5. 過去5期が示す、利益と資本の目減り

5期の並びを見ると、この会社の局面がはっきりする。営業利益は2022年3月期の2,473億円から3,771億円、5,687億円へ伸びた。

そこから2025年3月期は697億円、2026年3月期は580億円へ落ちている。2年で10分の1になった計算だ。

当期損益はもっと荒い。2024年3月期は4,266億円の純利益だったが、2025年3月期は6,708億円の純損失、2026年3月期も5,330億円の純損失。2期で1兆円を超える赤字を出した。

大きく効いたのが減損損失である。2025年3月期に4,949億円、2026年3月期に3,662億円。2026年3月期の減損は、そのほぼ全額が自動車事業に立っている。

売上は12兆円台を維持した。2026年3月期は12兆78億円で前期比▲4.9%。ただ営業利益率は0.48%まで薄くなっている。輸送用機器の営業利益率中央値5.31%と比べれば、10分の1に近い水準だ。

研究開発費は2026年3月期で5,625億円。従業員数は前期の132,790人から120,079人へ減った。稼ぐ力を落としながら、投資と人員の両方を調整している時期だと読み取れる。

5.1 自己資本比率24.2%という土台

資本の側も薄くなっている。自己資本比率は2022年3月期の28.0%から2024年3月期に30.1%まで上がったあと、2025年3月期26.1%、2026年3月期24.2%へ低下した。

輸送用機器の中央値は53.2%。その半分に届かない。ROE(自己資本利益率)は2期連続でマイナスで、2026年3月期は▲10.9%だった。

もっとも、この数字を単純に薄いと決めつけるのは早い。貸出やリースの資産を抱える販売金融を連結しているぶん、総資産は膨らみやすい構造がある。自己資本比率だけを取り出して他の自動車メーカーと並べると、比較にならない部分が残る。

6. 自動車事業のキャッシュはどこまで持つのか

会社は自動車事業のキャッシュを別建てで開示している。1Qの自動車事業のフリーキャッシュフローは3,239億円のマイナスだった。

自動車事業のネットキャッシュは9,692億円で、前期末から2,012億円減っている。1四半期で2,000億円が出ていった計算になる。

連結の営業キャッシュフローは371億円のプラスで、前年同期の842億円のマイナスから転じた。ただこれは販売金融の営業キャッシュフローが3,046億円のプラスであることに支えられた数字だ。自動車事業だけを見れば2,674億円のマイナスである。

利益は黒字に戻り、キャッシュはまだ出ていく。この二つが同時に起きているのが今の姿だろう。

連結ベースでも構図は似ている。2026年3月期の営業キャッシュフローは7,946億円のプラス、投資キャッシュフローは9,143億円のマイナスだった。稼いだ現金を投資が上回る状態が続いている。

設備投資は2026年3月期で4,992億円。前期の5,773億円から絞り込んだが、それでも営業キャッシュフローの6割を超える規模だ。減損を計上した資産の入れ替えが続くあいだ、この重さは残るだろう。

手元の9,692億円が減る速さと、自動車事業の赤字が縮む速さのどちらが勝つか。そこが再建の分かれ目になる。

7. 筆者コメント

業界のなかでの立ち位置に照らすと、この会社の数字はどれも下側に寄っている。営業利益率、自己資本比率、ROE。輸送用機器の中央値と並べれば、いずれも届いていない。

それでも株価が動くのは、絶対水準ではなく変化率が見られているからだろう。赤字が10分の1近くまで縮んだという事実は、中央値との差より投資家の関心を引く。

ここに落とし穴がある。改善率は起点が悪いほど大きく出る。前年同期が大幅な損失だったからこそ、今回の改善幅は1,570億円という大きな数字になった。

私が見たいのは、改善率が落ち着いたあとに残る水準だ。台数が増えなくても利益が出る形になっているか。それを確かめるまで、黒字転換という言葉を単独で受け取らないよう気をつけたい。

 

参考資料

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石津 大希