テレビのニュースや自治体の広報誌でよく耳にする「住民税非課税世帯」。この世帯に該当すると、医療・介護の負担が大幅に軽減されたり、様々な給付金の対象になったりと、家計において非常に大きなメリットを享受できます。9月から10月にかけては、多くの自治体で住民税の申告相談や証明書発行の窓口が混み合う時期でもあり、制度を正しく知っておく価値は大きいといえます。

しかし、制度の仕組みを正しく理解していないために、「自分は年金が多いから対象外だ」と勘違いして申請を諦めたり、逆に「少しでも多く稼ごう」とパートを増やした結果、ボーダーラインをわずかに超えてしまい、かえって世帯全体の手取りが減る場合もありえます。

本記事では、住民税非課税世帯の収入ボーダーライン(目安)を解説するとともに、知っておきたい制度の仕組みについて徹底的に深掘りします。

神田 翔平
この記事では、代表的な優遇制度から、収入が増えたときに起こり得る損得の逆転構造まで、順番に整理していきます。

なお、住民税非課税世帯の収入ボーダーラインや優遇制度については、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【住民税非課税世帯】給与・年金の収入基準《ボーダーラインはいくら?》知っておきたい5つの優遇制度!制度の基本とファクトを網羅した完全ガイド
【住民税非課税世帯】給与・年金の収入基準《ボーダーラインはいくら?》知っておきたい5つの優遇制度!制度の基本とファクトを網羅した完全ガイド
ココがポイント
  • 遺族年金や障害年金は「非課税所得」のため、いくら受け取っていても非課税判定の数字には含まれない
  • 非課税の年収ラインは世帯人数だけでなく、給与か年金かという収入の種類によっても変わる
  • 定年退職して年金だけの生活になっても、税金の計算には「前年所得」を使うため、すぐには非課税世帯にならない

1. 国保・年金・保育料…住民税非課税世帯で使える「5つの優遇制度」

一定以下の所得水準に該当する世帯は「住民税非課税世帯」として扱われ、さまざまな公的支援を受けられる可能性があります。

近年は感染症対策や物価高への対応策として、住民税非課税世帯を中心に現金給付をはじめとした多様な支援施策が実施されてきました。

こうした世帯に対する支援は給付金に限りません。社会保険料の負担軽減や教育費支援など、長期間にわたって活用できる制度も整備されています。ここでは代表的な5つの制度を確認していきましょう。

【一覧表】住民税非課税世帯への優遇措置1/6

【一覧表】住民税非課税世帯への優遇措置

LIMO編集部作成

1.1 国民健康保険料(応益割)の減額

応益分保険料(均等割・平等割)の「7割・5割・2割」のいずれかを減額

1.2 介護保険料の減額

第1号被保険者(65歳以上)が対象。減額される金額は自治体ごとに異なる

1.3 国民年金保険料の免除・納付猶予

全額免除・一部免除・納付猶予のいずれか

1.4 保育料の無償化

0歳から2歳までの保育料が無償化され、3歳からの無償化とあわせて0〜5歳までの保育料が実質無料になります。

1.5 高等教育の修学支援新制度

授業料・入学金の免除または減額に加え、返還を要しない給付型奨学金も用意されており、大学・短期大学・高等専門学校・専門学校の実質無償化につながる制度です。

これら以外にも、各自治体が独自に実施している支援制度を含めると、利用できる施策はさらに多岐にわたります。続いて、「住民税非課税世帯」とは具体的にどのような状態を指すのか、制度の基本的な考え方を見ていきましょう。

神田 翔平
5つの制度のうち、国保や介護保険料の減額は自治体側の判定で自動的に適用されますが、国民年金保険料の免除は自分で申請しない限り始まりません。「自動で受けられるもの」と「自分で動く必要があるもの」を分けて把握しておくと安心です。

