,703億円で+92.7%、当期利益は5,544億円で+103.6%となった。増収増益で、ROEは51.9%まで上がっている。

何がこの数字を作ったのか。会社によれば、フラッシュメモリ市場では前年度末に起きた顧客の在庫調整が正常化し、スマートフォンとPC向けの需要が回復した。

加えて、データセンターおよびエンタープライズ向けではAI用途によるサーバーの需要が増加し、市場の拡大が続いたという。一方で米ドルの平均為替レートは前期比で円高に振れたとしている。為替が逆風だったなかでの大幅増益ということになる。

2027年3月期1Qはさらに極端だ。売上収益1兆7,671億円、営業利益1兆2,700億円、当期利益8,421億円。1四半期の営業利益が、前期通期の8,703億円を上回った。

営業利益率は71.9%になる。通期で37.2%だった前期からさらに跳ね上がっており、販売単価の上昇が利益に直結しやすい構造が効いたと読み取れる。

振れ幅の大きさは5期を並べると分かる。2023年3月期は▲990億円、2024年3月期は▲2,526億円の営業赤字だった。それが2025年3月期に4,517億円、2026年3月期に8,703億円と反転している。

単一セグメントの専業なので、市況の波がそのまま損益に出る。この振れの大きさこそ、多角化企業の一部門だったころとの最大の違いだろう。

6. ROE51.9%と自己資本比率37.9%が同時に立つ理由

資本効率の水準は業種のなかで際立っている。2026年3月期のROEは51.9%、営業利益率は37.2%で、電気機器の中央値はそれぞれ7.4%、6.7%だ。

もっとも、ROEは分子の利益だけで決まらない。分母の自己資本が薄ければ、同じ利益でも数字は大きく出る。自己資本比率37.9%という水準は、この効き方を無視できないことを示している。

現金の流れも見ておきたい。2026年3月期の営業キャッシュフローは6,165億円、投資キャッシュフローは▲2,215億円、財務キャッシュフローは▲960億円だった。

設備投資は2,837億円で、稼いだ現金の範囲に収まっている。配当はまだ出しておらず、2026年3月期の1株当たり配当金は0円だ。利益はまず資本の回復と設備へ向かった。

負債の使い方をどう評価するかは、また別の論点になる。有利子負債1兆475億円を抱える一方で、利益剰余金はようやくプラスに転じたところにある。財務の余力が薄い局面と、資本効率が高く出る局面が、いまは同時に来ている。

7. 筆者コメント

のれん3,955億円と、東芝の持株比率17.59%を並べて見ると、この会社の現在地が見えてくる。

どちらも、事業そのものの強さとは関係のない数字だ。前者は買収の値付けが残したもので、後者は資本の入れ替えがまだ途中であることを示している。

事業側の数字は、すでに独立して回っている。1四半期で前期1年分の営業利益を出す会社に、親会社の後ろ盾は要らない。それでも資本の側は、いまも来歴を引きずっている。

この2つの速度差が、当面この銘柄を眺めるうえでの論点になるだろう。事業の変動は市況で説明できるが、資本構成の変化は市況では説明できない。

決算の数字を追うときに、大株主の状況の推移も並べて見る。そういう習慣を持っておきたい局面だ。

参考資料

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石津 大希