4. 住宅ローン金利の上昇という、これから注意したい背景

今回の2025年平均データでは、年収500万円台世帯の負債はむしろ前年より減少していました。

ただし、これから先も同じ傾向が続くとは限りません。日本銀行は2026年6月16日の金融政策決定会合で、無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標水準を1.0%程度に引き上げることを決定しました(2026年6月17日適用)。マイナス金利政策の解除以降、利上げの動きが続いています。

NISA口座数・累計買付額(2025年12月末時点)3/4

【フラット35】借入金利の推移(最低~最高)令和5年4月から

出所:総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2025年(令和7年)平均結果-(二人以上の世帯)」第8-2表をもとにLIMO編集部作成

長期固定金利の住宅ローン「【フラット35】」(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きの場合)の金利は、令和5年4月時点で最低1.780%~最高3.070%でした。

これが令和8年8月1日現在では最低3.290%~最高5.570%まで上昇し、この3年4か月で最低金利は1.5ポイント超、最高金利は2.5ポイント上昇したことになります。

変動金利型の住宅ローンも、日銀の政策金利引き上げを受けて見直しが進むとみられています。

年収500万円台世帯の持家率は8割前後に達しており、多くの世帯にとって住宅ローン金利の上昇は他人事ではありません。

今回のデータでは負債が減った世帯が多かったとしても、今後、返済中のローン残高がある世帯では負債額が押し上げられやすい局面が続くと考えられます。

5. 金利上昇時代の自衛策、新NISA活用はどこまで進んだか

住宅ローン負担が重くなりやすい局面だからこそ、あわせて確認しておきたいのが、非課税で資産形成ができる新NISAの活用状況です。

金融庁の確報値(2025年12月末時点)によると、NISA口座数は全金融機関合計で2820万6434口座となり、半年前(2025年6月末、2695万8356口座)から4.63%増加しました。

累計買付額(2014年開始の旧NISAと2024年以降の新NISAを通算した金額)は71兆3846億円にのぼり、内訳は成長投資枠が55兆6331億円、つみたて投資枠が15兆7515億円となっています。

  • NISA口座数(全金融機関、2025年12月末確報値):2820万6434口座(2025年6月末比4.63%増)
  • 累計買付額(旧NISA・新NISA合算、2025年12月末時点):71兆3846億円(うち成長投資枠55兆6331億円、つみたて投資枠15兆7515億円)
  • 政府目標:2027年12月末までに3400万口座

NISA口座数・累計買付額はいずれも増加を続けており、住宅ローンや教育費の負担が重くなる中でも、非課税制度を使った資産形成への関心は続いています。

年代別では50歳代が全体の19.6%を占めて最多で、40歳代(19.1%)、30歳代(17.5%)と続き、資産形成の中心はなお現役世代にあります。

6. まとめにかえて|「ふつうの世帯」こそ、平均に惑わされず家計を点検したい

2025年平均の家計調査データを見る限り、年収500万円台の「いわゆるふつうの世帯」は、貯蓄が前年から70万~90万円増え、負債はむしろ35万~73万円減っていました。純貯蓄額は304万~356万円まで積み上がり、1年で126万~161万円増えた計算になります。

ただし、勤労者世帯全体の平均貯蓄1717万円と比べると、年収500万円台世帯の貯蓄・純貯蓄にはまだ大きな開きがあります。マクロな平均値だけを見ていると、こうした年収帯ごとの実態は見えてきません。

まずはご自身の年間収入階級の基準値を確認し、それをご家庭の実際の財務状況(貯蓄額やローンの返済スケジュール)と対比してみてください。

貯蓄、負債、そして資産形成。これらを個別のパーツとして捉えるのではなく、「一体のバランスシート」として俯瞰する視点は、これから金利のある時代を生き抜くうえでも役立つはずです。

7. 監修者からのコメント

熊谷 良子

今回取り上げた家計調査の結果では、世帯主の配偶者のうち女性の有業率も公表されています。

年収500万~550万円世帯で49.6%、550万~600万円世帯では54.6%と、550万~600万円世帯ではすでに過半数の配偶者が働いていることになります。



共働きが前提になりつつある中で、資産形成の口座もどちらか一方に偏らせず、夫婦それぞれの名義でNISAやiDeCoを持つ世帯が増えています。

特に新NISAは年間の非課税投資枠が夫婦であれば単純計算で2人分使えるため、世帯単位で見たときの資産形成の伸びしろは小さくありません。

住宅ローンの金利が上がる局面では、繰り上げ返済に回すべきか、非課税枠での積立を優先すべきか悩む方も多いはずです。

正解は世帯ごとに異なりますが、まずはねんきん定期便や金融機関のシミュレーションなどを使い、ご自身の世帯の収支と資産形成のペースを一度可視化してみてください。

参考資料

池上 翠