4. 意向確認書を受け取ったら気をつけたい注意点が3つある

意向確認書そのものは実際に対象者へ届く書類ですが、対応の仕方によっては次の3つのポイントでつまずきやすいので、あらかじめ確認しておきましょう。

1つ目は、45日を過ぎると自動的に「同意」扱いになる点です。不同意にしたい場合は、返送期限を過ぎないよう早めに手続きしましょう。

2つ目は、不在等で書類自体を受け取れなかった場合は、口座が勝手に登録されることはないという点です。「意向確認ができなかった」ものとして扱われるため、慌てて再送を依頼する必要はありません。

3つ目は、不同意申出書を紛失した場合、再発行はできないという点です。ただし任意の様式で提出できる場合があるため、紛失時は速やかに意向確認書照会専用フリーダイヤルへ相談しましょう。

5. 公金受取口座に登録すると、実際どれくらい便利になる?

デジタル庁によると、公金受取口座を登録しておくと、年金や高額療養費、所得税の還付金など160種類以上の給付金等をより簡単・スムーズに受け取れるようになるとされています。

実際の効果を示す事例として、デジタル庁は神奈川県小田原市のケースを紹介しており、公金受取口座の活用によって給付金の振込までにかかる時間が最大で約4カ月短縮されたと報告しています。

今回、意向確認書という形で年金受給者への登録を後押ししているのも、こうした手続きの迅速化を広げる狙いがあるとみられます。

65歳以上・無職夫婦世帯の家計は、なお赤字基調

総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果」によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の実収入は月25万4395円(うち公的年金等22万8614円)である一方、実支出は月29万6829円で、差し引き月約4万2000円の赤字となっています。

単身無職世帯でも、実収入13万1456円に対し実支出16万1435円で、月約2万9980円の不足です。なお、このデータには介護費用は含まれていません。

  • 65歳以上・夫婦のみ無職世帯の平均貯蓄額:2494万円(前年比▲66万円)
  • 内訳・定期性預貯金:778万円
  • 内訳・通貨性預貯金:766万円
  • 内訳・有価証券:510万円
  • 内訳・生命保険等:426万円

家計が赤字傾向にあるからこそ、本来受け取れるはずの給付金を取りこぼさず、できるだけ早く受け取れる状態にしておくことの意味は小さくないといえるでしょう。

6. 見落とし注意、年金生活者支援給付金は2026年10月から対象が広がる

毎年9月ごろから順次届く「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」、通称「緑の封筒」も、意向確認書とあわせて見落としたくない書類です。

年金生活者支援給付金は、公的年金等の収入や所得が一定基準以下の方を対象に、年金に上乗せして支給される給付金です。2026年度の給付基準額は月5620円(前年度比170円増)となっています。

厚生労働省「年金生活者支援給付金制度 特設サイト」によると、老齢年金生活者支援給付金の所得基準額は、2026年10月分から82万6500円以下(昭和31年4月2日以後生まれの場合)に引き上げられ、これまでの80万9000円以下から対象が広がります。

※所得基準の引き上げ幅については「【年金生活者支援給付金】2026年10月分から所得の基準が「82万6500円」に引き上げ。月5620円が上乗せされる対象はどこまで広がるのか」を一部引用しています。

たとえば国民年金のみを受給している方の平均月額は5万9310円で、年収換算では約71万1720円です。新しい基準(年82万6500円以下)を大きく下回るため、平均的な国民年金受給者であれば対象になりやすいと考えられます。

「以前は対象外だった」という方も、10月分以降はあらためて対象になる可能性があるため、届いた案内は確認しておきたいところです。

7. 年金受給者が確認しておきたい「3つのお金」

公金受取口座の意向確認書や年金生活者支援給付金の請求書など、年金受給者に届く書類には、それぞれ異なる意味があります。

そこで、年金生活を送るうえでは、単純に「毎月の年金額」だけを見るのではなく、次の3つのお金を分けて考えてみると分かりやすくなります。

7.1 公的年金はいくら振り込まれている?

まず確認したいのが、毎回の年金振込額です。

年金額そのものだけでなく、所得税や住民税、介護保険料、健康保険料などが年金から天引きされる場合があるため、「年金額」と「実際に口座へ振り込まれる金額」は必ずしも同じではありません。

2026年度の年金額については、前半でも紹介した通り、物価や賃金の変動を反映して改定されています。

日本年金機構は2026年6月に、「年金額改定通知書」と「年金振込通知書」を発送しています。年金額改定通知書では改定後の年金額、年金振込通知書では変更後の振込額などを確認できます。

年金生活者にとっては「年金はいくらもらえるのか」だけでなく、「実際にいくら振り込まれているのか」を確認することも重要です。

7.2 年金生活者支援給付金の対象になっていない?

次に確認したいのが、先ほど紹介した「年金生活者支援給付金」です。

こちらは公的年金とは別の制度で、支給要件を満たす場合に年金へ上乗せして支給されます。

一度対象外だったとしても、世帯の所得状況などによって状況が変わることがあります。

そのため、「以前対象ではなかったから、自分には関係ない」と決めつけず、届いた案内を確認することが大切です。

7.3 医療・介護などの負担軽減制度を利用できる?

