日本製鉄は粗鋼生産量で国内首位、世界でも大手に数えられる鉄鋼メーカーです。

同社の事業は「製鉄」「システムソリューション」「ケミカル&マテリアル」「エンジニアリング」の4つのセグメントに分かれていますが、2027年3月期第1四半期(4〜6月期)の決算では、売上収益2兆8,211億9,600万円のうち製鉄セグメントが2兆6,010億7,500万円と、全体の9割以上を占めています。同社を支えるメインの事業は、名実ともに製鉄事業だと言えます。今回はこの決算(8月4日発表)をもとに、製鉄事業の中身をひも解いていきます。

株価は4日の取引終了後(15時30分)の発表を経て翌5日から上昇基調を強め、7日には年初来高値708.0円をつけました。その後は利益確定売りなどで調整し、26日は677円で取引を終えています。

ココがポイント
  • 日本製鉄の売上高の9割超を占める「製鉄事業」の構造と、直近の業績
  • 製鉄事業の中でも稼ぎ頭となっているUSスチールの実力と、国内事業との明暗
  • 通期の事業利益・当期利益はそろって上方修正も、社内管理指標「実力ベース連結事業利益」は据え置き

1. 前年の一過性赤字が剥落し黒字転換

まず全社の第1四半期の連結決算(IFRS)を確認します。

  • 売上収益:2兆8,211億9,600万円(前年同期比+40.4%)
  • 事業利益(営業利益に相当):1,455億1,100万円(前年同期は1,395億5,900万円の損失)
  • 最終利益(親会社の所有者に帰属する四半期利益):752億9,900万円(前年同期は1,958億3,300万円の損失)

2025年4〜6月期が大幅な赤字だったのは、USスチール買収に伴う事業再編損2,315億8,300万円を計上したことが主因です。今回の第1四半期はこうした一過性の損失がなく、黒字に転換しました。

1.1 メイン事業「製鉄」の中身:国内は苦戦、海外(USスチール)が牽引

製鉄セグメントの売上収益は2兆6,010億7,500万円(前年同期比+43.6%)、セグメント利益(事業利益)は1,442億6,900万円(前年同期比+69.2%)でした。他3セグメント(システムソリューション、ケミカル&マテリアル、エンジニアリング)はいずれも規模が小さく、業績全体への影響は限定的です。

この製鉄事業をさらに「国内」と「海外」に分けて見ると、明暗が分かれています。

同社は決算短信上の正式な事業利益とは別に、一過性要因を除いた本業の実質的な収益力を示す独自の社内管理指標として「実力ベース連結事業利益」を開示しています。その通期見通し(7,000億円以上、前回公表から据え置き)の内訳では、国内事業が原燃料等コストの上昇や中東情勢による市況悪化の影響で900億円下方修正された一方、海外事業はUSスチールの好調を中心に900億円上方修正されており、国内の悪化を海外の改善が相殺する形になっています

なかでもUSスチールの実力ベース事業利益見通しは1,800億円以上で、前回公表(1,000億円以上)から800億円の上方修正となりました。前年度(2025年度)実績が56億円の損失だったことを踏まえると、1年で1,856億円規模の改善を見込む計算です。

この上方修正の要因として、米国のホットコイル(熱延コイル)市況の上昇による確実な需要捕捉(+600億円)と、日鉄からの技術者派遣による品質改善やシナジー進展、高炉再稼働効果のフル発揮といった収益改善努力(+200億円)を挙げています。

米国の粗鋼生産量も、米国鋼材市況の回復を追い風に底堅く推移しており、2025年は8,190万トンとなりました。一方、国内の鋼材需要は自動車・建設向けなどで長期的な減少傾向が続いており、こうした事情も重なって、日本の粗鋼生産量(8,070万トン)を44年ぶりに上回っています。

買収完了(2025年6月)から1年余りで、USスチールは製鉄事業の中でも稼ぎ頭の一角に育ちつつありますが、この改善のうち600億円は米国鋼材市況の上昇によるもので、市況変動の影響を受けやすい面がある点は留意が必要です。

一方、国内の製鉄事業は原燃料コストの上昇や中東情勢の影響を受け、厳しい環境が続いています。こうしたなか、名古屋製鉄所(愛知県東海市)では8月6日に次世代熱延ラインを竣工させるなど、付加価値の高い高級鋼材へのシフトを進めています。

2. 通期見通し:事業利益・当期利益とも上方修正

同社は通期見通しについて、売上収益を11兆2,000億円(前回11兆円から+2,000億円)、事業利益を6,300億円(前回5,300億円から+1,000億円)、当期利益を2,900億円(前回2,200億円から+700億円)、EPSを55.00円(前回42.00円)にそれぞれ引き上げています。

第1四半期時点の進捗率は当期利益ベースで約26.0%と、単純な四半期按分(25%)をやや上回るペースです。

この上方修正の理由には、米国鋼材市況の上昇や収益改善施策によるUSスチールの収益改善に加え、円安や原燃料等コストの上昇による在庫評価差益の拡大等が挙げられており、一過性の会計要因も含んでいる点には注意が必要です。

なお、上記の「実力ベース連結事業利益」(決算短信上の正式な事業利益とは別の社内管理指標)の通期見通しは7,000億円以上で据え置かれており、上記の通り国内・海外の綱引きの結果である点は押さえておきたいところです。

配当予想は1株につき24円(中間12円、期末12円)で、前回公表から変わりません。