2. そもそも「住民税非課税世帯」とは?税の仕組みからおさらい

まずは、「住民税非課税世帯」とは何かについて整理しておきましょう。住民税の仕組みを踏まえながら、非課税となる条件を確認します。

2.1 「均等割」と「所得割」、住民税の2階建て構造

住民税は「均等割」と「所得割」の2層構造2/6

住民税は「均等割」と「所得割」の2層構造

出所:総務省「個人住民税」

住民税は都道府県や市区町村に納める地方税であり、地域の行政サービスや公共インフラを支える財源として活用されています。

個人に課される住民税は、次の2種類から構成されています。

  • 均等割:所得に関係なく一律に課税される部分
  • 所得割:所得に応じて税額が決まる部分

この2つの税負担がいずれも発生しない状態を「住民税非課税」と呼びます。そして、世帯全員が住民税非課税である場合、その世帯は「住民税非課税世帯」に該当します。

なお、所得割のみが非課税となるケースも存在します。ただし、支援制度の対象になるかどうかは自治体ごとに異なるため、詳細は居住地の自治体へ確認することが大切です。

3. 非課税になるかどうかを分ける3つの判定基準

住民税が課されない主な条件は、次のいずれかに該当する場合です。

  1. 生活保護を受給している
  2. 障害者、未成年者、寡婦(夫)、ひとり親で、前年所得が135万円以下
  3. 前年所得が自治体の定める基準額を下回る

このうち、1と2については全国共通のルールです。一方で、3の所得基準は自治体ごとに設定されているため、具体的な金額は地域によって異なります。次は、その基準額の目安を具体的に見ていきましょう。

4. 収入はいくらまでセーフ?非課税の所得基準を計算式で確認

住民税非課税世帯の判定基準について、ここでは兵庫県神戸市の例をもとに確認します。

住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?3/6

住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?

出所:神戸市「いくらまでの収入なら住民税(市県民税)が課税されませんか?」

35万円 ×(本人+同一生計配偶者(※)+扶養親族数)+10万円+21万円

※21万円は、同一生計配偶者または扶養親族がいる場合のみ加算されます。
※同一生計配偶者とは、生計を一にし、前年の合計所得金額が58万円以下の配偶者を指します。

この基準を超えない場合、住民税(市県民税)は課税されません。

5. 神戸市モデルで見る、単身・扶養ありの具体的な年収ライン

住民税の非課税ラインは、世帯人数だけでなく収入の種類によっても異なります。

ここでいう所得とは、収入から各種所得控除を差し引いた後の金額です。そのため、神戸市の基準を実際の収入額に置き換えると、次のようになります。

単身世帯

合計所得金額45万円以下の方

  • 給与収入のみで収入金額110万円以下
  • 年金収入のみで収入金額155万円以下(65歳以上)
  • 年金収入のみで収入金額105万円以下(65歳未満)

同一生計配偶者か扶養家族が1名いる場合

合計所得金額101万円以下の方

  • 給与収入のみで収入金額166万円以下
  • 年金収入のみで収入金額211万円以下(65歳以上)
  • 年金収入のみで収入金額171万3334円以下(65歳未満)

単身世帯であれば、給与収入のみの場合は年収110万円以下、65歳以上で年金収入のみの場合は155万円以下が一つの目安です。配偶者や扶養親族がいる世帯では非課税ラインが引き上げられ、65歳以上の夫婦世帯で年金収入のみの場合、年収211万円程度まで非課税となる可能性があります。

5.1 扶養親族が3人いる世帯なら、非課税ラインはどこまで伸びる?試算してみる

上記の計算式を使うと、扶養親族が3人いる世帯(本人・配偶者・扶養親族3人=合計5人)の合計所得金額の基準は次のように計算できます。

35万円 × 5人 + 10万円 + 21万円 = 206万円

年金収入のみ・65歳以上の世帯であれば、公的年金等控除(年金収入330万円未満の場合、原則110万円)を差し引いて所得を計算するため、年金収入の目安は「206万円+110万円=316万円」までが非課税の範囲に入ってくる計算です。扶養親族が増えるほど、年金収入ベースの非課税ラインは大きく広がっていきます。

なお、給与収入のみの場合は、収入額が上がるにつれて給与所得控除の計算方法自体が変わるため、単純な足し算では正確な年収に換算できません。給与収入が中心の世帯は、正確な金額をお住まいの自治体窓口で確認することをおすすめします。あくまで一定の前提を置いた目安の試算であり、実際の判定は自治体が発行する証明書等で確認してください。

神田 翔平
扶養親族の人数によって非課税ラインは数十万円単位で動きます。ご家族の状況を確認する際は、扶養に入っている人数を正確に数えたうえで、この計算式に当てはめてみてください。

6. ボーダーラインをわずかに超えると、かえって損をする?

