定年退職を迎えて年金生活に入ると、現役時代のように十分な収入を得ることが難しくなり、多くのご家庭が少しずつ貯蓄を切り崩しながら生活することになります。

毎月の赤字が数万円なら何とかなりそうに見えます。ところが老後は同じ状態が何十年も続くため、積み上がる金額は思ったより大きくなります。

65歳以上の夫婦のみ無職世帯では毎月約4万2000円が不足しており、1年で約50万円、10年で約500万円を貯蓄から取り崩す計算になります。

三石 由佳
月単位で見ると小さく感じる差額でも、10年20年という単位では大きな金額になります。時間軸を伸ばして眺めておくことが大事です。

本記事では、65歳以上の無職夫婦世帯の家計収支と平均貯蓄額、2026年度の年金額、そして年金にゆとりを感じられない理由を解説します。

なお、65歳以上世帯の貯蓄額や家計収支、年金額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。

【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
【最新データ】老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額と年金月額は?老後夫婦のリアルな生活費と家計収支を解説
【最新データ】老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額と年金月額は?老後夫婦のリアルな生活費と家計収支を解説
ココがポイント
  • 65歳以上の無職夫婦は毎月約4万2000円が不足し、10年で約500万円の取り崩しになります
  • 同世帯の平均貯蓄額は2494万円で、2024年の2560万円から66万円減りました
  • 60歳代の32.6%が「日常生活費程度もまかなうのが難しい」と回答しています

1. 老後資金は10年で約500万円。65歳以上の無職夫婦の家計収支を見る

まず毎月の収支から確認します。65歳以上・無職夫婦世帯の家計収支について、LIMOの記事「【最新データ】老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額と年金月額は?老後夫婦のリアルな生活費と家計収支を解説」から要点を引用して確認しておきましょう。

総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、実収入の合計が25万4395円(うち公的年金などの社会保障給付が22万8614円)、支出は消費支出26万3979円と非消費支出3万2850円を合わせて29万6829円。単純計算で毎月約4万2000円が不足し、この収支差が続くと1年間で約50万円、10年間で約500万円の不足となります。

出所:【最新データ】老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額と年金月額は?老後夫婦のリアルな生活費と家計収支を解説

支出29万6829円のうち3万2850円は非消費支出です。税や社会保険料は年金からも引かれるため、手元に残る額は額面より少なくなります。

2. 老後資金の残高。65歳以上の無職夫婦の平均貯蓄は2494万円

取り崩す側の残高も見ておきましょう。同じく「【最新データ】老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額と年金月額は?老後夫婦のリアルな生活費と家計収支を解説」から引用します。

総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2025年(令和7年)平均結果の概要-(二人以上の世帯)」によると、世帯主が65歳以上の無職世帯(二人以上の世帯)における平均貯蓄額は2494万円です。この平均貯蓄額は、2024年の2560万円から66万円(▲2.6%)減少し、6年ぶりにマイナスに転じました。内訳をみると、最も割合が大きいのは「定期性預貯金」で778万円、次いで「通貨性預貯金」が766万円、「有価証券」が510万円、「生命保険など」が426万円、「金融機関外」が13万円と続きます。

出所:【最新データ】老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額と年金月額は?老後夫婦のリアルな生活費と家計収支を解説

前年から66万円減っており、6年ぶりのマイナスです。年間の不足額約50万円と近い水準で、取り崩しが平均値に表れているとも読めます。

2.1 老後資金は中央値で見ると1777万円

平均値は一部の世帯に引っ張られます。中央値も「【最新データ】老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額と年金月額は?老後夫婦のリアルな生活費と家計収支を解説」から確認しておきましょう。

有職世帯も含めた65歳以上の二人以上世帯では、平均貯蓄額は2564万円です。しかし、より実態に近いとされる中央値(貯蓄ゼロ世帯を除く)は1777万円となり、平均値と約790万円もの開きがあります。貯蓄額の分布をみると、2500万円以上の貯蓄を持つ世帯が全体の36.3%を占める一方で、300万円未満の世帯も14.9%存在します。一部の貯蓄額が非常に多い世帯が、全体の平均値を押し上げている構造が分かります。

出所:【最新データ】老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額と年金月額は?老後夫婦のリアルな生活費と家計収支を解説

中央値1777万円で年間約50万円を取り崩すと、単純計算で35年分にあたります。ただし300万円未満の世帯も14.9%あり、状況は世帯ごとに大きく違います。

3. 老後資金の収入源となる2026年度の年金額を押さえる

公的年金額は、物価や現役世代の賃金を考慮して年度ごとに改定されるルールです。2026年度分は前年度より国民年金(基礎年金)が1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%増額され、4年度連続のプラス改定となりました。

3.1 2026年度の年金額例

  • 国民年金(老齢基礎年金(満額)):7万608円(1人分※1
  • 厚生年金:23万7279円(夫婦2人分※2

※1 昭和31年4月1日以前生まれの老齢基礎年金(満額1人分)は月額7万408円(対前年度比+1300円)
※2 男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準

夫婦2人分の23万7279円は、夫婦のみ無職世帯の実収入25万4395円に近い水準です。それでも支出29万6829円には届きません。

なお、年金額自体は国民年金1.9%、厚生年金2.0%増えていますが、「マクロ経済スライド」の発動により、実質的には目減りしている点には注意が必要です。マクロ経済スライドは、公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びに基づく「スライド調整率」の分を、賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除する仕組みです。

4. 老後資金を支える年金の平均月額と男女差を確かめる

厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2024年度末現在の平均年金月額は次のとおりです。

※厚生年金の被保険者は第1号~第4号に区分されており、ここでは民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」(以下記事内では「厚生年金」と表記)の年金月額を紹介します。また、厚生年金の月額には国民年金(老齢基礎年金)部分が含まれています。

国民年金の平均年金月額2/5

国民年金の平均年金月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

4.1 国民年金(老齢基礎年金)の平均年金月額

〈全体〉平均年金月額:5万9310円

  • 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万7582円

出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説

厚生年金の平均年金月額3/5

厚生年金の平均年金月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

4.2 厚生年金(国民年金部分を含む)の平均年金月額

〈全体〉平均年金月額:15万289円

  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説

※厚生年金の金額には国民年金の金額を含みます。

厚生年金の男女差は約5万8000円です。夫婦がともに厚生年金を受け取る場合と、片方が国民年金のみの場合では、世帯の収入が大きく変わります。

グラフのとおり受給権者の間で年金額には大きな個人差があります。自分の年金見込み額は「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認できます。

5. 老後資金にゆとりがないと感じる理由はどこにあるのか

J-FLEC(金融経済教育推進機構)が2025年12月に公表した「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」では、60歳代・70歳代の二人以上世帯において、60歳代の32.6%、70歳代の30.6%が「日常生活費程度もまかなうのが難しい」と回答しています。

5.1 年金にゆとりがないと感じる理由

「年金にゆとりがない」と感じる理由とは?4/5

「年金にゆとりがない」と感じる理由とは?

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

上位に挙がるのは物価上昇と、医療費・介護費負担の増加です。いずれも年齢とともに重くなりやすい項目です。

リタイア後は現役時代より収入が減るのが一般的です。物価が上がり続ける局面では、同じ生活を続けるだけで支出が膨らんでいきます。

加えて、年金は偶数月に2カ月分まとめて支給されます。毎月給料日があった現役時代とは家計管理のサイクルが変わるため、支給の間隔に合わせたやりくりが求められます。

三石 由佳
赤字額が分かれば、貯蓄が何年もつかも計算できます。まずは自分の年金額と支出を把握することから始めましょう。