5. 営業利益が2.5倍になった1Q、増益の出どころを分ける
2027年3月期1Qの数字を確認しておく。売上収益は3,745億円で前年同期比+10.9%、営業利益は732億円で+250.5%、税引前四半期利益は819億円で+305.3%、親会社の所有者に帰属する四半期利益は535億円で+361.3%だった。
会社によれば、営業利益の増加は民間向け航空エンジンや原子力事業の需要拡大、原動機事業などのライフサイクルビジネスの拡大、車両過給機事業の採算改善、そして不動産譲渡に伴う400億円の利益計上によるものだ。前年同期の208億円から732億円へ増えた。
ここでセグメント別に分けると、見え方が変わる。航空・宇宙・防衛の売上収益は1,547億円で+21.0%、セグメント利益は291億円で+4.4%。売上は2割伸びたが、利益はほぼ横ばいだ。
では+250.5%はどこから来たのか。報告セグメントに含まれない「その他」の利益が、前年同期の5億円から421億円へ膨らんでいる。不動産譲渡益はここに乗っている。
残りは他事業の底上げである。資源・エネルギー・環境が▲33億円から28億円へ黒字転換し、産業システム・汎用機械が3億円から55億円へ増えた。社会基盤は▲17億円から▲18億円と赤字が続いている。
つまり連結の営業利益2.5倍という見出しの数字は、稼ぎ頭の伸びよりも、不動産の売却益と赤字事業の改善で作られた面が大きい。
会社は財務基盤の強化と成長事業の先行投資の原資確保を目的に、計画的に不動産の売却を進めているとしている。狙って作った利益ではあるが、毎期同じ規模で繰り返せるものでもないだろう。
受注面も押さえておきたい。1Qの受注高は3,607億円で前年同期比▲15.0%だった。そのうえで会社は通期の受注高を1兆7,700億円、売上収益を1兆8,400億円、営業利益を2,500億円、親会社の所有者に帰属する当期利益を1,720億円に修正している。営業利益は前期比+51.0%の水準にあたる。
1Qの営業利益732億円は、この通期予想2,500億円に対して29%の進み具合だ。ただし不動産譲渡益を含んだ29%であることは、頭の隅に置いておきたい。
6. ROE28%と親会社所有者帰属持分比率27%が同居する資本構成
資本の側も見ておく。2026年3月期のROEは28.4%だった。機械業種158社のROE中央値7.8%の3倍を超える水準である。営業利益率は10.1%で、こちらも中央値7.9%を上回る。
一方で親会社所有者帰属持分比率は26.9%。機械業種の中央値66.9%を大きく下回る。1Q末には28.3%まで上がったが、業種の中では薄い方だ。ROEの高さの一部は、この薄い自己資本から来ている。分母が小さければ、同じ利益でもROEは高く出る。
もっとも、これを単純に危ういと決めつけるのも早い。長期契約の前受金にあたる契約負債が1Q末で3,088億円あり、負債側を押し上げている。有利子負債はリース負債を含めて4,871億円で、前期末から27億円減った。資金流動性は十分な水準を確保していると会社は説明している。
ポートフォリオの組み替えも進んでいる。会社は2026年5月に、産業システム・汎用機械事業の一部である物流・産業システム事業を担う子会社の株式を豊田自動織機へ譲渡する契約を締結し、2027年4月に発行済み株式の80%を譲渡する予定だとしている。
あわせて会社は、2026年度から2028年度までの3か年を、先行投資と財務基盤強化に集中的に取り組む期間と位置づけている。設備投資は2026年3月期で976億円だった。資本をどこへ振り向けるかが、この先のROEの中身を決めることになる。
7. 筆者コメント
5期のセグメント損益を横に並べると、この会社の性格が見えてくる。
ひとつの事業が1,000億円規模の赤字と1,000億円規模の黒字を数年で行き来し、他の3事業の利益は合計しても数百億円台にとどまる。全社の損益は、事実上ひとつの事業の当たり外れで決まる。
単一事業への集中は、上向きの局面では強力なレバーになる。下向きの局面では同じ倍率で効く。資本効率の高さと自己資本の薄さが同居しているのも、この振れ幅の上に成り立っている。
そしていまは、その偏りをさらに強める方向へ舵を切っているようにみえる。安定収益と呼ぶ領域から資源を抜き、成長事業へ集中させる。狙いは分かるが、緩衝材を薄くする選択でもある。
この会社を追うなら、連結の増減率より先にセグメント表を開くのが早い。ここでは、そちらが本体だ。
参考資料
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石津 大希