住民税非課税世帯の制度において意識したいのが、収入が一定の境界を超えることで発生する「実質的な負担増の仕組み」です。制度の仕組みを把握しておかないと、意図せず不利益を感じる原因になる場合があります。

6.1 「パートの働きすぎ」や「社会保険の壁」がもたらす影響

例えば、非課税世帯の基準となる境界線付近でパートの就業時間を増やし、年収を一定額以上に引き上げた場合、非課税の対象から外れることで各種の優遇措置や給付金を受けられなくなるケースがあります。その結果、収入の増加分以上に負担や喪失分が大きくなり、就労時間に対する手取りの伸びが鈍化する現象が問題視されることがあります。

同様の状況は、年金の繰下げ受給によって受給額が増加した際にも、判定基準の境界を跨ぐことでバランスが変化する事例として議論されています。

6.2 手取り額(可処分所得)ベースで損益分岐点を見極める

この「崖」を回避するための鉄則は、額面の収入ではなく、税金や社会保険料を差し引いた後の「手取り額(可処分所得)」ベースで家計を考えることです。ボーダーライン付近にいる方は、配偶者の扶養の範囲内にきっちり収めるか、あるいは社会保険料の負担増を跳ね返して手取りが実質的にプラスに転じるラインまで踏み込むか、の二択を意識する必要があります。

中途半端に社会保険の壁(106万円や130万円)を少しだけ超える働き方は、一時的に手取りの目減りや伸び悩みを引き起こす原因となるため、自身の時給や勤務時間、会社の規模を踏まえた損益分岐点をあらかじめ把握しておきましょう。

6.3 非課税ボーダーラインを10万円超えると、負担はどれくらい増える?モデルケースで試算

65歳以上・単身で、年金収入が非課税ラインの155万円から165万円に増えたケースを想定します。

合計所得金額 = 年金収入165万円 - 公的年金等控除110万円 = 55万円

単身世帯の非課税基準(合計所得金額45万円以下)を10万円上回るため、課税世帯に転落します。ここで発生し得る負担増を大まかに整理すると、次の3点が挙げられます。

  • 住民税:均等割(自治体ごとに年5000円前後が目安)と所得割が新たに発生する
  • 国民健康保険料・介護保険料:均等割の軽減(7割軽減など)が縮小・消滅し、自治体によっては年間数万円規模の負担増につながる
  • 高額療養費:自己負担限度額の区分が「非課税」から「一般」に上がり、医療費がかさんだ際の上限額が引き上げられる

年金収入が10万円増えただけで、税・社会保険料・医療費の上限という3つの面でまとめて負担増が重なり、増えた収入以上に手取りが目減りする可能性があることが分かります。実際の負担額は自治体や所得の内訳によって異なるため、あくまで一定の前提を置いた目安の試算としてご覧ください。

7. 退職してすぐは対象外?「前年所得」で決まる非課税のタイムラグ

非課税世帯の判定において、「いつから非課税世帯として認定されるのか」というタイミングの問題も注意が必要です。

7.1 住民税の計算は「前年の1月〜12月」の所得で決まる基本ルール

住民税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間の所得に基づいて計算され、翌年の6月から課税(徴収)が始まります。したがって、今現在の収入がゼロであったとしても、「去年の収入」がボーダーラインを超えていれば、今年は課税世帯として扱われます。

7.2 定年退職1年目の家計を直撃する「現役並みの税金・保険料」への備え

たとえば、長年勤めた会社を3月に定年退職し、4月から年金生活に入ったとします。4月以降の収入は大幅に減りますが、退職年の6月頃から本格的に支払う住民税(普通徴収)や、退職直後の納付額は「前年(会社員時代)の高い給与」を元に計算されています。

そのため、退職して完全に年金生活になり、その年の所得が非課税のボーダーラインを下回ったとしても、その収入減が住民税の課税内容に反映され、実際に「住民税が非課税」に切り替わるのは【退職した年の翌々年の6月以降(新年度の住民税決定時)】となります。

ただし、退職初年度の数カ月間から1年間は前年所得をベースにした税負担や国民健康保険料の納付が続くため、あらかじめ手元の現金をしっかりと確保しておく必要があります。

