5. 5期で売上が2.5倍。同時に膨らんだのれんの残高

少し引いて過去5期を眺めてみる。2021年9月期の売上は87億円。そこから115億円、139億円、168億円と伸び、2025年9月期は217億円になった。4年で2.5倍である。

同じ期間、のれんの残高は59億円、54億円、54億円、67億円、そして2025年9月期は129億円。直近の3Q末には141億円まで増えている。

総資産は2025年9月期末で543億円。そのうち4分の1近くがのれんだ。自己資本比率は2021年9月期の78.8%から63.4%へ下がった。

買収の原資には借入も使っている。2025年9月期末の借入金は流動75億円と非流動21億円。直近3Q末では流動15億円、非流動46億円となり、短期の返済が長期へ振り替わった形だ。

現金及び現金同等物は前期末の193億円から164億円へ減った。手元資金を投じ、借入の期間を延ばしながら連結を広げてきた4年だと読み取れる。

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出所:株式会社PKSHA Technology 有価証券報告書をもとに筆者作成

出所:株式会社PKSHA Technology 有価証券報告書をもとに筆者作成

5.1 販管費の半分近くを占める人件費

費用の側も見ておきたい。2025年9月期の販売費及び一般管理費は69億円で、そのうち人件費が34億円。半分近くを人件費が占める。

前期の29億円から16.9%増えた。会社は、優秀な人材の採用を進めるとともに、ソフトウエアプロダクトの強化や研究開発などの先行投資に注力してきたとしている。

減価償却費及び償却費は8億円、広告宣伝費は4億円。広告に薄く、人に厚い費用構造だ。人が動いて案件を取る事業の比重が高いことの裏返しだろう。

6. ROE8.0%という数字を業種の並びに置く

AI関連と聞けば、高い成長と高い資本効率がセットで想像されやすい。だが数字は少し違う姿を示す。

2025年9月期のROE(自己資本利益率)は8.0%。情報・通信業のROE中央値は11.1%で、それを下回る。自己資本比率63.4%も、中央値66.9%に届いていない。

一方で売上の伸びは業種中央値の7.8%とは桁が違う。成長は明確に速く、資本効率は業種の平均線より低い。この二つは同時に成立している。

理由は分かりやすい。買収で膨らんだのれんと無形資産が、分母である資産と資本に乗るからだ。成長を買うという選択は、資本効率をいったん下げる。

会社はこの局面で株主への配分にも動いた。発行済株式(自己株式を除く)の1.17%に当たる36万株、10億円を上限とする自己株式の取得を決議している。今期からは配当も始め、期末10円を予想する。

資本効率を意識した動きだと受け取れる。ただ10億円という規模は、のれん141億円の重さに比べれば小さい。ROEを動かす主役は、やはり買ってきた事業が稼ぐかどうかだろう。

7. 筆者コメント

この会社の見え方が変わろうとしているのが直近の姿だ。4年前は売上100億円に届かないアルゴリズム開発の会社だった。いまは人材を軸にしたサービスを最大の売上源に持つ連結体になっている。

投資家にとって難しいのは、この変化が同じ会社の成長なのか、別の会社への組み替えなのか、決算書だけでは判別しにくいことだ。報告セグメントの区分が2つから3つへ変わったのも、その表れだろう。

私が気にしているのは、配当を始めたタイミングである。買収を続けながら配当を出すのは、成長投資と還元の両方に手を伸ばす姿勢を示す。悪くはないが、資本の使い道が分散する局面でもある。

成長企業の決算は増収率で語られがちだ。だが同じ資料には、資本をどこに置いたかという答えも書いてある。そちらから読む習慣を持つことをおすすめしたい。

 

参考資料

8.1 免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
  • 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
  • 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
  • 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。

石津 大希