10月15日は年金の定期支払日がある月です。2026年度の年金額は前年度から増額改定されましたが、物価の上がり方を踏まえると、生活費のやりくりは依然として切実な課題です。

60歳・65歳以上の方を対象とした公的給付金をご存知でしょうか。この記事では、年金以外に受け取れる加給年金や雇用保険関連の手当など5つの制度を解説します。ご自身が対象となる制度がないか、確認してみてください。

なお、シニア世代が対象となる公的給付金の全体像に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。

【2026年最新】60歳・65歳以上がもらえるお金・公的給付金一覧!年金上乗せ・雇用保険・医療介護の申請漏れを防ぐ完全ガイド!「知っておきたい」お金の仕組みを徹底解説
【2026年最新】60歳・65歳以上がもらえるお金・公的給付金一覧!年金上乗せ・雇用保険・医療介護の申請漏れを防ぐ完全ガイド!「知っておきたい」お金の仕組みを徹底解説

1. 公的なお金は原則「申請主義」|請求しなければ始まらない

老齢・障害・遺族年金といった公的な制度は、受給資格があるからといって自動的に振り込みが始まるわけではありません。受け取りを始めるには、自分で「年金請求書」を提出する必要があります。

国や自治体の給付金・補助金も同じです。期限に間に合わなかったり書類が不足したりすると、受給額が減る、あるいは受け取れなくなることもあります。まずは自分が対象となる制度を把握し、手続きを完了させておきましょう。

2. 【老齢年金】年金に上乗せされる2つの給付

2.1 年金版の家族手当「加給年金」の仕組み

「加給年金」は、厚生年金に20年以上加入していた方が65歳になった際、生計を維持している「年下の配偶者」や「子ども」がいる場合に加算される制度です。いわば年金版の「家族手当」にあたります。

加給年金の支給要件

  • 厚生年金加入期間が20年(※)以上ある人:65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)
  • 65歳到達後(もしくは定額部分支給開始年齢に到達した後)に被保険者期間が20年(※)以上となった人:在職定時改定時、退職改定時(または70歳到達時)

(※)または、共済組合等の加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が40歳(女性と坑内員・船員は35歳)以降15年から19年

上記のタイミングで「65歳未満の配偶者」または「18歳到達年度の末日までの間の子、または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子」がいる場合、年金に上乗せされます。ただし配偶者が20年以上の老齢厚生年金・退職共済年金を受給する権利がある場合や、障害年金を受給している場合は支給停止となります。

2026年度の加給年金額

加給年金の加給年金額2/6

加給年金の加給年金額

出所:日本年金機構「加給年金額と振替加算」

  • 配偶者:24万3800円
  • 1人目・2人目の子:各24万3800円
  • 3人目以降の子:各8万1300円

出所:【2026年最新】60歳・65歳以上がもらえるお金・公的給付金一覧!年金上乗せ・雇用保険・医療介護の申請漏れを防ぐ完全ガイド!「知っておきたい」お金の仕組みを徹底解説

いずれも2026年度の年額です。なお、老齢厚生年金を受給中の人の生年月日により、配偶者の加給年金額に3万6000円から17万9900円の特別加算額が支払われます。配偶者が65歳になると加給年金は終了しますが、一定の要件を満たせば、配偶者自身の老齢基礎年金に「振替加算」という形で一定額が引き継がれます。

【独自試算】繰下げ待機で受け取れない加給年金は5年で211万円

老齢厚生年金を繰り下げて待機している間は、加給年金も支給されません。待機した年数分でいくら受け取れないことになるのか、この記事の金額で試算してみましょう。配偶者加給年金24万3800円に、特別加算額の上限17万9900円が加わる場合の年額はこうなります。

  • 24万3800円 + 17万9900円 = 年42万3700円
  • 70歳まで5年間待機した場合:211万8500円を受け取れない
  • 75歳まで10年間待機した場合:423万7000円を受け取れない

特別加算額が下限の3万6000円の場合でも、年額は27万9800円。5年間の待機で139万9000円になります。繰下げによる増額率は1カ月あたり0.7%で、75歳まで待てば84%増える計算ですが、その間に受け取れない加給年金があることを含めて比べる必要があります。配偶者が65歳になるまでの年数が長い人ほど、この影響は大きくなります。