7.3 配偶者との死別など、急な単身化による「ステータス変化」

この税金や保険料の算定における前年所得とのタイムラグは、夫婦のどちらかが亡くなった場合にも影響します。

夫(世帯主)が課税対象者で妻が非課税対象者だった場合、世帯としては「課税世帯」です。夫が亡くなり、妻が世帯主の単身世帯になれば、妻自身の前年所得がボーダー以下であれば非課税世帯となります。

しかし、こうした世帯状況の変更に伴う国民健康保険料の再計算や、非課税世帯向けの給付金の基準日(いつ時点の世帯状況・所得で判断するか)の扱いは複雑です。大きなライフイベントがあった際は、自分たちの世帯がどのタイミングで非課税ステータスや減免の対象になるのか、早めに自治体のホームページなどの案内を確認し、窓口で相談することが重要です。

8. なぜシニア世代ほど非課税世帯の割合が高いのか

厚生労働省「令和6年 国民生活基礎調査」をもとに、年代別の住民税課税世帯の割合を見てみましょう。

【一覧表】住民税課税世帯の年代別割合5/6

【一覧表】住民税課税世帯の年代別割合

出所:厚生労働省「令和6年国民生活基礎調査」(第131表)をもとにLIMO編集部作成

  • 29歳以下:63.0%
  • 30〜39歳:87.5%
  • 40~49歳:88.2%
  • 50~59歳:87.3%
  • 60~69歳:79.8%
  • 70~79歳:61.3%
  • 80歳以上:52.4%
  • 65歳以上(再掲):61.1%
  • 75歳以上(再掲):54.4%

※ 全世帯数には、非課税世帯及び課税の有無不詳の世帯を含む
※ 総数には、年齢不詳の世帯を含む
※ 住民税課税世帯には、住民税額不詳の世帯を含む

30代から50代ではおよそ9割近くが課税世帯となっていますが、65歳以上では約6割、75歳以上では5割強まで低下しています。年齢が上がるほど課税世帯の割合が減少していることが分かります。

高齢期になると、収入の中心が給与から年金へ移行し、現役時代と比べて所得水準が低くなる傾向があります。さらに、65歳以上に設けられた公的年金等控除や、遺族年金が非課税所得として扱われる仕組みも重なり、高齢世帯は住民税非課税世帯に該当しやすい構造となっています。

9. 「年金だけで生活」は41.3%。残り6割近くの実態は?

厚生労働省「2025年 国民生活基礎調査の概況」によると、公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のうち、総所得のすべてを公的年金・恩給で賄っている世帯は41.3%でした。見方を変えると、6割近くの世帯は年金以外の収入源も活用しながら生活していることになります。

高齢者世帯の総所得に占める公的年金・恩給の割合(別世帯構成)6/6

高齢者世帯の総所得に占める公的年金・恩給の割合(別世帯構成)

出所:厚生労働省「2025年 国民生活基礎調査の概況」図11をもとにLIMO編集部作成

  • 20%未満:4.2%
  • 20〜40%未満:9.7%
  • 40〜60%未満:13.6%
  • 60〜80%未満:14.1%
  • 80〜100%未満:17.1%
  • 100%(すべてが公的年金・恩給):41.3%

公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のうち、「総所得の80%以上を公的年金に依存している世帯」は58.4%を占めています。多くの高齢世帯に共通する課題は、収入と支出のバランスをどう維持するかという点です。

生活費が年金収入を上回るケースもあり、私的年金や預貯金の活用、資産運用による補完、就労の継続や家族からの支援、公的扶助制度の利用など、複数の手段を組み合わせて対応している世帯も多く見られます。老後の家計を安定させるためには、将来の収支を早い段階から見据え、現実的な準備を進めていくことが大切です。

神田 翔平
「年金だけで足りるか」だけでなく、「年金以外の収入をどこまで増やすと非課税判定に影響するか」もあわせて確認しておくと、老後の収入設計がぶれにくくなります。

10. 支援の手厚さは自治体次第?独自施策も要チェック

国の制度として設けられている非課税世帯向け支援に加え、実際には市区町村ごとに独自の優遇制度を設けているケースも少なくありません。同じ住民税非課税世帯であっても、住んでいる自治体によって受けられる支援内容には差があります。

