3. 急伸後の日本製鉄株はどんな水準にあるのか
株価は7月2日の年初来安値530.5円から8月7日の年初来高値708.0円まで、1カ月足らずで約33%上昇しました。その後はいったん反落したものの、直近は下げ止まり、26日の終値は677.0円(前日比+4.8円、+0.71%、出来高2,316万400株)でした。この水準をもとに、バリュエーション面から確認します。
会社予想EPS55.00円をもとにしたPERは12.2倍、実績ベースのPBRは0.63倍、会社予想配当24円に基づく配当利回りは3.55%でした(時価総額3兆6,380億円)。
年初来高値708.0円(8月7日)と年初来安値530.5円(7月2日)の値幅の中では、直近の株価は高値からやや反落した後、下げ止まって持ち直しつつある水準にあります。
同業では、JFEホールディングス、神戸製鋼所、大同特殊鋼などが比較対象になりますが、いずれもPBRは1倍を下回る水準で推移しています。鉄鋼のように業績が市況に左右されやすいシクリカル(景気敏感)産業では、好業績の局面でも株価純資産倍率が低めに評価されやすい傾向があり、この点はセクター特有の事情として押さえておきたいところです。
日本製鉄株の12カ月チャート1/1
出所:各データより筆者作成
4. 株主優待制度は「縮小」
日本製鉄は、3月末・9月末時点で5,000株以上を保有する株主を対象に、製鉄所の工場見学会への招待を実施しています(年2回、3〜4月頃と10〜11月頃に案内)。2025年10月1日付の株式分割(1株を5株に)にあわせて対象株数の基準も1,000株以上から5,000株以上に調整されており、株式分割を考慮した対象株数の水準自体はほぼ変わっていません。
一方で、優待の中身は縮小されています。3月末基準からは、工場見学会への招待枠が拡大された一方、経営概況説明会への招待、鹿島アントラーズ観戦への招待、日本製鉄紀尾井ホール演奏会への招待は廃止されており、対象となる株数は同水準でも、優待内容自体は実質的に縮小したと言えます。
株主優待の内容や条件は今後も変更される可能性があるため、最新の情報は同社の公式サイトで確認してください。
5. 記者コメント
日本製鉄という会社を理解するうえで、売上の9割超を占める製鉄事業の中身を見ることは欠かせません。
今回の決算で見えてきたのは、国内の製鉄事業が原燃料コストの上昇などで苦戦する一方、USスチールを含む海外事業がそれを補って余りある成長を見せているという構図です。
買収完了から1年余りでUSスチールの実力ベース事業利益見通しが1,800億円以上まで積み上がったことは、技術者派遣による品質改善や米国鋼材市況の上昇という追い風があったとはいえ、着実な成果と言えそうです。
もっとも、通期の事業利益・当期利益予想はそろって上方修正された一方、当期利益の上方修正には在庫評価差益の拡大という会計要因も含まれており、一過性要因を除いた社内管理指標「実力ベース連結事業利益」の見通し自体は据え置かれている点は冷静に見ておく必要があります。
国内事業の立て直しと海外事業の成長を両輪でどう進めるか、今後の四半期決算でも注目したいところです。
【免責事項】
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
参考資料
- 日本製鉄株式会社「2027年3月期第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年8月4日発表)
- 日本製鉄株式会社「2026年度1Q決算説明会」資料(2026年8月4日発表)
- 日本製鉄株式会社「2027年3月期決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年5月13日発表)
- 日本製鉄株式会社「名古屋製鉄所 新熱延ラインを竣工」(2026年8月6日発表)
- 日本製鉄株式会社「株主優待」
高原 祥子