コンデンサ73.5%という一極集中と、第二の柱の現在地

太陽誘電はセグメントとしては電子部品事業の単一セグメントだが、短信では製品別の売上高を開示している。ここに事業ポートフォリオの姿が出る。

2027年3月期1Qの内訳は、積層セラミックコンデンサなどを含むコンデンサが690億円で構成比73.5%、巻線インダクタや積層インダクタを含むインダクタが159億円で17.0%、アルミニウム電解コンデンサや通信用デバイスを含むその他が89億円で9.5%だった。

前年同期比ではコンデンサが+14.7%、インダクタが+7.4%、その他が▲8.5%。全社の増収は、実質的にコンデンサ1本で作られている。

会社は、主力事業である積層セラミックコンデンサのさらなる成長に加え、インダクタを強化して第二の柱とし、バランスの取れた事業体質を構築するとしている。方針としては明快だ。

ただ構成比の推移を見ると、コンデンサは前年同期の71.0%から73.5%へ上がり、インダクタは17.5%から17.0%へ下がった。この四半期に限れば、集中はむしろ進んでいる。

第二の柱を育てる速度より、主力の伸びのほうが速い。悪い話ではないが、ポートフォリオの分散という観点では、目標との差はまだ縮んでいない。

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出所:太陽誘電株式会社 2027年3月期1Q決算短信をもとに筆者作成

電子部品は高収益、というイメージと5期の利益率

電子部品というと、高い利益率で稼ぐ業種というイメージが先に立つ。太陽誘電の直近5期を並べると、その像はかなり揺れる。

売上高は2022年3月期の3,496億円から2026年3月期の3,553億円まで、5期でほぼ横ばいだった。一方で営業利益は682億円、319億円、90億円、104億円、199億円と激しく上下している。

営業利益率に直すと19.5%、10.0%、2.8%、3.1%、5.6%。2024年3月期と2025年3月期は3%を割る、あるいはそれに近い水準まで沈んだ。

電気機器業種180社の営業利益率の中央値は6.7%、ROEの中央値は7.4%である。2026年3月期の太陽誘電は営業利益率5.6%、ROE4.5%だから、回復した期でも業種の真ん中には届いていない。

売上総利益率も2026年3月期で23.1%と、業種の中央値29.8%を下回る。高収益というイメージと、直近数期の実際の数字には、はっきりした開きがある。

もっとも、この開きは能力の話とは限らない。次に見る設備投資の重さが、そのまま利益率に乗っている面がある。

設備投資の山を越えた先に何が残るか

過去5期の設備投資額は515億円、633億円、799億円、627億円、410億円と推移した。2024年3月期がピークで、その後は落ちてきている。

一方の減価償却費は312億円、349億円、393億円、462億円、491億円と、5期一貫して増え続けた。投資の山から2年ほど遅れて、費用の山が来ている構図である。

会社は需要拡大に対応するための継続的な能力増強を実施しているとしており、この投資自体は方針どおりだ。問題はタイミングで、需要が想定より弱い期に減価償却だけが重くなると、利益率は一気に沈む。2024年3月期と2025年3月期に起きていたのは、おおむねそういうことだろう。

太陽誘電の営業キャッシュフローは回復している

2026年3月期の営業活動によるキャッシュ・フローは581億円で、前期の339億円から大きく増えた。投資活動によるキャッシュ・フローは▲256億円で、前期の▲635億円から支出が縮んでいる。

稼いだ現金の範囲内で投資が収まる形に戻った、と言っていい。設備投資が410億円まで下がり、減価償却費491億円がそれを上回ったのも同じ期だ。

ここから先、売上が伸びれば固定費の吸収が進む。通期予想の営業利益450億円は、その効きを見込んだ数字だと考えられる。

筆者コメント

投資の山と費用の山がずれる。この時間差こそが、電子部品メーカーの利益が数年単位で波打つ最大の理由だと私は考えている。

過去5期を並べると、設備投資は2024年3月期を境に減り、減価償却費は増え続けた。営業利益が最も薄かったのは、まさにその交差点にあたる期だった。そして投資が縮み、減価償却費が設備投資額を上回ったところで利益が戻り始めている。

ここで見落としたくないのは、売上高が5期を通じてほとんど増えていない点だ。利益の振れは需要より、費用構造の側から来ていた部分が大きい。

もう一つ。この四半期に転換社債の一部が株式に転換され、資本金と資本剰余金がそれぞれ115億円増えた。7月末までにさらに転換が進んでいる。1株当たりの利益を語るときは、分母が動いていることも合わせて見ておきたい。

製品別の売上、設備投資と償却の時間差、そして株数。この3つを重ねると、決算の一行だけを見るより、この会社の輪郭はずっとはっきりしてくる。

 

参考資料

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石津 大希