10.1 水道料金の減免制度を設ける自治体も

住民税非課税世帯や低所得世帯を対象に、水道料金や下水道使用料の減額制度を実施している自治体があります。たとえば、さいたま市では、市民税・県民税非課税世帯を対象に、水道料金と下水道使用料の減額制度を設けています。(出所:さいたまこそだてWEB

家計の中で水道光熱費は毎月発生する固定費であるため、こうした減免制度は継続的な負担軽減につながります。

10.2 ごみ袋支給や交通費補助を行う自治体もある

自治体独自支援は公共料金だけではありません。指定ごみ袋の無料配布、高齢者向けバス乗車券の助成、タクシー利用券の交付、外出支援の交通費補助などを実施しているケースがあります。特に高齢者世帯では、通院や買い物にかかる移動費が家計負担になりやすいため、交通支援制度が生活を支える役割を果たしています。

10.3 災害見舞金や独自給付金につながる場合も

近年は物価高対策として、自治体独自の給付金を実施するケースも増えています。水道基本料金の減免や生活支援給付金などを独自に行う自治体もあり、支援内容は地域によって大きく異なります。また、自然災害発生時には、住民税非課税世帯や低所得世帯を対象に見舞金や生活再建支援を上乗せする自治体もあります。

住民税非課税世帯向けの支援というと、国の給付金や保険料軽減制度が注目されがちですが、実際には自治体独自の支援のほうが長期間にわたり家計を支えるケースもあります。非課税判定を受けた場合は、市区町村のホームページや福祉窓口で利用できる制度を一度確認しておくことが重要です。

11. 非課税世帯は経済対策の中でどう位置づけられてきたか

ここ数年の経済対策を見ると、支援の対象や手法には変化が生じています。以前は住民税非課税世帯への現金給付が中心でしたが、現在は減税や子育て支援などを組み合わせた、より多面的な支援策へと広がりつつあります。

11.1 定額減税は今後も実施される可能性がある政策

2024年に実施された経済対策では、物価上昇による家計負担を和らげる目的で定額減税が導入されました。この制度では、所得税3万円と住民税1万円を合わせた1人あたり4万円が減税対象となり、夫婦と子ども2人の4人世帯であれば合計16万円分の負担軽減を受けられる仕組みとなっていました。

定額減税そのものは一度限りの措置として行われましたが、税負担を直接軽減する仕組みは今後の経済対策でも有力な選択肢とみられています。経済情勢によっては、同様の減税制度や、減税と給付を組み合わせた新たな支援策が検討される可能性もあるでしょう。

11.2 子育て世帯を対象とした支援も拡大

近年の政策では、低所得世帯だけでなく、子育て世帯全体を対象とした支援の強化も進められています。例えば、こども家庭庁による「物価高対応子育て応援手当」では、18歳以下の子どもを養育する世帯に対する給付が行われました。こうした支援は、従来のように住民税非課税世帯のみを対象とするものではなく、子育て世帯全体へ幅広く支援を届ける点が特徴です。

11.3 2026年以降は「給付付き税額控除」などの制度も議論

今後の制度として注目されているのが、「給付付き税額控除」の導入です。この仕組みは、まず税額控除によって負担を軽減し、それでも控除しきれない場合には現金給付によって補完するというものです。低所得世帯や住民税非課税世帯を含め、幅広い層への支援を目的として検討が進められています。

12. 「世帯分離」で非課税になれる?安易な選択に潜むデメリット

世帯分離とは、同じ家に住みながら住民票上の世帯を分ける行政上の手続きです。例えば、収入のある子と年金暮らしの親が同居している場合、世帯分離を行って親を独立した世帯にすることで、親の所得が少なければ親の世帯が「住民税非課税世帯」となり、介護保険料や医療・介護の高額療養費等における自己負担限度額が軽減されるメリットを受けられることがあります。

しかし、これには「生計が別である」という実態が必要です。分離によって国民健康保険料の均等割などが世帯ごとに個別算定される影響が生じるほか、親が家族の健康保険(社会保険)の被扶養者から外れる必要が生じる場合は、家族側の社会保険料や税負担(扶養控除の適用など)に影響が出る恐れもあります。

