3. セブン‐イレブンは「商品・店舗・デジタル」を同時に強化

では、競合するセブン-イレブンは何に力を入れているのでしょうか。

セブン&アイ・ホールディングスは、国内コンビニ事業の長期的な成長に向けて、「フレッシュフード」「店舗刷新」「デジタル」の3分野への投資を継続しています。

2026年7月に発表された2027年2月期第1四半期決算では、セブン-イレブン・ジャパンの既存店売上は前年同期比2.0%増となりました。客単価の上昇に加え、客数も改善しています。

同社の戦略を象徴するのは、単に店舗数を増やすのではなく、既存の店舗や商品、顧客体験を磨き直す姿勢です。

日本国内のコンビニ市場はすでに成熟しています。大手3社による店舗網が全国に張り巡らされたなかでは、「どこに新しい店をつくるか」だけでは成長を描きにくくなっています。

そこで重要になるのが、来店客にとっての店舗の価値をどう高めるかです。

セブン&アイはフレッシュフードへの投資を継続する一方、2026年7月にはソフトバンク、PayPay、LINEヤフー、三井住友カードとの戦略的パートナーシップも発表しました。

リアル店舗とデジタルサービスを融合させ、決済やデータ活用も含めた次世代の顧客体験、生活インフラの構築を目指す構想です。

つまりセブン-イレブンは、「商品力」を土台としながら、店舗とデジタルを組み合わせる方向に競争軸を広げているといえそうです。

4. ローソンは「コンビニの枠」を広げる。KDDIとの連携で次世代店舗を展開

ローソンの戦略は、コンビニそのものの役割を広げる方向にあります。

その大きな特徴が、KDDIとの連携です。

ローソンはAIやデジタル技術を活用しながら、リアル店舗とテクノロジーを融合させる取り組みを進めています。

2026年に入ってからも、新たな店舗モデルの展開が相次いでいます。

8月4日にはローソン・KDDI・UR都市機構が連携し、集合住宅型の「ハッピーローソンタウン日野高幡台店」をオープン。店舗を単なる買い物の場ではなく、地域住民の暮らしを支える拠点として活用する構想です。

「ハッピーローソンタウン日野高幡台店」5/6

「ハッピーローソンタウン日野高幡台店」

出所:株式会社ローソン

また、8月27日にはローソン初となるトレーラーハウス型店舗をオープン、8月31日には人口の少ない地域にも出店可能な出店モデル「with LAWSON」をオープン予定であるなど、店舗モデルのバリエーションを拡大しています。

ローソン初となるトレーラーハウス型店舗6/6

ローソン初となるトレーラーハウス型店舗

出所:株式会社ローソン

このほか、デジタル技術を活用したアバター接客、AIを使った接客支援、ロボットによる調理なども進めています。

ローソンが挑戦しているのは、「コンビニは、こういう建物で、こういうサービスを提供するもの」という固定観念を外すことだといえるでしょう。

地域のコミュニティー拠点、テクノロジーの実証の場、新たな形態の小売拠点へと役割を広げることで、コンビニの新しい可能性を探っています。

5. コンビニはいま何を競っているのか

大手3社の直近の動きを並べてみると、コンビニ業界の競争が変わりつつあることが見えてきます。

ファミリーマートが特に力を入れているのは「人」です。

働きやすい環境をつくり、採用しやすくし、働き続けてもらう。ユニフォームや身だしなみの見直しから採用システムまで、一連の仕組みを変えようとしています。

セブン-イレブンは「商品・店舗・デジタル」の強化を進めています。

フレッシュフードや店舗の価値を高めながら、デジタルサービスや外部企業との連携によって、リアル店舗の新たな顧客体験をつくろうとしています。

ローソンは「店舗の役割そのもの」の再定義に取り組んでいます。

AIやロボットを活用するだけでなく、地域社会との連携や新しい店舗形態を通じて、コンビニの活動領域を広げようとしています。

もちろん、実際には各社とも人材、商品、デジタル、地域対応のすべてに取り組んでおり、「ファミマは人」「セブンは商品」「ローソンは地域」と完全に分かれているわけではありません。

ただ、各社が何を起点に次の競争力をつくろうとしているかには、それぞれ特徴があります。

成熟したコンビニ市場では、商品の品ぞろえだけで差別化することが難しくなっています。

良い商品を開発しても、それを店舗で提供する人が確保できなければ、サービスは維持できません。一方で、デジタル化が進んでも、実店舗には「その場所にあること」自体の価値があります。

次世代のコンビニ競争は「何の商品を売るか」だけではなく、「誰が働くのか」「どんな技術を使うのか」「地域でどんな役割を果たすのか」といった複数の要素を組み合わせた総合力が、これまで以上に問われることになりそうです。

6. トレンドウォッチャーのひとこと

大蔵 大輔

ファミリーマートが「いちばん働きたいコンビニ」を掲げる背景には、働き手の選択肢が大きく広がっていることがあります。

その象徴が、いわゆる「スキマバイト」と呼ばれるスポットワーク市場の拡大です。

タイミーが2026年7月に公表した推計によると、2025年の国内スポットワーク市場規模は1503億円。2022年の約4倍に拡大しています。

働く側からすれば、短時間だけ働く、複数の仕事を掛け持ちする、自分の都合に合わせて勤務先を選ぶといった働き方が以前より身近になりました。

これは企業側にとって、「求人を出せば人が集まる」という時代ではなくなったことを意味します。

これからのコンビニ競争では、「お客さまから選ばれる店」と同時に「働き手から選ばれる店」になれるかどうかが、重要な競争軸の一つになりそうです。

参考資料

大蔵 大輔