5. 5期の売上高と純利益率が映す、直近の減速の中身
過去5期の売上高を並べる。2兆8,023億円、3兆5,434億円、3兆8,651億円、4兆1,043億円、そして2026年3月期が4兆1,327億円だ。増収は続いている。
一方で純利益は2,249億円、3,263億円、3,934億円、4,396億円と積み上がったあと、2026年3月期は3,763億円へ落ちた。ROE(自己資本利益率)も14.2%から11.3%へ下がっている。
何が起きたのか。2026年3月期3Q累計の短信で会社が述べているのは、建設機械・車両部門の失速だ。販売価格の改善に努めたものの、円高の影響と販売量の減少で減収となり、コスト増も重なって減益になったという。
対照的に、産業機械他部門は自動車産業向け大型プレスの販売増と、半導体産業向けエキシマレーザー関連のメンテナンス売上増で増収増益。リテールファイナンス部門も増益だったとしている。
主力が沈み、周辺が支えた期だったわけだ。3Q累計の営業利益率は14.4%で、前年同期を1.4ポイント下回っている。
2027年3月期1Qは売上高1兆431億円、営業利益1,515億円で始まった。通期予想に対する進捗は売上高で24%、営業利益で27%になる。
その通期計画は増収減益だが、利益率の水準そのものは崩していない。営業利益5,550億円を売上高4兆3,020億円で割れば12.9%で、機械業種の中央値の1.6倍にあたる。年間配当は190円が計画されている。
減益を織り込んだ計画でさえ、この床の高さを維持する。そこにこの会社の性格が出ていると読める。
6. 研究開発費は5期で1.6倍。1,211億円はどこへ向かっているか
研究開発費の推移も並べておきたい。774億円、906億円、1,034億円、1,104億円、そして2026年3月期は1,211億円。5期で1.6倍になった。
直近の内訳は、建設機械・車両事業が1,111億円、産業機械他事業が100億円。9割超が建機側に向かっている。
その中身について、会社は中長期の重点テーマとしてICT(情報通信技術)を挙げる。位置情報や稼働情報、機械診断情報を扱うリモート管理技術と、制御・知能化技術の研究開発を進めるとしている。
具体名も並ぶ。子会社のEARTHBRAINおよびティアフォーとの協業でアーティキュレートダンプトラックとリジッドダンプトラックの自動運転化を進め、2027年度までに自動運転システムの実用化を目指すという。鉱山向けにはApplied Intuitionと、次世代機の基幹技術となるソフトウェア・ディファインド・ビークルの開発で協業を開始した。
中期経営計画「Driving value with ambition 価値創造への挑戦」は2028年3月期がゴールで、成長戦略の3本柱としてイノベーションによる価値共創、成長性と収益性の追求、経営基盤の革新を掲げている。
数字で押さえると、5期で売上高は1.47倍、研究開発費は1.56倍。伸びの速さは研究開発費のほうが上だ。機械そのものを作る費用というより、機械の外側に足す価値への投資が増えていると読める。
7. 筆者コメント
利益率のピークを過ぎたようにみえるのが直近の姿だ。だがこれを循環の一巡と片づけるのは早い。
過去5期を通して見ると、売上の伸びより研究開発費の伸びのほうが速い。稼いだ分を、機械そのものより現場の運用を握る技術へ振り向けてきた期間だった。
この投資は損益計算書のうえでは費用として利益を削る。効果が出るのは何期も先だ。だからこそ、減益局面でこの水準を落とすかどうかが、会社の本気度を測る物差しになる。
イメージが更新されにくいのは、たぶん見た目のせいだろう。現場に立っているのは黄色い機械で、通信網は目に見えない。報道も新型機の投入を先に伝える。
だからこそ、有価証券報告書の研究開発の欄まで読む価値がある。決算短信の数字の外側に、この会社の輪郭は書かれている。そこまで目を通すことをおすすめしたい。
参考資料
8.1 免責事項
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石津 大希