12.1 国保の「平等割」でかえって世帯全体の保険料が上がるリスク

世帯分離の最大の落とし穴は、国民健康保険料のアップです。国保の保険料には、世帯ごとに一定額が定額でかかる「平等割」という仕組みがあります。世帯分離をして世帯が2つに分かれると、この「平等割」がそれぞれの世帯に対して二重にかかってきます。親の介護保険料が安くなったとしても、世帯全体で見ると国保の負担増のほうが上回り、トータルで赤字になるケースが頻発しています。

所得や資産要件、自治体の基準によって軽減が受けられない場合もあるため、詳細なデメリットやリスクについては専門解説も参考にしつつ、事前に市区町村の窓口等で十分なシミュレーションを行うことが不可欠です。

13. 「非課税世帯はずるい」論の実態と、資産要件をめぐる最新動向

厚生労働省の調査によると、住民税非課税世帯のうち、世帯主が65歳以上の高齢者世帯が全体の75%以上を占めています。現役を引退し、収入が年金のみとなれば、必然的に所得が下がりボーダーラインを下回る人が増えるためです。

13.1 貯蓄数千万円でも非課税?制度の歪みに対する最新の議論

現在の住民税非課税世帯などの判定基準は、世帯全員の「前年の所得」のみに基づいており、保有している預貯金や不動産といった資産状況は反映されません。そのため、多額の退職金や自宅などの資産を有するシニア層であっても、年金収入などが少なく所得が基準額以下であれば非課税世帯となります。

一方で、働きながら子育てをする現役世代は、わずかな所得の差で課税世帯となって恩恵を受けられないという逆転現象が生じやすく、資産と所得の乖離による制度の公平性やあり方について議論が続いています。

13.2 【2026年動向】今後の給付金における「金融資産要件」をめぐる議論

「資産はあるが所得が低い層」への支援のあり方については、公平性の観点から見直しを求める声が一部にあります。今後の経済対策や新たな給付制度(給付付き税額控除の検討など)の議論においては、所得要件に加えて世帯の資産状況をどのように反映させるかが長期的な課題として挙げられています。現時点では住民税非課税などの所得基準が中心ですが、制度の持続可能性を巡る今後の動向には注意が必要です。

14. 住民税の課税・非課税の区分は医療費や保険料の負担にも波及する

近年の経済対策は、その都度内容や対象が見直されており、受けられる支援も一律ではなくなっています。そのため、「どの給付金が実施されているか」だけではなく、自身の所得区分や世帯状況が制度上どの位置にあるのかを理解しておくことが重要です。

特に住民税の課税・非課税の区分は、医療費の自己負担割合や社会保険料、さらには自治体独自の助成制度にも関わってきます。わずかな所得差によって対象の可否が変わるケースもあるため、自分の状況を正確に把握しておく必要があります。

公的支援は、ただ待つだけでは十分に活用できません。制度の仕組みを理解し、自ら確認して利用することが大切です。そのためにも、まずは自身の税区分や利用可能な制度を正しく把握しておくことが、安心した暮らしにつながるでしょう。

神田 翔平
非課税かどうかの判定は自治体や年度によって細かな運用が変わることもあるので、大きな収入の変化があった年は、思い込みで判断せず窓口で確認する習慣をつけておくと安心です。

15. よくある質問(FAQ)

15.1 Q1. 自分が非課税世帯かどうか、ネットのシミュレーションツールで正確にわかりますか?

A. ネット上のツールはあくまで「目安」です。配偶者控除や医療費控除、社会保険料控除などの適用状況によって所得の計算結果は大きく変わりますし、自治体(級地)によってボーダーラインも異なります。最終的な正確な判定は、必ずお住まいの役所が発行する「課税証明書(非課税証明書)」等で確認してください。

15.2 Q2. 年度の途中で世帯主が亡くなった場合、非課税世帯の判定はどうなりますか?

A. 住民税は毎年1月1日時点の状況と前年の所得で判定されます。年度の途中で世帯主が亡くなっても、1月1日時点で課税されたその年度の住民税の納税義務はなくならず、相続人が引き継ぎます。世帯状況の変化に伴う非課税世帯の該当有無や各種給付金の判定については、自治体や時期によって基準が異なるため、お住まいの市区町村窓口での確認が必要です。