3つ目は、年金として「もらえるお金」ではなく、支出を抑えるための制度です。

高齢になると、医療や介護にかかる費用が家計の大きな負担になることがあります。

たとえば高額療養費制度では、医療機関や薬局で支払う自己負担額が一定の上限を超えた場合、その超えた額が支給されます。上限額は年齢や所得などによって決まります。

また介護保険にも、所得などに応じて自己負担額に上限を設ける「高額介護サービス費」などの仕組みがあります。

こうした制度は、「給付金が振り込まれる」という分かりやすい形だけではありません。支払う医療費や介護費を抑えることも、年金生活者にとっては実質的な家計支援になります。

だからこそ、老後のお金を考えるときには、

  • 「年金はいくら入ってくるのか」
  • 「上乗せして受け取れる給付はないか」
  • 「支出を抑えられる制度はないか」

という3つの視点から確認しておくとよいでしょう。

8. 「通知が届いたら確認する」を習慣に。シニアのお金を守るチェックポイント

今回の「公金受取口座登録の意向確認書」に限らず、年金生活になるとさまざまな通知や案内が届きます。なかには、手続きをすることで給付を受けられたり、負担を軽減できたりするものもあります。

一方で、年金や給付金に関する通知を装った詐欺などにも注意が必要です。

「書類が届いたら確認する」という習慣を身につけておくことが、老後のお金を守ることにつながります。

8.1 書類を放置しない

年金関連の書類が届いたとき、すぐに内容を理解できなくても、まずは封筒や書類の名称を確認しておきましょう。今回の「公金受取口座登録の意向確認書」なら、登録に同意するのか、不同意なのかを判断する必要があります。

一方、「年金生活者支援給付金請求書」なら、対象となる可能性があり、請求手続きが必要です。

同じ「年金に関する書類」でも、必要な対応はまったく違います。

「年金からのお知らせだから、とりあえず保管しておこう」ではなく、

  • 「これは何の書類なのか」
  • 「自分は何をする必要があるのか」
  • 「期限はあるのか」

の3点を確認する習慣をつけておくと安心です。

8.2 分からないときは公式窓口に確認する

書類の内容が分からない場合や、自分が対象者なのか判断できない場合は、インターネット上の情報だけで判断せず、公式窓口へ確認することも大切です。

特に注意したいのが、「年金の手続きを代行する」「給付金を受け取るために手数料が必要」などといった不審な連絡です。

今回の公金受取口座登録の意向確認書についても、前半で紹介した通り、専用の問い合わせ窓口が設けられています。

年金生活者支援給付金についても、日本年金機構の公式サイトには請求手続きや問い合わせに関する案内が掲載されています。

分からないときほど、身近な人から聞いた情報や不審な電話を鵜呑みにせず、日本年金機構や厚生労働省などの公式情報を確認することが大切です。

8.3 家族も一緒に確認する

年金に関する手続きは、本人だけでなく、離れて暮らす家族にとっても無関係ではありません。

特に高齢の親がいる場合には、重要な書類が届いたときに「何の通知なのか分かっているか」を確認しておくと安心です。ただし、家族だからといって本人に代わって勝手に手続きを進めるのではなく、まずは本人の意思を確認することが基本です。

大切なのは、年金に関する書類を「本人だけの問題」とせず、必要に応じて家族も一緒に確認できる状態にしておくことでしょう。

9. まとめにかえて|「届いたら確認する」が家計を守る一歩に

2026年8月から順次発送される「公金受取口座登録の意向確認書」は、単に同意・不同意を選ぶだけの手続きではありません。

デジタル庁が示す通り、登録しておけば160種類以上の給付金等の受け取りが早まる可能性があり、実際に給付金の振込までの時間が大きく短縮された自治体の例も報告されています。

あわせて、9月ごろから届く「緑の封筒」こと年金生活者支援給付金の請求書も見逃せません。2026年10月分からは所得基準が引き上げられ、これまで対象外だった方が新たに対象になる可能性もあります。

総務省の家計調査が示すように、65歳以上の無職世帯の家計はなお赤字基調にあります。だからこそ、届いた書類を「とりあえず保管」で終わらせず、自分に関係があるかどうかをそのつど確認する習慣が、家計を守る一歩になるはずです。

不明な点があれば、市区町村の窓口ではなく、意向確認書照会専用フリーダイヤル(0120-74-0011)など、それぞれの制度の公式窓口へ相談しましょう。

10. 【筆者コメント】

熊谷 良子

「一度、年金生活者支援給付金の対象外と言われたから、うちには関係ない」と思い込んでいる方は少なくありません。

しかし今回のように所得基準そのものが見直されると、これまで基準をわずかに超えていた方が、あらためて対象に入ってくることがあります。

また、時期が近いために「意向確認書」と「年金生活者支援給付金請求書(緑の封筒)」を同じ書類だと勘違いし、どちらか一方を確認しただけで安心してしまうケースにも注意が必要です。

両者は目的も手続きもまったく別のものです。届いた封筒の名称をそのつど確認し、「これは何の書類で、自分は何をすべきか」を封筒ごとに考える習慣をつけておくと安心です。

迷ったときは自己判断せず、それぞれの公式窓口に確認しながら手続きを進めていただければと思います。

参考資料