4. 現役ファイナンシャルアドバイザーが答える「ひとりになった後の家計が不安」―単身世帯の収支変化への解決策

日頃のご相談では、配偶者を亡くされた後や、その可能性を意識し始めた時期に、家計の相談をいただくことがあります。世帯の人数が減ると、収入も支出も同じようには減らないためです。

4.1 60代・70代以上でよくご相談される「ひとりになった後の収支が読めない」という悩み

夫婦二人の年金で回っていた家計は、どちらかが亡くなると受け取れる年金の内訳が変わります。一方で、住居費や光熱費の基本料金のように、人数が半分になっても半分にはならない支出もあります。次のような声を耳にします。

60代のお客様(ご相談者)
夫婦二人での生活を前提に考えてきましたが、この先ひとりになったときにどうなるのかを考えたことがありませんでした。年金がどう変わるのか、生活費がどれくらい必要になるのか、見当がつかないままです。

備えの第一歩は、変化を数字で確認しておくことです。あらかじめ把握しておけば、必要になったときに慌てずに済みます。

4.2 【ファイナンシャルアドバイザー・長井祐人が回答】変化を先に数字で確認しておく

長井 祐人
配偶者やパートナーが亡くなると、誰もが悲しみや不安を感じるものです。また、生活スタイルが変わることで、収入・支出にも大きな変化が生じます。特に、老後生活の主な収入源である「年金」は、受給額が大きく変わる可能性があります。

一方で、支出についても食費・日用品費・光熱費など、人数が減ることで少なくなるものがある反面、家賃や車の維持費、サブスクリプション費など、一人になってもあまり変わらないものもあります。

まずは現在の収入・支出をもとに、一人になった場合の収支がどのようになるのかを確認してみましょう。また、万が一の際に必要となる手続きや請求できる給付などについても、事前に一覧化して把握しておくことで、いざというときの負担を軽減することができます。

この備えは、縁起の問題ではなく手続きと数字の問題として扱うと進めやすくなります。ご相談のなかでは、次の三つの順序でお話しすることが多くあります。

4.3 ポイント1:受け取れる年金がどう変わるかを確認する

夫婦二人で受け取っていた年金は、一方が亡くなると内訳も金額も変わります。遺族年金の対象になるかどうかも含め、実際にいくらになるのかを事前に確認しておきます。

4.4 ポイント2:減る支出と減らない支出を分ける

食費のように人数に応じて減るものと、住居費や各種の基本料金のように人数が減っても大きくは変わらないものがあります。分けて把握すると、必要な生活費の水準が見えてきます。

4.5 ポイント3:手続きが必要なものを一覧にしておく

年金も保険も、請求しなければ受け取れないものがあります。契約先と連絡先をまとめておくだけでも、いざというときの負担は大きく変わります。

なお、遺族年金の受給要件や金額は、加入していた制度や家族構成によって異なり、請求手続きが必要です。ご自身の場合にどうなるかは、年金事務所やお住まいの自治体に必ずご確認ください。運用商品には元本割れの可能性があります。

5. まとめにかえて

厚生年金の平均月額は15万289円ですが、受給額の分布を見ると「月10万円未満」が19.0%と、「月20万円以上」の18.8%をわずかに上回ります。平均額だけでは実態がつかめないことが分かります。一方で平均寿命は男性81.35年・女性87.33年まで伸び、65歳以上の12.3%が認知症、15.5%がMCIと推計されています。

長い老後を見据えるうえで大切なのは、金額の把握と、その資産を使える状態に保つ備えの両方です。エンディングノートの記入率が70歳代以上で約5割にとどまるように、準備は先送りされがちです。夫婦二人から単身になったときの収支の変化も含めて、判断できるうちに数字で確認しておくことが、これからの暮らしを支える土台になります。

参考資料

長井 祐人