※この記事に掲載された2026年度の加給年金額と特別加算額をもとにした目安の試算です。加給年金額は年度ごとに改定され、特別加算額は受給者の生年月日によって異なります。配偶者が65歳に到達すると加給年金は終了するため、実際に受け取れない期間は個々の状況によって変わります。

2.2 所得が一定基準以下なら「老齢年金生活者支援給付金」

「老齢年金生活者支援給付金」は、老齢基礎年金を受給している方のうち、所得や世帯収入が一定基準以下の場合に支給されるものです。年金本体とは別の法律に基づく「給付金」という位置づけになります。

対象となる3つの条件

次の3つをすべて満たす方が対象です。所得の基準額は令和8年10月分から引き上げられます

  • 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
  • 同一世帯の全員が市町村民税非課税
  • 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が、昭和31年4月2日以後生まれの方は82万6500円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は82万4100円以下(※2)である

※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれない
※2 昭和31年4月2日以後生まれで82万6500円を超え92万6500円以下の方、昭和31年4月1日以前生まれで82万4100円を超え92万4100円以下の方には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される。金額は厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」の令和8年10月時点による

見落とされやすいのが2つ目の条件です。本人の年金額が基準を下回っていても、同居する家族に課税所得があれば対象外となります。

2026年度の給付基準額

老齢年金生活者支援給付金の給付基準額3/6

老齢年金生活者支援給付金の給付基準額

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」をもとにLIMO編集部作成

2026年度、老齢年金生活者支援給付金の給付基準額は月額5620円で、前年度より3.2%増額されました。この基準額をもとに、保険料納付状況等により給付金額が算出されます(下記①と②の合計額)。

  • ①保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5620円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月
  • ②保険料免除期間に基づく額(月額) = 1万1768円× 保険料免除期間 / 被保険者月数480月

※保険料免除期間に乗ずる金額は、毎年度の老齢基礎年金の額の改定に応じて変わります。

3. 【雇用保険】働き続けるシニアが申請できる3つの給付

シニアの就労を支援する制度は整いつつありますが、一般的には60歳を境に収入が下がる傾向があります(※)。雇用保険に関連する手当や給付金を3種類紹介します。

※国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」による年齢階層別の平均給与:50歳代後半男性735万円、女性356万円、60歳代前半男性604万円・女性294万円、60歳代後半男性472万円・女性240万円

3.1 【独自試算】60歳前後の給与の落ち込みは平均18%|「75%未満」の壁に届かない

高年齢雇用継続給付は「賃金が60歳到達時の75%未満になった場合」に支給されます。では、平均的な給与の落ち込みはこの要件に届くのでしょうか。注記にある国税庁の平均給与を使って計算してみます。

  • 男性:50歳代後半735万円 → 60歳代前半604万円(131万円減、17.8%減
  • 女性:50歳代後半356万円 → 60歳代前半294万円(62万円減、17.4%減

水準に直すと、男性は50歳代後半の82.2%、女性は82.6%です。つまり平均的な落ち込みでは「75%未満」の要件に届きません。この給付を受けられるのは、平均より大きく賃金が下がった人に限られるということです。

60歳代後半まで含めると、男性は735万円から472万円へ263万円減(35.8%減)、女性は356万円から240万円へ116万円減(32.6%減)と、落ち込みはさらに大きくなります。ただし高年齢雇用継続給付の対象は65歳未満です。60歳代後半の落ち込みは、この給付ではカバーされません。

※国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」の年齢階層別の平均給与をもとに、階層間の差を単純に計算した目安です。同一人物の賃金推移ではなく、各年齢層の平均値の比較である点にご留意ください。高年齢雇用継続給付の判定は個人ごとの60歳到達時賃金との比較でおこなわれます。

3.2 65歳未満の早期再就職を支援する「再就職手当」

再就職手当は、早期の再就職を促すための手当です。「失業から再就職まで」または「失業から事業開始まで」の期間が短いほど、支給額が多くなります。

  • 対象者:雇用保険受給資格者で基本手当の受給資格がある人
  • 支給要件:基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あり、一定の要件に該当する場合に支給
  • 給付率:所定給付日数の3分の1以上を残して就職した場合は支給残日数の60%、3分の2以上を残した場合は70%(1円未満切り捨て)

再就職手当の額4/6

再就職手当の額

出所:厚生労働省「再就職手当のご案内」

なお、再就職手当を受け取り再就職先で6カ月以上雇用され、かつ再就職先での6カ月間の賃金が離職前の賃金よりも少ない場合は「就業促進定着手当」の対象となります。

3.3 60歳から65歳未満の賃金低下を補う「高年齢雇用継続給付」

高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の人が就労を続ける際、賃金が60歳到達時よりも減少した場合に支給される給付金です。

