県外からは複数の性的マイノリティ当事者グループが参加

この日は奈良市、姫路市、名古屋市とそれぞれ遠方から性的マイノリティの当事者やその家族のグループが和歌山市にやってきて、ブース出展していました。各グループの活動の内容や目指すところは少しずつ異なりますが、共通して述べていたことがあります。

それは、性的マイノリティへの偏見・差別はいまだ強く、当人が性的マイノリティであるか否かにかかわらず、当事者グループの会合に参加するだけで周囲から何を言われるかわからない。そのため、地元に性的マイノリティのグループがあっても参加しづらく、市外や県外の遠方のグループに参加するという人も少なくない、という話です。

だからこそ、性的マイノリティのグループは他の地方のイベントに参加します。たとえば、Aという地域のグループはBという地域のイベントに参加し、B地域の情報を仕入れて持ち帰り、A地域に住んでいるけれどA地域ではグループやイベントに参加しづらい人たちに提供します。また、自分たちA地域のグループの存在をB地域の当事者に知らせて、B地域では参加しづらい人たちにA地域に来てもらえるようにするのです。

当事者グループの数が少ない地方の街ではそのように互いに行き来して、当事者が参加できるグループの「選択肢を増やす」ということをしているのだと、各グループの代表者氏は異口同音に話していました。

主催者が語るレインボーフェスタ和歌山

「レインボーフェスタ和歌山」というイベントを主催・運営している人たちはこのイベントをどのように捉え、何を目標に活動しているのでしょう。レインボーフェスタ和歌山実行委員長・安西美樹さんにお話を伺いました。

レインボーフェスタ和歌山開催のきっかけ

――最初に、レインボーフェスタ和歌山を開催のきっかけを教えてください。

「私はFTMと言って、出生時に女性と判定され、現在は男性として生きているトランスジェンダーで、性的マイノリティの1人です。私は和歌山県に生まれて育ちましたが、県としては『県内に性的マイノリティは存在しない』という認識でした」

――当事者の姿が行政には見えていなかったのですね。

「そうです、私たちはいないことになっていたのです。県や市といった行政や県内市内に住む人たちに、和歌山にも性的マイノリティは実際に存在して生活しているんだということをまずは知ってもらいたくて、イベントを企画しました。

会場の西の丸広場は和歌山市役所の正面にあって、県庁もすぐ近くです。イベントという目に見えるかたちをつくって、さらに県や市の後援もいただいてますから、県知事や市長にもそろそろ存在が伝わっているのではないかと思います」

――ほかの地方の「レインボー」とつく多くのイベントと少し違って、性的マイノリティ以外のマイノリティも一緒に、ということですが?

「イベントの企画を進行するうちに、性的マイノリティだけでなく、ほかにもいろんなマイノリティがいて、同じように社会にあまり認識されていないことに気づいたのです。その人たちも一緒に「私たちはここにいる」ということを行政にも県民市民にもアピールしようと思い、それぞれのコミュニティに声をかけて実現しました」