AI関連銘柄と聞いて最初に思い浮かぶのは、勢いのある増収率ではないだろうか。ただ、売上が伸びることと、株主の手元に残る利益が伸びることは、必ずしも同じ話ではない。PKSHA Technology(3993)の直近決算は、その二つがきれいに分かれた。株価も足元で水準を切り上げている。

※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

この記事の3つのポイント
  • 2026年9月期3Q累計の売上収益は283億円で前年同期比+84.1%、事業利益は47億円で+46.3%となった。
  • 同じ3Q累計の当期利益は26億円で前年同期比▲2.0%。前年同期に計上した株式売却関連の利益が、比較の土台を高くしている。
  • 株価は2026年8月20日の終値3,310円まで切り上がり、直近時点のPERは36倍台、PBRは2.8倍台。増収の一部は、のれんという形で資産側にも表れている。

1. 株価は1カ月で1割超上げ、PERは36倍台まで切り上がった

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

2026年7月22日の終値2,821円から、2026年8月20日の終値3,310円へ。直近1カ月で1割を大きく超える上昇になった。

当日は前日の3,015円から9.8%高い。この1カ月では最も高い水準である。

もっとも、途中の動きは一本調子ではない。7月24日には2,725円まで下げ、7月末は2,700円台から2,800円台での推移が続いた。

8月初旬は2,800円台から2,900円台の往復、8月中旬に3,000円台を回復。8月14日の3,170円のあと8月18日には2,924円まで戻し、そこから当日の急伸につながっている。

直近時点のバリュエーションはPER36倍台、PBR2.8倍台。直近の当期利益の伸びだけで説明できる高さではない。株価が見ているのは実績よりも、AIソフトウエアへの需要が続くという見通しのほうだろう。

同社は自然言語処理や画像認識のアルゴリズムを研究開発し、パートナー企業向けのソリューション、自社のソフトウエアプロダクト、そして人材を軸にしたサービスを組み合わせている。事業の幅が広がるほど、株価がどの事業の伸びを見ているのかは読みにくくなる。

2. 売上収益+84.1%はどこから来たのか

2026年9月期3Q累計の売上収益(IFRS)は283億円で、前年同期比+84.1%。事業利益は47億円で+46.3%だった。

会社の説明によると、増収はAI Research & Solution事業でソリューション案件の獲得が進んだこと、AI SaaS事業でプロダクトの販売が拡大したこと、そして前期に子会社化したサーキュレーションがAI Powered Worker事業として連結業績に寄与したことによる。駐車場機器を扱うモビリティ事業も前年同期比で堅調に推移したという。

セグメント別に分けると構図がはっきりする。AI Research & Solutionは売上収益99億円で+31.4%、セグメント利益25億円で+37.7%。

AI SaaSは売上収益85億円で+31.7%、セグメント利益28億円で+22.2%。既存の2事業はどちらも3割前後の増収で、利益も同じ方向に伸びている。

対してAI Powered Workerは売上収益100億円で+623.0%、セグメント利益6億円で+286.1%。3事業のうち最も売上が大きいのが、この新しい区分になった。

つまり+84.1%という増収率のうち、既存2事業の自力の伸びは3割程度で、残りは連結の範囲が広がったことによる。同社はこの3Q累計から報告セグメントを2区分から3区分へ再定義しており、事業の見え方そのものが変わった期だと言える。

3. 当期利益▲2.0%に効いた、前年の一時的な利益

事業利益が+46.3%なのに、税引前四半期利益は43億円で+1.0%。親会社の所有者に帰属する四半期利益は26億円で▲2.0%だった。利益の段を下るほど伸びが鈍る。

会社によれば、これは前年同期にSapeetに対する保有株式の一部売出しに伴う関係会社株式売却益と、残存持分を公正価値で再評価した評価益を計上していたためだ。この要因を除けば、税引前は+46.0%、当期利益は+51.6%の増益になるとしている。

加工後の数字で見れば、事業利益の伸びは素直に下の段まで通っている。前年の一時的な利益が比較の土台を持ち上げていただけ、という整理だ。

とはいえ、投資家の目に入る決算数値は加工前の姿である。当期利益▲2.0%という見出しの数字が出てくること自体が、この会社の利益がまだ一時要因に振られやすいことを示している。

通期予想は売上収益350億円、当期利益28億円で据え置かれた。3Q累計時点の進捗は売上収益で81.0%、当期利益で92.4%。売上は計画線に乗り、利益は前倒しで積み上がっている形だ。

4. 筆者コメント

増収率+84.1%と当期利益▲2.0%を同時に見ると、この決算の性格が見えてくる。片方は連結の広がりを映し、もう片方は前年の一時的な利益を映している。どちらも会社の地力そのものではない。

では地力はどこに出るのか。私は3つのセグメント利益の並びだと考える。既存2事業がそれぞれ3割前後で伸び、利益もついてきた。ここは自力の部分だ。

一方で、最も売上が大きくなった新しい事業は利益の絶対額がまだ小さい。売上収益の3分の1超を占めながら、セグメント利益では3事業のうち最も薄い。

人材を軸にしたサービスは売上が立ちやすい代わりに、利益率が上がりにくい性質を持つ。この事業の利益率がどこまで切り上がるか。次の決算はその一点で見てほしい。