4. 「年収の壁」はどう変わる? 厚労省が示す見直しの方向性
収入を抑えて働く「年収の壁」の見直しも、いま進んでいる変化のひとつです。
2025年の年金制度改正法により、社会保険加入の賃金要件「月8.8万円以上(年収約106万円)」は、最低賃金の状況を踏まえ同年6月から3年以内に撤廃される予定で、加入基準は「週20時間以上」の労働時間に統一されます。
あわせて、これまで「従業員50人超」の企業に限られていた適用対象となる企業規模は
- 2027年10月に36人超
- 2029年10月に21人超
- 2032年10月に11人超
- 2035年10月には10人以下
のように段階的に拡大されていきます。
また、扶養に入るための「130万円の壁」についても、労働契約の内容(基本給や諸手当など)に基づく見込み年収が130万円未満であれば、原則として被扶養者に認定される取り扱いが示されています。
一時的な収入増であれば、事業主の証明により原則連続2回まで扶養にとどまれる措置もあり、19歳以上23歳未満の扶養親族については年収要件が150万円未満に引き上げられています。
制度の適用は段階的で細かな要件もあるため、詳細は厚生労働省の公表資料で確認する必要がありますが、働き方の選択肢は今後広がっていく方向にあります。
5. 「壁」の先にある備え――広がるNISA・iDeCo活用
制度面で働き方の自由度が増す一方、老後資金づくりを自分自身で進める動きも広がっています。
三井住友トラスト・資産のミライ研究所が2026年1月に18~69歳の1万1135人を対象に実施した調査では、新NISAの認知度は57.7%、実際の利用率は22.3%でした。
年代別に見ると、18~39歳では利用意向がある層まで含めると4割以上が前向きな姿勢を示す一方、60歳代では認知度60.3%に対し「利用しない」との回答が約5割を占め、年代による温度差がうかがえます。
厚生年金だけでは月15万円に届かない人が半数を超え、高齢単身世帯の家計も赤字傾向にあるなかで、就業時間を柔軟に選べる制度改正とあわせて、NISAやiDeCoを使って自分で年金を上乗せしていく考え方は、今後さらに広がっていきそうです。
6. まとめにかえて|年金と生活費のバランスを考える
公的年金は今後も物価や賃金動向に応じて見直されていきますが、受給額には個人差が大きく、年金だけで老後の生活費をすべて賄うのは簡単ではないのが実情です。
まずは「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で自分の将来の受給見込み額を確認し、そのうえで社会保険制度の変化や資産形成の仕組みを知っておくことが、老後への備えの第一歩になるのではないでしょうか。
7. 【筆者コメント】
制度面でもう一点、押さえておきたいのが適用拡大の具体的な時期です。日本年金機構の案内によれば、賃金要件(月8.8万円以上)は令和8年10月に撤廃が予定されており、企業規模要件も令和9年10月に36人超、令和11年10月に21人超、令和14年10月に11人超と段階的に対象が広がっていきます。
週20時間以上働く短時間労働者にとっては、勤務先の規模にかかわらず厚生年金に加入できる時期が着実に近づいているということです。
加入期間が延びれば将来の受給額にも反映されるため、いま「壁」を意識して働き方を調整している人ほど、こうした制度の変わり目を早めに把握しておく価値がありそうです。
特にこれまで企業規模要件によって対象外だった中小企業の短時間労働者にとっては、選択肢が広がる変化といえます。勤務先が対象になる時期は、早めに確認しておくと安心です。


