4. 月13万6000円で暮らせる?家計調査でみる不足額とねんきん定期便の使い方

今回の試算では、「平均年収400万円・38年間勤務」という条件で、老後の年金月額は約13万6000円となりました。では、この金額で実際に老後の生活をまかなえるのでしょうか。

総務省の家計調査をもとに、現在のシニア世帯の家計と照らし合わせながら、試算した年金額を現実の生活に当てはめてみましょう。

4.1 65歳以上夫婦のみ世帯、家計は月4万2435円の赤字

総務省の「家計調査報告(2025年)」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、可処分所得が月22万1544円なのに対し、消費支出は26万3979円です。

65歳以上・夫婦のみ無職世帯の家計収支(月額平均)5/8

65歳以上・夫婦のみ無職世帯の家計収支(月額平均)

出所:総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」をもとにLIMO編集部作成

  • 実収入:25万4395円
  • 可処分所得(手取り):22万1544円
  • 消費支出:26万3979円
  • 不足分(赤字額):4万2435円

単純に差し引くと、毎月4万2435円の不足となります。

もちろん、これはあくまで平均値であり、すべての世帯で同じような赤字になるわけではありません。

住居費や食費、趣味・旅行などにかける金額によって、必要な生活費は大きく変わります。

それでも、「年金を受け取れるようになれば、それだけで老後の生活費をすべてまかなえる」とは限らないことが、こうしたデータからわかります。

今回試算した月13万6000円という金額についても、まずは「自分がどの程度の生活費を必要とするのか」と照らし合わせて考えることが大切です。

4.2 「ねんきん定期便」は何歳から見方が変わる?

では、自分が将来いくら年金を受け取れるのかを、どのように確認すればよいのでしょうか。

毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」では、これまでの年金加入記録や将来の年金見込額などを確認できます。

日本年金機構によると、ねんきん定期便は年金記録を確認するための重要な資料で、記録に「もれ」や「誤り」がないか確認することもできます。

また、「ねんきん定期便」は、50歳を境に記載内容が変わります。

50歳未満の人に届くねんきん定期便

ここに記載されているのは「今までの加入実績に応じた年金額」であり、今後納める保険料分はまだ反映されていないことに注意しましょう。

50歳以上の人に届くねんきん定期便

こちらには、現在の加入条件が60歳まで続くと仮定して算出した、「65歳から受け取る場合の年金見込額」が掲載されています。

自分が65歳以降どのくらいの年金を受け取れるのか、より具体的にイメージできるでしょう。

ただし、今回のように将来の受給額を考える際には、ねんきん定期便に表示された金額だけを見て終わりにするのではなく、自分が利用できる加算や制度がないかも確認しておきたいところです。

また、日本年金機構の「ねんきんネット」では、自分で条件を設定して将来の老齢年金の見込額を試算することもできます。

5. 年金を増やす方法はある?「加給年金」など加算制度を確認

前半で紹介した試算では、「配偶者および扶養家族はいない」という条件を設定したため、家族構成による加算は含めていません。

しかし、実際の年金受給を考える際には、対象になる人にとって見逃せない制度があります。その代表例が「加給年金」です。

5.1 加給年金は「年金の家族手当」

加給年金は、厚生年金の加入期間など一定の要件を満たした人に、65歳未満の配偶者や一定年齢までの子どもがいる場合などに、老齢厚生年金へ上乗せされるものです。

加給年金額と配偶者加給年金額の特別加算額(令和8年4月から)8/8

加給年金額と配偶者加給年金額の特別加算額(令和8年4月から)

出所:日本年金機構「加給年金額と振替加算」

特に配偶者については、特別加算を含めると年間約40万円となるケースもあります。

ただし、配偶者自身の年金加入状況などによって支給停止となる場合もあるため、誰でも受け取れるわけではありません。

つまり、同じような年収・勤務年数であっても、家族構成や利用できる制度によって、実際の受給額は変わる可能性があります。

加給年金を受け取るためには必要な手続きもあるため、「自分の年金はいくらなのか」だけでなく、「加算される可能性のある年金はないか」まで確認しておくことが重要です。

5.2 年金だけでは心もとない?シニア世代に広がる「投資意欲」

制度による加算だけでなく、自ら備えを厚くしようとする動きも広がっています。

ハルメク生きかた上手研究所が55~79歳の女性498人を対象に2026年6月に実施した調査によると、投資をしている人の割合は2025年から約5ポイント増加し、64.8%に達しました。

投資を始めた理由として最も多く挙げられたのは「老後の生活費の補填(年金の補完)」で、趣味や旅行の資金づくりを上回っています。

とくに55~69歳では新NISAを保有する人が多いとされ、非課税制度を活用しながら年金を補おうとする動きがうかがえます。年金だけに頼らず、自ら老後の備えを厚くしようとする姿勢が、こうした調査結果にも表れているといえそうです。

6. まとめにかえて|年金額は「試算」で終わらせず、自分の記録と備え方を確認しよう

今回は「平均年収400万円・38年間勤務」という条件で、将来受け取る年金額を試算しました。

その結果、国民年金と厚生年金を合わせた年金月額は約13万6000円となりました。

ただし、これはあくまで一定の条件を置いた試算です。実際の受給額は、年金加入期間や現役時代の収入だけでなく、家族構成や利用できる制度などによっても変わります。

また、総務省の家計調査では、65歳以上の夫婦のみの無職世帯で、可処分所得を消費支出が上回り、平均で毎月約4万2000円の不足が生じています。

先ほど紹介した投資意欲の高まりも、こうした「年金だけでは足りないかもしれない」という実感の裏返しともいえるでしょう。

まずは「ねんきん定期便」で自分の年金加入記録や見込額を確認し、必要に応じて「ねんきんネット」で詳しく試算してみましょう。

そのうえで、加給年金など利用できる制度がないかも確認し、年金だけでは不足する部分を貯蓄や就労収入、資産形成などでどう補うのかを考えておくと、より具体的な老後資金計画を立てやすくなります。

「平均年収400万円なら年金はいくら?」という試算を、自分自身の老後に置き換えて考えてみること。それが、9月の「敬老の日」をきっかけに、将来のお金を具体的に考える第一歩になるでしょう。

7. 【筆者コメント】

熊谷 良子

今回の試算を通じて、「厚生年金に加入したほうが年金額は増える」という事実そのものは、あらためて実感しました。

ただ、将来の年金額だけを基準に働き方や職業を選ぶというのも、なんだか味気ない気がしています。

働き方の選択肢が広がった今、フリーランスや個人事業主として国民年金のみに加入する働き方が、ライフスタイルとして合っている方もいるはずです。

大切なのは、「厚生年金だから安心」「国民年金だから不安」と単純に線引きすることではなく、自分がどちらの制度にどれくらい加入しているのかをまず把握すること。

そのうえで、不足しそうな部分をiDeCoや貯蓄、あるいは働き方の見直しでどう補うかを考えることではないでしょうか。

自分の「年金加入状況」に応じた備え方を、この機会に一度整理してみてください。

働き方を選ぶ基準はそれぞれでよいと思いますが、その選択で将来の年金額がどう変わるのかだけは、知ったうえで選びたいところです。

参考資料

池上 翠