2. 海外の増収、為替の影響を除くとどう見えるか

海外事業の実績ベースの伸び率には、円安による押し上げ効果が大きく含まれています。

特に米州・ヨーロッパは、為替の影響を除くとほぼ横ばい圏にとどまり、実績としての伸びの大部分が円安効果であったことがわかります。アジア・オセアニアは為替一定ベースでも+7.5%とプラスが残り、相対的に実力を伴った成長といえます。

数量(本数)ベースの動向をみても、地域ごとに濃淡があります。米州計は1日当たり587.9万本(前年同期比2.3%減)と、金額は増えた一方で数量はむしろ減少しており、価格改定や為替換算が押し上げの主因とみられます。中国ヤクルトは1日当たり270.0万本(同1.2%増)とほぼ横ばいでした。一方、アジア・オセアニア計は1日当たり2,276.4万本(同3.4%増)と数量ベースでも増加が続いており、地域の中でも需要の底堅さに差があることがうかがえます。

3. 株主優待の中身は:9月末は「スワローズファンクラブ」の無料入会権

ヤクルト本社の株主優待は年2回に分かれており、直近で権利確定日を迎えるのは9月30日基準の「優待2」です。

2026年9月30日現在で100株以上を保有する株主が対象で、東京ヤクルトスワローズオフィシャルファンクラブ「スワローズクルー」への無料入会権が得られます。

1,000株以上の保有でレギュラー会員、100株以上1,000株未満の保有でライト会員への入会権となり、本来かかる年会費の負担なしに、チケットの割引・先行購入やグッズ進呈といった特典を受けられます。案内書は毎年12月上旬に発送される予定です。

スワローズファンや神宮球場に足を運びやすい株主には魅力的な優待ですが、野球観戦になじみのない株主や遠方在住の株主にとっては、活用の機会が限られる点には注意が必要です。

3.1 3月末の「優待1」は「製品詰め合わせ」

3月末の内容は「乳製品等」または「清涼飲料・乾めん等の詰め合わせ」のいずれかが選べます。3年以上の継続保有株主にはさらに商品が上乗せされ、5年以上の継続保有株主にはクオカードも進呈されます。

継続保有期間別の内容は次の通りです(3月31日・9月30日の株主名簿に連続して同じ株主番号で記載されていることが継続保有の条件)。

継続保有期間:100株以上500株未満/500株以上/1,000株未満/1,000株以上

  • 3年未満:乳製品等または清涼飲料・乾めん等の詰め合わせ/同左/同左
  • 3年以上:上記に加え、別の乳製品等または化粧品を進呈/同左/同左
  • 5年以上:上記に加えクオカードを進呈/同左/同左

4. バリュエーション評価:2,800円台後半の株価はどんな水準か

8月26日終値2,875円(前日比▲44円、▲1.51%)をもとに主要指標を算出すると、通期予想の1株当たり当期純利益174.21円から算出したPER(会社予想)は16.50倍、2026年6月末の自己資本601,346百万円を自己株式控除後の発行済株式数287,717,026株で割った1株当たり純資産(約2,090円)から算出したPBR(実績)は1.38倍となります。年間配当予想72.00円をもとにした配当利回り(会社予想)は2.50%、発行済株式数302,753,736株を乗じた時価総額は約8,704億1,700万円です。

年初来高値は3,092円(2026年5月1日)、年初来安値は2,429円(同年1月29日)です。8月26日終値2,875円は、このレンジの中間よりもやや高値寄りの水準に位置します。

ヤクルト本社の12カ月チャート1/1

ヤクルト本社の12カ月チャート

出所:各データより筆者作成

5. 記者コメント

ヤクルト本社の1Q決算は、表面的な数字だけを見ると最終利益17.2%増・海外2ケタ増収と好調に映りますが、内訳を確認すると印象は変わります。

最終利益の伸びは投資有価証券売却益などの特別利益によるもので、海外の増収も実績の多くは円安効果です。為替の影響を除くと、連結売上高はむしろ前年同期比▲1.9%であり、本業の実力という観点では慎重な見方が必要でしょう。国内は物価高の影響で乳製品・清涼飲料ともに前年割れが続いています。

株価は8月中旬以降に上昇局面を迎えていますが、通期の業績予想自体は据え置かれており、9月30日の株主優待の権利確定日も近づいています。優待や配当だけでなく、為替の動向次第で振れやすい海外事業の実力ベースの成長がどう推移するか、次回の第2四半期決算にも注目したいところです。

なお、優待の対象となるスワローズは今季、池山新監督のもと春先に首位へ躍り出たものの、現在はBクラスと苦戦が続いています。興行収入やファンクラブ特典の満足度にも関わるだけに、後半戦の巻き返しと神宮球場の熱気に期待したいところです。

【免責事項】

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。

参考資料

高原 祥子