  • 対象者:雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者
  • 支給条件:賃金が60歳到達時の75%未満となった状態で働き続ける場合
  • 支給額:最高で賃金額の10%相当額(2025年3月31日以前に支給要件を満たす人は15%

出所:【2026年最新】60歳・65歳以上がもらえるお金・公的給付金一覧!年金上乗せ・雇用保険・医療介護の申請漏れを防ぐ完全ガイド!「知っておきたい」お金の仕組みを徹底解説

【早見表】高年齢雇用継続給付(2025年4月1日以降)5/6

【早見表】高年齢雇用継続給付

出所:厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」

老齢年金を受給しながら、厚生年金に加入して「高年齢雇用継続給付」を受け取る場合、在職による年金の支給停止に加え、最大で標準報酬月額の4%(※)に相当する金額が支給停止となる点に留意しておく必要があります。
※2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たす人は6%

3.4 65歳以上で失業したときの「高年齢求職者給付金」

高年齢求職者給付金は、65歳以上の人が失業した際に支給される給付金です。離職の日以前1年間に被保険者期間が通算6カ月以上あり、失業の状態にあることが要件です。

  • 被保険者であった期間が1年未満:30日分の基本手当相当額
  • 被保険者であった期間が1年以上:50日分の基本手当相当額

65歳未満が受け取る「失業手当」は4週間に一度ずつ失業認定を受けてから給付されるのに対し、この高年齢求職者給付金は一括で支給されます。

なお、働きながら年金をもらうと年金が減額される「在職老齢年金」については、2025年の年金制度改正で減額される基準額が月65万円に引き上がりました。以前の基準で就労を抑えていた方は、一度計算し直してみる価値があります。

4. 【医療・介護・生活】負担の上限を定める軽減制度

年齢を重ねるにつれて家計に重くのしかかるのが「医療費」と「介護費用」です。公的医療保険や介護保険には、上限額の機能や払い戻しの仕組みが用意されています。

4.1 医療費が高額になったときの「高額療養費制度」

月の初めから終わりまでの医療費の自己負担額が、年齢や所得に応じた「自己負担限度額」を超えた場合、超えた金額が後から払い戻される制度です。一般的な所得層(70歳未満・年収約370万〜約510万円)の場合、ひと月の自己負担限度額の基本は「約8万5800円+(医療費から28万6000円を引いた額)の1%」となります。

事前の手続きを怠ると、退院時に窓口で高額な費用を一旦立て替え、払い戻しは3〜4カ月後になります。マイナ保険証を利用するか、事前に「限度額適用認定証」を申請しておけば、窓口での支払いを最初から上限額までに抑えられます。

4.2 介護費用を抑える「高額介護サービス費」

介護保険サービスの1カ月の自己負担額(1割〜3割)の合計が、所得に応じた上限額を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。

ここで押さえておきたいのは、「介護施設での食費・居住費(部屋代)・日常生活費」や「特定福祉用具購入費・住宅改修費」は、この計算対象から除外されるという点です。対象外の食費や居住費が毎月加算され、資金が想定より早く減る原因になります。

4.3 医療と介護を合算する「高額医療・高額介護合算制度」

1年間(毎年8月1日〜翌年7月31日)の医療費と介護費用の自己負担額を世帯で合算し、基準額を超えた場合に払い戻しを受けられる制度です。

支給対象の世帯には原則として案内が届きますが、計算期間の途中で「75歳になり後期高齢者医療制度に移行した」「退職して国民健康保険に切り替わった」といった保険の異動があると、データが分断されて案内が届かないことがあります。この場合、自ら過去の保険者に申請しないと、時効(2年)で権利が消滅します。

4.4 住民税非課税世帯向けの「臨時給付金・自治体支援」

物価高騰対策として、政府や自治体が「住民税非課税世帯」を対象に臨時給付金を支給することがあります。その時々の補正予算や地方交付金を活用した一時的なものです。

注意したいのは、「住民税が課税されている方(別居の家族などを含む)の税法上の扶養親族等のみで構成されている世帯」は、世帯分離をして住民票上は非課税の単身世帯になっていても、給付の対象外とされる点です。住民票上の世帯状況にかかわらず、税法上の扶養状況が判定に影響します。