厚生労働省が2026年7月、5年に一度の大規模調査となる「2025年(令和7年)国民生活基礎調査」の結果を公表しました。

それによると、高齢者世帯以外の世帯の1世帯当たり平均所得(総所得)は700万7000円。このうち給与収入にあたる雇用者所得(※)の平均は568万4000円でした。

いずれの数字で見ても、これまで「ふつうの世帯年収」の目安とされてきた500万円台を、じわりと超える水準まで上がってきています。

一方で、総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)」の2025年平均結果を見ると、単純に「一段落」とは言えないようです。

二人以上の勤労者世帯全体の貯蓄現在高は平均1717万円と前年から8.7%増え、7年連続の増加となりました。ところが、年収500万円台という「ふつうの世帯」だけを取り出すと、貯蓄は1090万~1243万円、そこから負債を差し引いた「本当の手元資産」にあたる純貯蓄額は304万~356万円にとどまり、全体平均とは大きな開きがあります。

本記事では、総務省「家計調査(貯蓄負債編)」の最新データ(2025年平均、二人以上の世帯のうち勤労者世帯)をもとに、年収500万円台世帯のリアルな貯蓄・負債事情を試算します。

あわせて、貯蓄が伸び悩む背景にある住宅ローン金利の上昇と、その備えとして広がる新NISAの活用状況も確認していきます。

※雇用者所得:世帯員が勤め先から支払いを受けた給料・賃金・賞与の合計金額を指し、税金や社会保険料が含まれています。

ココがポイント
  • 2025年家計調査で年収500万~600万円世帯の貯蓄は1090万~1243万円。前年から70万~90万円増えたものの、勤労者世帯全体の平均1717万円にはまだ届かない。

  • 同じ世帯の負債は786万~887万円で前年から35万~73万円減少。ただし住宅・土地のための負債が720万~829万円と大半を占める。

  • 非高齢者世帯の雇用者所得は568万4000円(総所得は700万7000円)に上昇する一方、日銀は2026年6月に政策金利の誘導目標を1.0%程度へ引き上げ。

1. 年収500万円台「いわゆるふつうの世帯」、2025年最新の貯蓄と負債の実態

総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2025年(令和7年)平均結果-」第8-2表(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)から、年収500万~550万円、550万~600万円の2つの階級を見ていきましょう。

この調査は年間収入階級別に世帯を分類し、貯蓄・負債の平均現在高を示したものです。

1.1 年収500万円台世帯の貯蓄・負債現在高

  • 年収500万~550万円世帯:年間収入521万円、貯蓄1090万円、負債786万円(うち住宅・土地のための負債720万円)
  • 年収550万~600万円世帯:年間収入573万円、貯蓄1243万円、負債887万円(うち住宅・土地のための負債829万円)
  • 参考:勤労者世帯全体の平均は、年間収入824万円、貯蓄1717万円、負債1034万円

年収500万円台世帯の貯蓄は1090万~1243万円、負債は786万~887万円という結果になりました。

勤労者世帯全体の貯蓄が前年より138万円増えて過去最高水準に近づく一方、年収500万円台という「ふつうの世帯」の貯蓄額は、むしろ抑えられた水準にとどまっています。

2. 貯蓄から負債を引いた「ホントの貯蓄額」はいくら?《年収500万円台世帯の純貯蓄額》

貯蓄額だけを見ると心強く感じますが、実態に近いのは貯蓄から負債を差し引いた「純貯蓄額」です。

2025年平均のデータで計算すると、次のようになります。

2.1 年収500万円台世帯の純貯蓄

NISA口座数・累計買付額(2025年12月末時点)2/4

年収500万円台世帯の純貯蓄

出所:総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2025年(令和7年)平均結果-(二人以上の世帯)」第8-2表をもとにLIMO編集部作成

  • 年収500万~550万円世帯:貯蓄1090万円-負債786万円=純貯蓄304万円
  • 年収550万~600万円世帯:貯蓄1243万円-負債887万円=純貯蓄356万円

総務省の同じ第8-2表で2024年平均のデータを確認すると、500万~550万円世帯は貯蓄1002万円-負債859万円=純貯蓄143万円、550万~600万円世帯は貯蓄1152万円-負債922万円=純貯蓄230万円でした。

1年で純貯蓄額は500万~550万円世帯で161万円、550万~600万円世帯で126万円増えた計算になります。貯蓄が70万~90万円増える一方で負債が35万~73万円減ったため、手元に残る資産の伸びはそれ以上に大きくなっています。

ただし、家計調査の年間収入階級別の集計は、500万~550万円で155世帯、550万~600万円で192世帯という抽出調査に基づく値です。

階級を細かく区切るほど、その年にたまたま含まれた世帯の特性によって数字が振れやすく、今回のような伸びも1年だけを見て「順調に資産形成が進んでいる」と即断せず、複数年の推移で確認することが大切です。

2.2 あわせて見たい「家族のすがた」の変化

同じ第8-2表からは、世帯属性の数値も読み取れます。

  • 年収500万~550万円世帯:世帯主の平均年齢51.2歳、世帯人員2.96人、持家率78.1%
  • 年収550万~600万円世帯:世帯主の平均年齢51.2歳、世帯人員3.16人、持家率85.8%

前回(2024年平均)のデータでは、世帯主の平均年齢は500万~550万円世帯で51.7歳、550万~600万円世帯で51.0歳でした。

年収500万円台という同じ枠では、世帯主の年齢層はここ数年、大きくは変わっていないようです。

3. 監修者からのコメント

熊谷 良子

今回の第8-2表では、持家率にも目を引かれました。

年収500万~550万円世帯で78.1%、550万~600万円世帯では85.8%と、勤労者世帯全体の平均(81.9%)を挟んで前後する水準です。とくに550万~600万円世帯は、平均を大きく上回る8割台後半に達しています。

年収がとりたてて高いわけではない世帯でも、すでに8割前後、あるいはそれ以上がマイホームを持っているということです。

この持家率の高さは、後ほど触れる住宅ローン金利の上昇と無縁ではいられないことを意味します。

今回の2025年平均では、500万円台世帯の負債はむしろ前年より減り、純貯蓄額も大きく積み増されていましたが、これはあくまで1年分の結果です。

金利のある時代がこの先も続けば、住宅ローンを抱える世帯の負担は徐々に重くなっていく可能性があります。

なお、年間収入階級別の集計は世帯数がそれほど多くないため、単年の数字の増減だけで一喜一憂せず、複数年の推移や、ご自身の家計簿と照らし合わせて確認することをおすすめします。