5期で売上7割増、営業赤字から利益率6%台へ

時系列に並べ直してみよう。売上収益は2021年12月期の2,645億円から2025年12月期の4,577億円へ、5期で7割増えた。この間、増収は毎期続いている。

利益の軌跡はもっと荒い。営業利益は2021年12月期が182億円、2022年12月期が▲55億円の営業赤字、2023年12月期が116億円、2024年12月期が241億円、2025年12月期が299億円だ。

当期利益も2022年12月期に▲63億円の赤字を出したのち、47億円、139億円、167億円と戻してきた。ROE(自己資本利益率)は▲3.9%から3.0%、8.3%、9.3%へ回復している。小売業のROEの中央値7.5%を上回るのは、直近2期に入ってからだ。

売上が伸び続けるなかで利益率だけがV字を描いた、というのがこの5期の形である。売上に対する費用の構造が期ごとに変わったことを、この形は示している。

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出所:株式会社すかいらーくホールディングス 有価証券報告書をもとに筆者作成

出所:株式会社すかいらーくホールディングス 有価証券報告書をもとに筆者作成

固定費の重さと、増益の質を分けて見る

費用の中身に降りてみたい。2025年12月期の販管費2,721億円のうち、人件費は1,453億円だった。売上収益に対して3割強を人件費が占める構造である。

さらに販管費には減価償却費及び償却費が479億円計上されている。会社全体の減価償却費は同期で521億円、営業利益299億円を大きく上回る規模だ。

人件費と償却費という、売上が減っても簡単には減らない費用が積み上がっている。だからこそ既存店の伸びが利益に直結する。上期の営業活動によるキャッシュ・フローが345億円と、営業利益168億円の2倍を超えるのも、上期に267億円計上された減価償却費及び償却費の厚みによるものだ。

ここでもう一段、増益の質を分けておきたい。上期の営業利益は前年同期から29億円増えた。一方、売上収益から売上原価と販管費を引いた事業利益の増加は20億円である。

差の9億円は、その他の営業収益と営業費用の差し引きの改善から来ている。前年同期の▲10億円が当期は▲1億円まで縮んだ。上期には27店を閉店し、のれんの除却損2億円を計上しているが、前年同期に重かった費用の反落がそれを上回った形だ。

増益率+20.9%という見出しの数字のうち、3分の1近くは本業のマージンの外側から出ている。増益の勢いを評価するなら、事業利益の伸びのほうを物差しに置くべきだろう。

すかいらーくホールディングスのれん1,714億円と、年2.564%で調達した社債

財務の側も見ておきたい。のれんは2021年12月期の1,460億円から2025年12月期の1,626億円へ、そして上期末には1,714億円へ増えている。上期にしんぱちを連結子会社化した分が乗った形だ。

上期末の非流動の社債及び借入金は1,222億円で、前期末の1,093億円から増えた。投資活動によるキャッシュ・フローは▲261億円、財務活動によるキャッシュ・フローは▲114億円である。

そして上期の後発事象として、200億円の無担保社債を発行している。利率は年2.564%、償還期限は2031年7月30日で、資金使途は借入金返済資金及び設備投資資金とされている。

2%台半ばの調達コストを払って、店舗と買収に資本を回す。無借金や高い自己資本比率を良しとする感覚からは離れた財務だが、営業利益率6.5%とROE9.3%を並べれば、いまのところ調達コストを上回るリターンは出ている。

還元も細く伸びている。年間配当は2023年12月期の7円から18.5円、22円と増え、2026年12月期予想は27円だ。2025年12月期の配当性向は29.9%で、小売業の中央値33.1%より低い。稼いだ分を店舗と買収に優先して回す姿勢が、ここにも出ている。

筆者コメント

この会社の費用構造が変わり始めた地点は、2022年12月期の営業赤字だったと考えている。売上は3,037億円まで伸びていたのに、営業損益は▲55億円。売上を取り戻しても利益が付いてこない期があった。

そこからの3期で起きたのは、値上げによる粗利の回復ではない。原価率はむしろ上がり続けている。変わったのは、同じ費用の器でどれだけ売上を通せるかという一点だ。

だから既存店の伸びが止まった瞬間に、この構図は逆回転する。人件費と償却費は残り、粗利率は原材料高で削られたままだからだ。上方修正で通期の絵が明るくなった局面だからこそ、そこは意識しておきたい。

店舗数が3,000店を超え、業態転換と買収で中身を入れ替えながら伸ばす段階に入った会社である。次の1年で見るべきは、出店数よりも転換後の店舗が既存店の伸びをどれだけ押し上げるか、という接続部分ではないだろうか。

四半期の増減率だけで判断せず、既存店売上高と販管費の対売上比率を並べて追う切り口を持っておくことをおすすめしたい。

 

参考資料

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石津 大希